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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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119/164

119話

 飄々とした男だった。


「お名前を聞いても」

「ヒコト」

「ヒコト、さん」


 思い返せば、先程そう呼ばれていたような。


「あんたの側にいないといけないのに、あんな五月蝿いのに絡まれたら迷惑。もっと身の振り方考えろ」

「それは……ごめんなさい……?」


(私が悪いの? とばっちりでは?)


「次から泣くのも無しな」

「それは……お恥ずかしいところをお見せしました」

「全くだ」


(この人冷たすぎない? いびられて泣いてた女子にそんな言い方する?)


 そう思いつつも、ヒコトに真っ向から反論はできない。何というか、逆らってはいけないオーラを感じた。


「ヒコトさんは、リュウとは仲いいんですか」

「何度か顔合わせたことがあるくらいの他人」

「ふうん……」

「官位は俺のが上」

「はあ」

「だから、俺からアイツに伝える。恋人ごっこは止めだってな」

「え」

「不服か」

「あ、いえ」


 玲奈としては、恋人と嘘をつき続けるのは辞めたい。自分でリュウを説得できるか分からないし。上官が言ってくれるなら有り難い。


「お前もさっさと戻れ」

「あ、はい!」


 玲奈とヒコトの初めての邂逅は、十分に満たないものだった。






「お前、何吹き込まれた」

「はい?」


 数日後、久々に顔を見せに部屋へやって来たリュウは、酷く機嫌が悪かった。


「ヒコトだよ。会ったんだろ」

「ああ。そうだ、リュウに会ったらその話しようと思ってたんだよ。絡まれて大変だったんだから!」

「それも聞いた。ヒコトは、お前が別れたがってるって」

「別れ……その言い方は違くない? フリを止めたい、でしょ」

「同じことだろ」


 リュウが引かなそうなので、玲奈は今一度、真剣に向き合うことにする。


「前から言ってるけど、嘘つくの後ろめたいし、ああいうのに絡まれるのはもうごめん」

「それは、俺の配慮が足りなかった。……悪かった」


 責めるように視線を向けると、リュウはしゅんとして、素直に謝罪する。珍しい面持ちに、罪悪感が刺激される。


「リュウ、モテるんだね。驚いた」

「女はとりあえず強い奴が好きなんだろ。っても、暴走騒ぎ起こしてからはそういうの減ったと思ってたんだが」

「魔力を封印して弱めたのは、皆知ってるの?」

「上位官の一部だけだ。事実を知ったらころりと態度が変わるんだろうよ」


(ユランは変わらないだろうけど)


 それは、口には出さなかった。


「その封印はすぐ解けるもの?」

「術を施したのは陛下だ。あの人ならすぐ解ける」

「ふうん……解くつもりはないの?」

「さあな」


 答える気はないようだ。とぼける姿をよそ目に、話を戻す。


「他の人達みたいに、こっそり警護してもらうので十分だよ。恋人の振りする必要はない」

「止めたら、こうやって堂々部屋に来るのも怪しいだろ」

「別に来なくて問題ないんじゃない?」

「色々話すことがあるだろ。お前は隠し事があんだから」

「それはまあ……」

「陛下に聞きたいんだろ。お前が、どうやったら元の場所に帰れるか」


 リュウにそれを話したことはなかったはずだが、お見通しのようだ。


「俺がいないで、どうやって陛下に時間貰うんだよ」

「……それは、そうだけど。っていうか、リュウに頼んだら協力してくれるってこと?」

「何でもとは言わねえけど、できる限りはする」


(……そんなに優しかったっけ)


「顔に全部出てんぞ」

「だって」

「お前を守るって言ったろ」

「言っ、てた、ね……」

「それでも不満かよ。なんだっけ? 嘘つくことが後ろめたい?」

「……、うん」



 リュウは少し考えてから、口を開いた。


 

「じゃあ、嘘じゃなくて、本当にするか」

「――え?」


 玲奈の脳は、その言葉をすぐ処理することができず、停止した。


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