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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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153/162

153話

「何かな。急ぎの用事とは」

「……何か疲れてます?」

「それなりにね。で?」

「あっはい! その……」


 頼った先は九垓。緊急のことで、内密に話したいと、翠夏に通してもらった。


(とりあえずは、逆廻のことを伏せて誤魔化したい)


 それが通じる相手かは微妙だが、最初から手の内は見せられない。


「私の居場所が、スラジの王族に見つかっている気配を感じたんです」

「気配? 具体的には」

「これまでも、そう感じた時、見つかって捕まりそうになったことがあって」

「ふむ。今も同じ感覚があると」

「はい」

「何とも不確かというか、覚束ない表現だが……きみの言う事を無視はできないな。それが本当なら、スラジの罪人を匿ってることを糾弾される恐れもある」

「……この国を出るしかないですね」

「そうなるね。スラジに嗅ぎつけられた時の対応は、決めている。ヒコトを連れて行くといい」


 玲奈は迷ったが、不安を吐き出すことにした。

 

「……私の場所がバレたのは、内通者がいるからではないでしょうか。それが、ヒコトさんの可能性も……彼は、この前スラジに行ってたんですよね」


 と言って、そういえばと思い出す。


「あっ! 櫃星値って」

「ああ、言ってなかったね……ヒコトは成功したよ」

「本当ですか! ……でも、それが、向こうと結託した結果という可能性は」

「ゼロとは言えないが、ヒコトを含めて、僕がレナのことを開示した者は全て、僕が信頼に足ると判断した極一部の側近たちのみだ」


 その眼差しを見て、玲奈は頭を下げた。


「……分かりました。すみません」

「きみが不安になる気持ちは分かる。付け足すなら、ヒコトは忠誠心のみならず、僕に従う確固たる理由がある。レナの命は今や、僕の子供と繋がった。ヒコトはきみを守る役目を果たすと、僕が保証しよう」

「……はい」


 それは、九垓の本心から言っていることだと、理解した。いったん、ヒコトは信頼しよう。


「でも、ヒコトさんの意思は」

「本人も承知してる」

「いつの間に」

「きみを逃がす段取りはある程度立てていた。その時はお前が行け、と言っていた」


 ヒコトの性格では玲奈のお守りを嫌がりそうだが、納得してるなら何も言うまい。


「感覚では、いつ頃追手が来る気配があるんだ。侵入者の情報は入ってないが」

「……多分、八日後くらいに」

「ふうん。随分、具体的だね」


 九垓は玲奈を見透かすように視線を寄越したが、とっさに目を逸らしてしまった。何か隠してますと言わんばかりだ。


「ま、話したくないならいいさ。我が国に危機が及ばない限り、きみの敵になるつもりはない。……全て話せば、より強い味方になるかもしれないけどね」


 それは蜜のように、甘美に玲奈の耳に吹き込まれた。


「八日後というが、出発は早いほうがいいだろう。こちらもレナの痕跡は消しておきたい。ヒコト」

「はい」


 呼び声と共にヒコトが現れるも、玲奈も慣れたもので驚かなかった。


「レナの護衛が最優先だ。連絡が難しければ、こちらは気にするな」

「はい。……行くぞ」

「えっ、もう行くの?」

「持ってきたものは魔石くらいだろ。他に心残りでも」


 心残り。そう聞いて、リュウの顔が浮かんだ。ぴたりと体を固めた玲奈に、九垓が尋ねる。


「リュウには僕から説明しておくよ。伝えたいことはある?」

「……なら、助けてくれてありがとう、と」

「随分な振られ方をしたんだろう。それでも感謝を?」

「はい。リュウがいなければ、ここにいないです。迷宮で沢山助けてくれて、ここに来てからも……」


 なぜ急に態度を変えられたかは、分からない。原因があるなら、知りたい。まだ、好きだ。幸せな思い出が一緒に蘇ってきて、涙が浮かぶ。しかし、玲奈はそれを消し去るように、首を振った。


「ごめんなさい。お願いします」

「分かった。無事を祈ってるよ、レナ」

「……はい。お世話になりました。ありがとうございました」


 九垓は笑って、手を振った。



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