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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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125/163

125話

 意味する所が分からない玲奈に、リュウが助け舟を出す。


「お前は元々、この世界から転移して向こうに行ったんだろ」

「えっと、そう聞いてるけど……それが何?」

「それでまた、この地に呼び出された」

「うん……。あっ!」

「分かったか」


(そっか、何度でも行き来できてしまうんだ) 


 例え、胡王国の力を借りて元の世界へ戻っても、スラジの権力者が考えを改めない限り、次の聖蹟の日に、再び玲奈は転移させられる。そして、今度こそ死刑に真っしぐら。逃げているだけでは、この事態の解決に至らないのだ。


(私、本当に、スラジの王族を滅ぼさないと駄目なんだ)


 その必要性を、やっと痛感した。


「それと、リトゥルスとピレーネが重なる聖蹟。胡では天双(てんそう)と呼ぶが、これはスラジと胡では一月のズレが生じる。胡王国の天双は七月後だ」

「七カ月……」


 玲奈が転移して、既に二ヶ月程経っている。聖蹟(天双)の日は十月ごとで、二国間のズレが一ヶ月。櫃星値さえ分かれば、七カ月後には帰ることも可能。


(でも、それじゃ意味がない)


「何があるかは分からない。手段として櫃星値は持っておくに越したことはないね」

「え、でも機密情報なんですよね」

「そりゃあね。でも、お前なら行けるだろう」


 それは、リュウに向けて言ったのかと思った。しかし、応えたのはもっと冷めた声だった。


「命とあらば」

「うん、じゃあ行ってきて」


 音もなく現れたのは、ヒコトだった。そして、玲奈が瞬く間に、消えていた。


(えっ!? 盗みに行ったってこと!?)


 九垓もリュウも、何でもない顔をしている。こういった任務は、当たり前なのだろうか。


「危険じゃないんですか?」

「ヒコトは腕が立つ。手に入れられるかは分からないけど、捕まるような下手は打たないよ」


 つまり、無理だと思ったら引く。その能力が優れているということか。玲奈は少し安心し、九垓への質問を再開した。


「スラジの王族を倒すって、どうすればいいんでしょうか」

「外からじゃ難しい。僕は協力するといっても、戦争する気はない」

「はい」

「ただ、勝ち戦と判断すれば乗る。その状態に、持っていけるか。きみ次第だ」


 サディは、国内に反乱分子がいると言っていた。玲奈は彼らと接触する必要があるということだ。その考えを読んだかのように、九垓は続けた。


「スラジでは大きく三つの反王政勢力がいる。一つ、地方に追いやられた下級貴族。二つ、貧困に喘ぐ市民。最後に、宗教家」


 最後のは、よく分からなかった。玲奈の思考を呼んだように、九垓が説明する。

 

「スラジは国教をもたない。建国神話は反面教師として語られ、崇拝の対象ではない。近年、不況増税と負担が増し、人々の心の拠り所として外国の宗教が輸入さ、広まりを見せた。国はそれを危険思想とみなし、数年前に弾圧した。しかし、熱心な教徒たちはひそかに活動を続けてる」

「……」

「まだ彼らは個々に活動している。手を組み、国内での反王政勢力が肥大化すれば、うちにも参入する利が生まれる」

「その、手を組ませるというのはどうやって」

「それがすぐにできれば、第三王子は苦労してないだろうねえ」

「……彼は、私の名前を担いでそれを成そうとしていました」

「本人が姿を見せないんじゃ、効果は薄いだろう」

「つまり、私が彼らに直接会えば、説得できるかもしれない?」

「それはレナ次第だ」

「……」

「もっとも、今の話はレナたちが十分準備をできる時間があるという前提に立っている。実際は、スラジに入ってきみが動きを見せれば、すぐに追手がやって来る可能性が高い」


 つまり、ろくに準備もできず、戦力不測の中で戦う可能性も考慮しなければならないということだ。その時、どれだけの犠牲が出るのだろうか。その犠牲を払ったところで、玲奈は自分の目的を達成できるのだろうか。


 未来は、険しいものだった。




「あの」

 

 話しが終わって、リュウと一緒に部屋を出ようとした時。リンファが呼び止めたのは、リュウだった。


「……何か」

「それは僕の部下だけど、何か気になることが?」

「……はっきりとは分かりませんが、あなたからも何かを感じます」

「何かというと?」

「……すみません。はっきりとは」 


 九垓とリュウは顔を見合わせた。


「……そいつには、禍の印が刻まれている。調べているが、詳しくは分かっていなくてな。何か知っていることがあるか」

「禍の印……いえ。私は何も」

「……そうか」


 リンファはやがてリュウから目を反らして、頭を下げた。 

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