135話
(これ……肌見えすぎでは!?)
「わー、可愛い可愛いー」
「こんな横開いていいんですかこれ……」
皆が着てる時から凄い服だとは思っていたが。自分で着ると、予想以上に心許ない造りだった。前部と後部の布は、腰元の数センチでのみ繋がれている。ストッパーとして脇や太腿辺りに紐が通され服を引き締めているが、体の横の素肌は丸見えである。
「体表面が大気と触れる面積が大きいほど、魔力は出力しやすいの。それで昔からこの形が武官服に取り入れられてて、催服もそれに倣ってる」
「へぇ……」
確かに肌が出てる面積は大きい。しかし、羞恥心というのものは、胡王国の人々はないのだろうか。鏡の前で、横を向く。ヒラヒラと布が舞って、惜しげもなく脇が写った。恥ずかしさもあるが、可愛い、と自然に思った。
鏡の前でくるくる回って着飾った自分の姿を楽しむと、翠夏に呼ばれる。
「座って。髪も結ってあげよう!」
「いいんですか!」
「化粧はまだいいかな。口紅だけ……」
玲奈は簡単なお団子くらいしかヘアアレンジのレパートリーがない。美容室に来た気分で翠夏の手に身を委ねた。
「よぉし! どうよ!」
「わ〜っ、ありがとうございます!」
綺麗に編み込まれ、アップにされた姿は、催服によく合っている。華やかな桃色の紅がのって、玲奈の控えめな顔立ちが、華やかになった感じがする。
(せっかくなら、リュウに見てもらいたかったな)
寂しさからか、リュウへの気持ちが自然と膨れ上がった。それを押し込めて、翠夏にお礼を言う。にこやかに返した翠夏はドアに目をやって、「さすが」と指を鳴らした。
「間の読める男ね」
「え?」
「ドア開けてみて」
「はい……」
何のことだか分からないまま、部屋のドアを開ける。黒い胴体が映り込んで、息を止めた。
「なっ……んで」
「…………」
そこにいた男――リュウは、玲奈をじっと見つめるだけで、何も喋らない。
「リュウ……だよね?」
「……それ以外に見えんのか」
「いえ全く……」
久しぶりに会ったからだろうか。会話が続かない。口ごもる二人に、翠夏が助け舟を出した。
「今日はリュウ、途中抜けられる時間があるって聞いてたから呼んだのよ」
「翠夏さんが?」
「まだ暫く会える時間なさそうだから、少しの隙間も活用しないとでしょ」
「そういう事だから、行くぞ」
「え、わっ」
腕をぐっと引っ張られ、リュウが進み出すのに足を合わせる。慌てて翠夏を振り返ると、ひらひらと手を振っていた。何とか「ありがとうございます」とお礼を言って、前を向く。
(こんなに背中大きかったっけ)
玲奈は、胸の高鳴りを抑えられなかった。




