124話
「貴類のことで、他に分かったことは」
「血がこんなに色濃く出ている者を見たことがありません。その血ならば、龍神の加護を強く受けることは間違いないでしょう」
「……あの、一つ聞きたいんですけど」
「はい」
「迷宮で、魔石から小さな猫が出てきたんです。しかも翼が生えていて。いつの間にか、姿を消しちゃったんですけど」
「……」
「あの子は、貴類だったんでしょうか」
「その可能性は高いです。これほどの血があれば、龍神が惹き寄せられても不思議ではありません」
「僕もリュウから聞いてたけど、間違いなく貴類の一種だと見ているよ。魔石は導士が星の魔力を元にして作るが、貴類も星の魔力を体内に取り入れて使っている。出入りできたとして、納得がいく」
(やっぱり、そうなんだ……)
「猫に翼が生えた貴類というのは、文献では確認されているしね」
「えっ!」
九垓は席を立ち、棚から書物を引っ張り出してみせた。
「これだ」
「かみなりに似てる……」
「確かに」
黙っていたリュウも、後ろから覗き込んだ。そこに描かれていたのは、かみなりの特徴とよく似た獣だった。
「私の血に引かれて、助けてくれたってこと?」
「ええ。その加護は、きっとこの先もあなたを救うでしょう」
「……はい」
姿は見えないけれど、近くにいるのかもしれないと思うと、心が軽くなった。かみなりは唯一、逆廻の秘密を共有している仲でもある。
「じゃあレナ、ここからはきみの質問に答えようか。聞きたいことがあるだろう」
「え、いいんですか?」
今日はあくまで九垓の用事で呼ばれたのであり、こちらから聞きたいことは、別日にリュウに取り持ってもらおうと思っていたのだ。九垓がウインクしてみせたので、玲奈は直角に腰を折った。
「ありがとうございます!」
リンファは部屋の後方に下がり、玲奈は九垓と向き合う。
「私が帰るには、聖蹟の日に、天界魔術を使って元の世界へ転移する。それには、導士十人が必要だと言われました。これは、胡王国ではできないのでしょうか」
サディが話してくれた帰る手段が嘘だとは思わないが、違う方法を、九垓ならば知っているかもしれない。玲奈にとって、一番重要なことだ。
「まず始めに、異間転移には、櫃星値が必要」
「それって?」
「転移される人物の場所を示す、座標のようなもの。これがないと、レナを元のところに帰せない。で、これを知ってるのはスラジの神殿だけだ」
「座標……、それがないと帰れない」
「逆に言えば、櫃星値を手に入れたら、転移場所はスラジの神殿である必要はない。そして、導士十人はうちでも用意できる」
「えっ! じゃあ胡王国からでも、元の世界に帰れるんですか!?」
「帰るだけならね」
「……?」
希望の光が射したことに喜ぶも、九垓の含んだ言い方に首を傾げる。




