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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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123/171

123話

 九垓は、玲奈たちがくぐってきた入口に視線を向けた。


 釣られて振り返った玲奈は、そこから音もなく現れた少女に息を呑んだ。外見はごく普通の、可愛らしい少女。だが、体の内の深い所が、彼女に惹きつけられるようにビシビシと反応している。


(何者?)


「彼女はリンファ。胡の一地方で巫座という、神職に就く者だ」

「みざ?」

「土地神に祈りを捧げ予見を得る力を持っている。各地に古くから根付いてる巫座はいるが、それは形式的なもの。巫座に導士のような特別な力はないとされている」


 僧侶やお坊さんのようなものだろうか、とあたりをつける。


「しかし、リンファは別。彼女には、強力な先見(さきみ)の力がある」

「先見?」

「将来のことを見通すことだ。宣告と近い力だよ」

「宣告と……」

「リンファは、極秘にしていたレナのことを言い当てた。その力は確かだ」

「えっ! その力があれば、私の居場所がバレちゃうってことですか!?」


 玲奈は青褪めたが、リンファは首を振った。


「先見は万能ではありません。私があなたのことを見たのは、あなたに龍神の血が濃く出てるからです。他の地の巫座が、同様のことをできるとは思えません」

「龍神というのは、貴類の一つ。リンファの村に古く根付き土地神として祀られてきた」

「貴類の……」

「彼女にはきみと直接対面し、きみの未来を見てもらうことにした」


 玲奈はリンファに目を向け、頷いた。予言の力を借りれば、この先のヒントと成り得る。


(死が確定とか言われたら絶望するしかない……やば、怖くなってきた)


 リンファが玲奈の前に進み、膝をついた。立ち上がろうとしたが、「そのままで。お手を」と玲奈を促すので、椅子に腰掛けたまま、両手を差し出した。


「そんなこと、僕の時はしなかったろう」

「対面するだけでも先見はできます。しかし、彼女には複雑怪奇な運命が出ています。より鮮明に見るには、肌を合わせるのです」


 リンファが目を閉じて、手を重ね、指を擦り合わせる。そこからゾワゾワ、と悪寒が全身に広がった。心臓に、すっと冷たい風が吹き抜ける。慣れない感覚に、眉根を潜める。


 間もなく指は解かれ、リンファはゆっくりと目を開けた。九垓は腕を組んで、どこか面白そうに玲奈たちを見つめている。


「あなたの行末を見ました」


 玲奈は息を呑んだ。リンファは静かなトーンで続けた。


「スラジ王国を滅ぼす、破滅の子と宣告が出ているとのこと……。成る程、確かにあなたは彼の国を大きく変革させる者のようです」

「変革? 滅ぼすには至らないということか?」

「どうでしょう。国そのもののあり方を大きく変えるということは即ち、そこへ行き着くやも」

「…………」

 

 玲奈は黙り込んだ。宣告は、曲げられたものだという可能性もあった。しかし、リンファもまた、玲奈がスラジを滅ぼす可能性があるという。


(私にはそんな気、ないのに……)


「回避はできないんですか?」 

「あなたが生きている限りは、曲げられない運命です」

「生きている、限り……」

「当然のこととも言える。レナを殺すまで、彼らは追う手を止めない。食い止めるには、今の権力者の打倒が必須だ」

「……逃げるだけじゃ、未来は来ないってことですか」

「そうだ。いずれは戦う覚悟がいる」

「…………」


 直ぐに頷くことはできなかった。


「それ以外に分かることはないのか」

「強く視えたのは、循環の輪の中にいる彼女です」

「循環の輪?」

「はい。ぐるぐると、渦の中に」


(っ、逆廻のこと!?)


 玲奈はどぎまぎしながらも、極力顔に出さないように努めた。その様子を九垓もリュウも横目で見ており、実際のところ、動揺は筒抜けだったが、そこまで気が回らない。


「そして、それは貴女だけではない。ほかの魂もまた、輪の中に」

「ほか? どういうこと?」

「貴女以外の魂も、また循環の中にあるのです。私に分かるのは、それだけ」


 もっと詳しく知りたかったが、リンファからはそれ以上の情報は出てこなかった。


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