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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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132/162

132話

「申し訳ない……」


 短い昼食を終え、そそくさと持ち場に戻る道すがら、皆に謝った。


「全くね」

「まあまあ、初めてなんだからしょうがないじゃん」

「フミノは完璧主義だからなー」

「教育係がフミノってのは辛いもんがあるよね」

「皆、優しい……」

「甘くして困るのは本人でしょ。むしろ私が一番優しい」

「なるほど……」


 玲奈としては一理ある、と思ったのだが、他の皆は「厳しー」と笑った。朗らかな空気に、肩の力が抜けた。 


「ここの皆は優しくて安心したよ」

「前はそうじゃなかったの?」

風羅(ふうら)たち」


 フミノの挙げた名前は、玲奈に絡んできたうちのリーダー格の女子だ。


「あー、なるほど」

「何か言われたの?」

「うん、一回呼び出されて志陽とか、リュウのことを……」

「うわ、お疲れ。災難だったね」

「あんま気にしないことだよ。あの子たち、新入り入るたびやってるから」

「えっ、マジ?」

「そう。志陽って優しいじゃない? 新しく来た子によく話しかけるんだけど、その度に」


(……良かった、私だけじゃないんだ)


 志陽が玲奈を気にかけるのは何か企みがあると勘繰っていたが、彼にとっては普通のことらしい。おまけに、彼女たちに絡まれるのも。


「あんたはリュウと付き合ってるから、かなり目立ってたけどね」

「それは確かに」

「リュウが彼女連れて帰ってくるとは驚いた!」

「リュウってどんな感じなの? 普段女子には塩対応だけど」

「彼女には違う顔を見せちゃったりするの?」

「それやばい!」


 女子たちはキャーッと盛り上がった。玲奈は恋人モードに入ったリュウを思い描く。


『レナ』


「……」

「あーっ、なんか赤くなってる!?」

「リュウも普通の男の子だったか〜」

「何思い出したの! 聞きたい!」

「聞かせろ!」

「いや、違う、何でもないっ!」


 わいわいとはしゃぐ背中を、志陽が影からそっと見ていた。


 


 夜。ユランは、枢晶宮の傍らに聳える櫓に登って、星を眺めていた。


「隣いいか」

「……何」

「何だよ、機嫌悪いな」


 現れたのは、志陽だ。それを一瞥して、また星に視線を戻した。

 

「リュウとは話せた?」

「うん、一応」

「嬉しくなさそうじゃん」

「……嬉しいよ。噛み締めてるの」

「そう?」


 その割に、ユランの表情は晴れない。


「十中八九、リュウとレナの交際は振りだ」

「……そう」

「信じねえの? 俺の見立てではかなり黒に近いぜ」

「何でそんなことする必要が?」

「レナには何か、事情がある。そこまでは掴めてないけど……リュウが側にいて見張ってるのが一番だったんだろ」

「……そうだとして、でも」

「ん?」

「リュウは……」


 言葉を待ったが、その先はユランの口から続かない。膝に顔を埋めてしまった。


「俺がレナを落とすよ」

「……え?」

「表向きには振りを続けても、本当は付き合ってないって言質を取れたらそれで十分だろ」

「……なんで志陽がそこまで?」


 膝に顔をつけたまま、横に顔を向けて、志陽の真意を探る。


「ずーっと片思いしてるユランが不憫だから」

「余計なお世話よ」

「本当に奴らが好き合ってるならしょうがないけどさ。そうじゃないのに失恋して傷ついてる幼馴染は放っとけない」


 ユランは少し考えた。やがて顔を上げて、静かに返した。


「志陽の好きにしたら」

「ん。お前、リュウとちゃんと距離詰めろよ」

「もう、志陽に言われなくても頑張るもん!」

「あんま行き過ぎるとウザがられるからな」

「それもわかってる!」


 ようやくユランに笑顔が見えて、志陽は内心、安堵のため息を吐いた。


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