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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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138/163

138話

 その後、翠夏は仲間に連絡を取ったようで、同じく首護隊の一人、桃鳳(たお)がやってきた。蘭蒼は翠夏の警護で、自分の宮へ戻っていった。玲奈は桃鳳の引率で、リンファの所へ連れて行かれた。


「むむむ」

「わっ、な、何」


 顔を見た途端に、リンファはずいっと玲奈へ顔を近づけた。


「何やら奇怪な運命が動いた気配がします。何かありましたね」

「運命?」

「この前あなたにお会いした時には無かった、新たな芽吹きが今、あなたの体に渦巻いています。まだ新しい」


(もしかして、さっきの)


「お聞かせください」

「……」


(私はいいけど、勝手に話すの不味いんじや)


 先程、翠夏が口ごもるのを見たばかり。後ろにいた桃凰に視線を向ける。


「少し待ってもらおう。直に陛下もお見えになる」


 リンファは頷いた。少しの猶予ができ、玲奈は先程の出来事を反芻する。


(あの人が飛び出てきた時、体が引っ張られるみたいな感じがあったような)


 反射的に人助けをした、という言葉だけでは収まらない。あの人を助けろと言わんばかりに、何者かに玲奈の体を操られたような。


(貴類の力が影響した? それか、もしかしたらお母さんの……)





 九垓がそれを聞いたのは、中郭の書室で官吏から諸々報告を受けているときだった。


「翠夏から救援伝号、三番!」

「行け」


 すぐに首肯して、向かったのは桃凰。突然の首護隊の登場に、場が静寂に包まれた。


「今日は解散だ」

「はい」


 紅那は心得ていて、すぐに部下たちに指示を出す。


(さて、何があったか)


 首護隊からの伝号。それは緊急時に発せられる魔力による伝令。緊急性の高い順に一番から五番までに振り分けられる。


 桃凰はすぐに到着したようで、とりあえずの安全を確保すると、ことの子細が記された紙が窓から入ってきた。九垓にしか読めないように細工されている。九垓はそれを斜め読み、舌打ちする。


(……漏れたか)



* * *



 今日は、内郭で香彩宴(こうさいえん)という会合が開かれていた。後宮に暮らす王の妻たちが三カ月に一度集う語らいの場だ。そこは姫たち、そしてその後ろ盾の勢力争いの場でもあった。


 香彩宴に出席した蘭蒼の椀に、焦香魚(しょうこうぎょ)が出された。高価な海魚の叩きに生姜を和えたもので、ご馳走として知られるが、妊婦には毒とされ、食すべきでないと言われている。


 それが出された時点で、蘭蒼の妊娠が疑われていることは明白だった。


(どこから……いえ、今は考えても仕方ないこと)


 蘭蒼は食べた振りをして席を立ち、手洗いに向かった。そこで何者かに、後ろから強く背を押された。


(あっーー)


 何とか腹は庇った彼女は、膝を擦りむきながらもすぐに立ち上がり、一目散に逃げた。人気のない所へ行くべきでは無かったが、その時は気が動転し、とにかくここから離れなければと、その一心だった。


 走って、草むらへ飛び込んで、その続きがないのを悟ったのは、再び背中を押されて、足が宙を切ってからだった。


(駄目……)


 子供を、助けられない。そう諦めた時、蘭蒼のもとに飛び込んできたのが、玲奈だった。




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