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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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136/162

136話

「……どこ行くの?」

「向こう」

「それじゃ分かんないよ」

「すぐ着く」


 枢晶宮の外に出ると、リュウは腕を離す。すぐに、背中に手を回し、足を掬われた。


「ぎゃっ!? なっ、なに」

「掴まってろ」

「わーっ!?」


 玲奈を担ぎ上げたリュウは、軽々と飛び上がり、枢晶宮の屋根に飛び降りると、そっと玲奈を降ろした。


「びっ、くりしたぁ……」

「そんな高くねえだろ」

「いやいや、結構高いって」


 そう言うが、二十メートルはありそうだ。下を見て体を震わせる。幸い、屋根の中心は平で滑り落ちることはなさそうだ。真ん中に寄れば怖くはない。


「そっちじゃなくて、向こう見ろよ」

「え?」


 リュウが指差した方向は、外郭。夜空に、大きな火柱が立っていた。


「わ……すごい」


 完全に日が落ちる中で、あそこだけ明るく照らされている。小さな火花が散って、暗闇にキラキラと輝いた。


「あれ、お祭りの?」

「そう。気分くらいは味わえるだろ」


 視線の先では、三十メートル程の高さまで積み上がった藁の塔に火がつけられ、轟々と燃え盛っている。


「……綺麗」

「そりゃ良かった」


 玲奈が喜ぶと思って、ここに連れてきてくれたのか。


「あの、ありがとう」


 リュウは軽く頷いた。視線を戻せば、藁の塔を取り囲むように人々が輪を作り、火へ祈りを捧げている。


「……それ」

「なに?」

「その……催服」

「あ、うん。着せてもらったの。どう?」


 玲奈はくるっと回った。薄黄の催服が、遠くの火に照らされる。


「……うん」

「なにそれ、似合ってるくらい言えないの? こんな布地が」


 少ない服着て、と言おうとして、ハッと止まる。


(っ、めっちゃ露出してるんだった!)


 ぴた、と止まり、なるべく側面に手を沿わせつつ、リュウから距離を取る。


「んだよ、急に」

「いや……こんな肌出てる服着たことないから……恥ずかしくて」

「……皆着てるから、気にすんな」

「私は気にするから!」

「……俺の為に着たんじゃねえの」

「えっ!?」

「違うんなら、悪い。早とちりした。見ねえよ」


 リュウは顔を背けた。それを引き留めるように、玲奈の手があがった。


「リュウに、見てもらいたかった、よ」

「……今は? 見ていいの」

「……いいよ」


 勇気を出した玲奈に、リュウが振り向く。肌にも視線が刺さる気配を感じた。


「感想は?」

「……いいんじゃね」

「本当?」

 

 素っ気ない言葉だったが、玲奈は喜んだ。 


「そこ、浮いてる」


 リュウは腰元を指差した。服は、隙間が出来ていた。昔のものと言っていたが、それでも翠夏のサイズは所々玲奈と合ってない。


「貧相な体だから、しょうがないの」 

「いや、そうじゃなくて……」

「……なに」

「……、片手で掴めそう」

「そこまでじゃないでしょ」


 玲奈は笑ったが、リュウの手が腰に回って、その温度に囚われた。剥き出しの脇に、指が触れる。


「あ……」


 ドキドキドキ、と心臓の音が大きく響いた。リュウにゆっくりと引き寄せられる。


「似合ってる。……目、離せない」

「リュウ……」


 遠くの火が、二人を照らす。リュウが自然と玲奈の手を取って、指を絡めた。熱に浮かされたように、玲奈はリュウを見つめた。


「顔赤い」

「……、暗いから分かんないでしょ」


 火の灯りは大きいが、遠い。玲奈の肌の色まで見えないだろう。


「俺、目良いから。見える」

「……そう」

「何でそんな赤くなってんの」


 リュウはまた一歩、距離を詰める。玲奈はとうとう降参した。


「……リュウが、好きだから」

「っ……、レナ」

「大好き……」

「……俺も」


 直前まで目を見つめ合わせたまま、口づけが落とされた。玲奈が瞼を閉じたと同時に、リュウの腕の力が強くなって、ぐっと引き寄せられる。もう片方の繋いでた手も離されて、両手で腰を抱かれた。深く、熱い、キスだった。


 内側から、想いが溢れてくる。好きだと叫びたくなる欲求。玲奈は、確かに恋に落ちていた。


 


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