131話
(暫く、リュウには会えないんだよね)
玲奈はトボトボと廊下を歩いた。リュウとの距離が縮まるほどに、会えない時の寂しさが増していく気がする。
「何だか落ち込んでるとこ悪いけど、今日から違う持ち場よ」
「え!」
洗濯からの解放に、玲奈は俄に喜ぶ。
「次は何?」
「枢晶宮の書庫整理」
「へぇー、そっちの方が面白そう!」
「お気楽なこと」
フミノに付いていき、枢晶宮の二階へ向かう。文官が慌ただしくあちこちの部屋から出たり入ったりするのを観察する。
「今、使ってるとこだよね。部屋の中はいつ掃除するの?」
「使ってない部屋もあるけど、使用中のものはお昼と夕食時。その分担に当たったら食事の時間をずらすの」
「ふうん」
「さ、ここよ」
フミノがドアノブを回す。こぢんまりした入り口を入ると、玲奈は息を呑んだ。
「……、凄い、全部本?」
「そう」
ぎっしり並べられた棚に、本がこれでもかと押し込められている。棚と棚の間は、人がギリギリ一人通れるくらいの幅しかない。
(天井まで詰んでる……)
棚は高く、天井に届きそうな程。棚の至る所に、梯子が備え付けられていた。
「ハタキで埃取ったらいいの?」
「それもあとでやるけど、整理って言ったでしょ」
「うん?」
首を傾げると同時に、扉が開かれ、四、五人の女子たちが入ってきた。
「おはよー」
「あ、噂の新入りの子じゃん。よろしくー」
「よろしく」
今回同じ当番になった女子たちは、玲奈に好意的なようでほっとする。笑顔を浮かべた玲奈は、その子達が押し引いてきたカートに、どっさりと積まれた本に笑みが固まった。
「……あれを戻すってこと?」
「そう。官吏が取り出した書籍を正しい書架に戻す。それから次に使う書籍の依頼が来るから、書架から出して届ける」
「ちなみに、これ一部。あと五往復分は昨日出した分があるから」
「ひー、結構大変なのか」
そう言いつつも、書籍を出して戻すだけだ、と玲奈はまだお気楽モードだった。
しかし、いざ始まると、大変さをひしひしと感じることとなる。
「これは、律の七十四……ここは象……こっち……は則……?」
「全然減ってない。お昼入れないわよー」
「うぅ……」
玲奈に渡されたノルマは皆の三分の一程なのだが、一向に書籍が減る気配がない。他の皆も貸し出しに忙しいらしく、質問する暇もない。
結局玲奈は、お昼休みを削って皆に手伝ってもらうことになった。




