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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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142/163

142話

 リュウは壁にもたれかかり、気だるそうに腕を組んでいる。ユランはその前に向かい合い、リュウに話しかけた。


「じゃあ、あの子のこと、何とも思ってないんだ」

「当たり前だろ」


(……え?)


 誰のことを言っている。いや、文脈から、玲奈の事だと、少なくとも音では認識した。


「そっか……良かった。安心した」

「……もういいだろ。部屋戻っていいか」

「待ってよ、今日は終わりなんでしょ。少し話そうよ」


 ユランは、リュウの腕にぎゅ、と絡みついた。柔らかそうな肌が形を変えるのを目の当たりにして、玲奈に嫉妬の炎が灯る。


(何、して……、離れてよ……リュウ……)


 目の前の光景に、玲奈の呼吸が浅くなる。


「ったく、なんだよ。長期任務が明けたんだし、さっさと休みてえんだけど」

「でも、振り解かないんだね。リュウ、私……ずっとこうしたかった……」


(あ……)


 ユランは背伸びして、顔をリュウに近づけた。リュウは少し溜息をつくと、ユランに会わせて屈んで……


 玲奈は咄嗟に顔を背けた。それでも現実は残酷に、真実を届ける。肌が合わさる音が、空気を震わせる。玲奈にこの前キスした唇が、他の女性と、重なる。


(なんで)


 キスは長かった。音は止まず、目を背け続ける玲奈の背後で、リュウとユランが粘膜を重ねている。


「ん……リュウ……」


 ユランは伸び上がってリュウの唇にかぶりつく。リュウはそれを拒まず、ユランの腰に手を回しつつ、玲奈が身を潜める方向に、ちら、と目線を向けた。 

 

(駄目……もう、居られない)


 パニックになりながら、涙を携えて、玲奈は駆け出した。


 部屋までダッシュで戻って、ドアを閉めるとズルズルと床に座り込んだ。


「ハァ、ハァ……」


 

『じゃあ、あの子のこと、何とも思ってないんだ』

『当たり前だろ』



(あれは、リュウの本音? 私のことだよね……? 違ったとして、何で、ユランとキスして……分かんない、どうして……リュウはもう、私のこと……)


 先程の会話だけでは、リュウの真意は分からない。でも、彼は玲奈と恋人のはずで。その男が、幼馴染の女の子と、濃厚な口づけを交わしていた。それは覆らない事実だった。



 翌朝。


(怖いけど、直接会って聞くしか……)


 一人で考えていても仕方ないし、リュウに会いたいと二、三日かけて探したが、さっぱり姿を見かけない。玲奈は少し迷ったが、翠夏に相談することにした。


「リュウに会いたいんですが、見つからなくて。伝えてもらえませんか」

「うん、それは全然いいけど……」

「……、何かあるんですか」


 翠夏が微妙な顔をしてるので、玲奈は恐る恐る聞いた。


「……少し前、桃凰がレナちゃんに顔見せたらどうだって言ったんだよ。でもリュウ、何にも答えないで、難しい顔しててさ」

「……私に会う気がない、ってことですか」

「そこまでは分からない。私からも伝えてみるけど……、何かあったの」

「その……私たち、少し前に付き合うことになって、リュウと会える日が減ってからも、お祭りの時とか、良い感じで……上手く行ってるかなと思ってたんです」

「うん、すごーく仲良さそうだったよ」

「……三日前、リュウが……別の子とキス、してて」

「えぇっ! 嘘ぉ!?」


 翠夏は素っ頓狂な声を出し、本気で驚いているようだ。


「多分、私のことを話してて……何とも思ってない、って言ってて」

「……聞き間違いじゃなく?」

「そうだったらいいんですけど……」


 説明しながら、殆ど泣きそうな玲奈を、翠夏はよしよしと慰めた。


「私から見ても、リュウはレナちゃんを凄く大事に思ってたよ。それでヒコトとちょっと揉めてたし……、俄には信じがたいけどな」

「私もまだ信じられないんです……でも、リュウは初めから私のこと何とも思ってなくて、嘘つかれてたのかなとか」

「待った待った! 突っ走ってもよくない。ちゃんとリュウと話してからにしよ」

「はい……」


 翠夏の慰めを受けても、玲奈の心に平穏は訪れなかった。

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