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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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154/164

154話

 ヒコトに連れられ、内郭の奥まった庭園に潜む抜け道から、地下通路に入る。どこの国も、王族の屋敷にはこういった逃げ道があるのは同じのようだ。


 薄暗い道で、前の背中に問いかける。


「あの、私逃げるといってもどこに」

「カンシュタットに向かうよう指示されている」

「カンシュタット……北西にある大きな国のことですか」

「そうだ」

「簡単に入れるんですか?」

「入れない」

「えっ、じゃあどうやって」

「まず、カンシュタットに行くには、海を渡る。大陸の入口は、山岳地帯。そこを越えるとカンシュタットの検問がある。許可証がなければ入れない」

「許可証……、ないってことですよね」

「当然。一人なら侵入も訳ないが、お前がいるとなると、頭を使う必要がある」

「九垓陛下の力で許可証を手に入れることはできないんですか?」

「胡王の手がかかった人物となれば、それ以外を伏せても身辺を探られる。お前の正体がバレたら政治利用されて終わるぞ」


 玲奈はごくりと息を呑んだ。


「カンシュタットは常日頃、スラジと戦争できる理由を探してる。お前は格好の餌になる」


 スラジが血眼になり探してる玲奈が、カンシュタットの手の内にある。カンシュタットにとっては、その利用価値は計り知れない。

 

「それって、私を保護してくれる可能性もあるってことですか」

「保護といえば聞こえはいいが、実質は軟禁だろうな」

「……私、九垓陛下に助けてもらえたの、すごく運が良かったんですね」

「全くだ」


 ここから向かう先は、居心地の良さは求められなさそうだ。むしろ、危険地帯に飛び込んでいくようなもの。


「……あの、なら何でカンシュタットに? 他にもう少し安全な所ないんですか?」

「入国するリスクはあるが、得られるものがある」

「え……?」

「国北部の森林地帯には、貴類の生息地がある」

「っ……そこに行けば、貴類と会える?」

「そうだ」


(貴類……かみなりのことが、お母さんとの繋がりも、分かるかもしれない……)


 果たして、それが玲奈を助け、導いてくれるものになるのだろうか。玲奈が身を預けられる、砦となり得るのか。進まなければ、分からない。



 地下通路を抜けると、低い草木に囲まれた野原だった。


「ここはもう、王都の外だ」

「はい」


 玲奈は、最後に一度、来た道を、残してきた未練を振り返った。


(……リュウ)





 港までは、歩けば半日以上かかるという。ヒコトは少し歩いて馬貸しを見つけると、玲奈に「これで行く」と伝える。


「私馬乗れないです」

「はあ?」

「う、ごめんなさい……」


 文化が違うのだからしょうがないだろう、と言いたい気持ちはあったが、玲奈は大人しく小さくなる。


「躯術なら使えます。それで逃げるなら」

「いや、港までは距離がある。お前の体力なら魔石を使おうが、着く前に力尽きる。……追手が来るには時間があると言ってたな」

「はい」

「なら、馬が一番だ。俺が操る」

「操る……?」


 それを聞いて、導士は、動物を操ることもできると聞いたことを思い出した。


「ただし、騎乗でバランスを取るくらいはやってもらわなきゃ困る。すぐに慣れろ」

「はっ、はい!」


 玲奈はおっかなびっくり馬に跨がると、指導を受ける。ヒコトは自身も騎乗しながら、玲奈の馬の手綱を引くという器用な真似を見せる。歩きと変わらないスピードで、ゆっくりと進んでいく。


「もう慣れたな」

「まだ無理です!」


 即答した。馬の振動に体勢を崩し、ビビりながら何とか騎乗している状態だ。ヒコトはその訴えをまるっと無視すると、馬に向けて掌を向ける。馬の瞳が、薄暗く光った――と同時、蹄が高らかに鳴った。


「~~~~~っっっ!!!!」


 自身が風になったかと思った。それほど、速く馬は駆けた。バランスも慣れも無かった。玲奈は馬の首に必死に縋りつく。(たてがみ)がなびき、美しくしなやかな筋肉が隆起した。二人を乗せた馬は、休むことなく大地を走った。



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