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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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115/164

115話

 リュウは冷静に返した。


「そうだよ。自分の女に近づく男に良い気するわけねぇだろ」 

「……マジ? お前そんなこと言う奴じゃなかったろ」

「言う奴だったんだよ。その足りない頭に詰込んどけ」


 志陽がさっきまで見せていた、からかう様な表情はもう消えていた。唇を噛み締め、焦りの表情を覗かせる。


「あの子のどこに惚れたんだよ」

「お前に言う理由はないな」

「あの子に近づいちゃだめなんだろ。じゃあせめてお前が教えろよ」

「…………」


(本当にただ好奇心で近寄ってきたのか? いや、んな奴じゃねぇ……)


 志陽の真意を探ろうと、少し会話に付き合うことにする。


「……阿呆なとこ。馬鹿な子ほど、っていうだろ」

「昔、バカ女は嫌いって言ってたろ」

「ア? んなこと言ったか」


 素で忘れており聞き返すと、志陽は「言ってた」と溜息を零した。確かに昔は、首護隊というだけでキャーキャー騒ぐ奴にネガティブな意識はあった。


「アイツはいいんだよ」

「随分だな」

「もういいだろ。行くぞ」

「待て待て、もうちょっと教えろよ。知り合ったのは迷宮でか?」

「ああ」

「んじゃ、まだ会って一カ月も経ってねえんだよな。付き合い出したのはいつから」

「あー、二週間前くらい」

「向こうは何でお前が好きなわけ」

「知るか」

「じゃあ告白はどっちから」

「俺」

「何つったの」

「押し倒して、流れで好きだっつった」

「体からか……? お前、結構アレだな……」


 聞けば聞くほど、志陽の興味は二人の交際にあり、玲奈自身の出自は眼中にないようだ。


(本当に気になってるだけか……? いや、決めるのは早いな)


 ここで詰め寄ってすぐ口を割るとは思えないし、地道に情報を集める方がいいと判断すると、リュウは踵を返した。


「あっ、オイ! まだ話は」

「いい加減にしろ。もう十分だろ」


 リュウの背中を見つめる志陽は、唇を噛み締め、悔しさを前面に滲ませていた。



 


 九垓の下に、新たな悩みの種が持ち込まれた。


龍神川(ろんじんがわ)を巡っては、かねてより東の朴篤村(ほくとうそん)、南の湯弦平(ゆげだいら)で治権争いがありました。湯弦平の治水工事の要望はこれまで、朴篤村の反対で実現していません」


 四年前、湯弦平は治水工事を国へ要望した。湯弦平は近年、農業、運河事業を基礎に発展を続け、都市国家的地域となりつつあった。更なる拡大に向けた要望は、朴篤村の強い反対を無視できないとした、九垓の父、先王の判断で却下された。


「朴篤村には、地神として龍神川を祀る文化があり、水脈を人の手で動かすことは龍神(りゅうがみ)の逆鱗に触れることと……」

「以前もそういう話になって、南は諦めたんじゃなかったの」

「先日、湯弦平は、治水工事に応じるなら南の収益の一部を東へ渡すと提案をしたようです。それで東側の若者たちを中心に、治水工事賛成の機運が高まり、集落内部で意見が割れていると……」

「それだけ南は本気なわけだ」

「いかがいたしますか」

「まずは話を聞こうか」



 

 数日後、九垓に呼ばれたのは東の朴篤村、村長・康薐(こうりょう)、老師・素沁(そしん)。中央から地方集落の管轄に派遣されている、東部の行政長の虎清(こせい)


 そして最後に、村長の娘である凛風(リンファ)。彼女には、村長の娘のみならず、別の肩書きがあった。


(これが村外にまで担ぎ上げられているという、巫座(みざ)か)


 九垓はリンファをじっと観察した。見目には普通の娘。だが、彼女には、人知を超越した、『先見の力』があるという。朴篤村は小さな集落だが、その発言力は強い。その理由が、この巫座にある。



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