表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

134/163

134話

 時は少し流れ――


「何か慌ただしい?」

「今夜から、宝穫祭(ほうかくさい)だから」

「あ、今日始まるの?」 


 二週間程前。やたら大きな物を担いで移動する男性たちを見て、フミノに問うたところ、「もうすぐお祭りがあるのよ」と教えてもらったのだ。それが明日行われるらしい。


 宝穫祭は作物の実りを、天地に感謝する催しで、一週間にわたり続くという。この間、正黄街はどこもお祭り一色。外郭には露店が立ち並び、王都の外からも沢山の人が訪れる。


 しかし、玲奈は見に行けず、お留守番である。当然といえば当然だが、人混みの中では、警護は難しくなる。


「おみやげくらい買ってくるよ」

「えっ、本当!?」 

「甘い物がいい?」

「うん! いくつでもいけるよ!」

「あのね。両手で持てる分しか無理だから」


 


 夕方になると、中郭はまるっと人が消えた。皆、いつもとは違う見慣れない服に着替えて、お祭りに出て行った。脇がざっくり空いた服で、武官の官服に似ていたが、黒一色ではなく、色とりどりの花や草柄に染められていた。初めて見た時は面食らった服だが、この国の伝統のもののようだ。 


(空っぽだ……ちょっと寂しいかも)


 自室に戻りながら、玲奈が廊下に視線を落とした時。


「こんばんは」

「ひっ!?」

「あ、驚かせちゃったかな?」


 かけられた声に飛び上がり後退りする。窓からひょっこり顔を見せたのは、一度だけ挨拶した、


翠夏(すいか)さん?」

「そう! 覚えててくれてよかったー」


 青い髪を揺らした彼女は、首護隊の一人だ。彼女が今日の護衛なのだろう。


「今日は人いないからさ、話しかけてもいっかなーと思って」

「嬉しいです。その、ちょっと寂しかったので」

「そうだよね~、皆遊びに行ってるのにさ!」

「でも、翠夏さんも行けてないですよね。すみません、私のせいで」

「私は人混み苦手だからむしろラッキーよ! 原則、官吏も下働きも宝穫祭は行かないとだからさぁ」


 それは本心なのか、玲奈に気を遣って言ったのか。分からないが、玲奈は翠夏に良い人だなあ、と好感を持った。


「レナちゃん、部屋行くの? 夕飯まだでしょ?」

「あとでフミノたちが買ってきてくれる予定で」

「ん、そっか」

「早めに戻ってくれるみたいで。折角服も着替えたんだし、ゆっくりしてきてって言ったんですけど」

「催服ね」

「可愛いですよねー」

「お、興味あるならレナちゃんも着てみる?」

「えっ、着れるんですか?」 

「私のお下がりでよければ」

「わー、着たいです!」

「よし! じゃあおいで」


 翠夏の提案に、ぱあっと笑みが咲く。後をついて行くと、翠夏は玲奈の部屋より手前で折れた。


「首護隊の皆さんも、部屋は同じ建物の中なんですよね」


 玲奈の部屋は、元はリュウが使っていたものである。


「そう。毎日使うわけじゃないけど……ここ」

「入っていいんですか?」

「どーぞー」

「おじゃましまーす」


(わ……物が、たくさん)


「いやぁ、私片付けるの苦手でさー。ここに戻ってもゆっくりできないし」

「大変なんですね」

「そーなの! 雪璃はサボってるだけでしょ、って言うけど」


 ふふ、と小さく笑う。クールそうに見えた雪璃は、その通りの性格のようだ。


「んーっと……おっ、あったあった! この辺がレナちゃんのサイズかなー」


 タンスを引っ剥がす勢いで漁っていた翠夏は、お目当てのものを見つけ、玲奈に差し出した。祭り事などで着用する、催服。淡い黄色に、白い小花柄が散りばめられたもの。濃紺に、火花を散らしたもの。白地に、紫の桔梗が大きくあしらわれたもの。


「どれがいい?」

「えっ、全部可愛い! どーしよ……」

「こういうの選ぶの楽しいよねー。可愛いの見かけるとつい買っちゃってさあ」


(やっぱり、翠夏さんお祭り好きなんじゃないかな。申し訳ない……)


 そう思っても、護衛を外してくださいとは玲奈が言えることではないし、どうしようもない。翠夏はそんな玲奈を知ってか知らずか、明るい笑顔で、玲奈の体に布地を当てる。

「んー、レナちゃんは暗い色より、黄色とか明るいのがいいんじゃない?」

「本当ですか?」


 鏡の前で、黄色の催服を当てる。言われた通り、この中だと一番自分に合ってるように思えた。


「じゃあこれがいいです!」

「よーし! んじゃ、脱いでー」

「え、自分で」

「初めてでしょ? 着方があるからさぁ。ほらほら」

「ひっ、あ、あの、教えてもらえたら」

「それは面倒い! さっさと脱ぎなさい!」

「あっ――」


 年上の美女に裸にされる羞恥プレイに見舞われながら、初めての催服に着替えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ