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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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118/164

118話

 女子たちの猛攻は止まらない。


「男に色目使うなって話よ」

「……色目なんて」

「リュウの恋人ってのがまずあり得ない。あんたぐらいの見た目で」

「その上、なに志陽に声かけられてんの? 来て早々、弱みでも握ったわけ」

「あっ、あれは、向こうから」


 咄嗟に出た反論に、女子たちは目をますます怒らせる。

  

「はぁ〜〜? 志陽があんたを誘う理由がないでしょ!」

「……それは、リュウの恋人、がどんな人間か気になったみたいで」

「……志陽がそう言ったわけ」

「うん」

「どう思う」

「あいつらそんな仲良かったっけ」

「いや、お互いあんま興味なさそうじゃなかった?」

「じゃあやっぱあんたが色目使ったんじゃん!」

「ええっ」


 濡れ衣にも程がある。そんなことして無い、と否定するも、三倍返しで文句が帰ってきて、諦めて口を閉じた。


「リュウにも志陽にも言い寄られて、良い気になってんなよ」

「つーかリュウはさぁー、ユランの牽制がなきゃ近づきたかった女子多いんだよ! ユランは親がお偉いさんだから強く言えないけど……! あんたみたいにぽっと出の女が勝手にひょこっと取って良い奴じゃないの!」


(リュウって、モテるんだ……)


 今の今まで、全くその認識がなかった。


(確かに背は高いし、顔整ってるし、それで、昔は魔術が飛び抜けてうまかったんだもんね)


 迷宮内では魔力を封じており、トキとナシュカに頼る場面もあったが、本来はむしろ皆から頼られる立場だったのだ。確かに肝が据わってるというか、自信が言動の節々に滲み出ていた。


(そういえば、トキがリュウは実力者だとか言ってたっけ)


 トキの予感は正しかったということだ。


「ねえあんた聞いてんの!?」

「えっ、はい」

「じゃあリュウと別れるってことね!」

「えっ……いや、そういう訳には」

「はあ!? この期に及んでそんな事言うわけ!?」


 玲奈が想いを巡らすうちに、話は思ってもみなかった方向へ行ってしまったようだ。


「その……、リュウに聞いてみないと」

「あんたが別れるっていえばすむ話でしょ!」

「そうよ! ここで宣言してよ!」


(そんな……どうしよ)


 リュウと付き合ってるのは、監視してる事を隠すためだ。玲奈としては他の首護隊のように遠くで見てもらうので十分だし、別れると言ってしまいたい。この子たちに敵視される方が身の危険を感じるのが本音である。ただ、勝手にそんなこと言えば、リュウに怒られるのは必至だ。


(……でも、こんな恨み買うくらいなら)


 リュウに小言を貰うより、たった今、ひしひしと受けている恐怖から逃げ出したい気持ちが強い。玲奈が諦め半ば、首を振ろうとした時。



 救世主は、ひんやりとした冷気を連れて現れた。


「退け」

「っ! ヒコトさん!?」


 玲奈の後ろから現れた男が、その場の視線を搔っ攫った。


「嘘……!?」

「どうしてヒコトさんが……!」

 

 女子たちの視線が、睨みつける三角から、丸く形を変えた。


「な、なぜこんなところにっ!」

「俺がどこにいようと勝手。あんたら、さっきから五月蝿い。キンキンした声で怒鳴られると頭痛くなる」


 一瞬にしてトーンの上がった女子の声は、男の冷たい響きに、押し黙ることとなった。


(……誰)


 その男は、だるそうに首を傾けた。リュウより一回り細く、体の薄さと相まって生命力を感じない男だった。前髪が短いので、その眼光の鋭さが、はっきりと伝わる。射抜かれた女子軍団は、小さく悲鳴を上げた。


「聞こえなかった? 退けって」

「っ……すみませんでした!」

「行こ!」


 彼女たちは顔を赤く染め、パタパタと、慌ただしく去っていった。玲奈は開放感と安堵に脱力し、膝から崩れた。


(こ……怖かった……)


 心臓がバクバクと鳴っていたのが少し収まってくると、今度は涙が溢れてきて、膝に顔を埋めた。


「っ……ぅっ……」


 知らない人に泣いてるところなど見られたくないが、涙は治まらなかった。


「泣き声も苦手。泣き止めよ」


(えっ……)


 耳を窺うような言葉に思わず顔を上げると、男はばっちりこちらを見ていた。とても整った顔つきだ。切れ長の三白眼は、男の顔を涼し気に見せている。水色の透き通った髪は、毛先が癖でくるっと曲がっていた。


 しかし玲奈としては、彼の格好良さより、言われた事へのショックが勝った。


「……っそれなら、あなたがどこかに行ってくれればいいじゃないですか。その、助けてくれたのは感謝してますけど」

「助けたつもりはない。どこかに行くのは無理」

「無理って、何で」

「あんたの監視が仕事だから」

「えっ!?」


 これには、感じていたもやもやも、おまけに涙も吹き飛んだ。


(ってことは)


「首護隊の方ですか」

「そう。他のやつらは顔合わせしたらしいな。俺はこの間まで別の任務で抜けてたから」

「あなたが……」


 彼こそ、玲奈が唯一会っていなかった、首護隊の最後の一人だった。



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