114話
「レナ、聞いてる?」
「あ、ごめん」
考えこんでいたら、志陽に心配そうな顔でのぞき込まれた。
「……ユランのことで何か思うことあったら、俺いつでも話聞くから」
「え……」
「自分はリュウと恋人寸前だったとか、色々言ってたろ。そんなの彼女が聞いたら、不安になるのは当たり前だ」
「……ありがとう」
志陽は人の良い笑顔で頷いた。その笑顔に、玲奈は何故か、胸がざわついた。
「浮気は楽しかったかよ」
「はい!?」
不機嫌な顔で人聞きの悪いことを言ってのけるリュウは、見たことのない服装で玲奈の部屋に訪れた。
「志陽だよ。昼に終わらず夜まで一緒に過ごしたらしいじゃねえの」
(情報速……)
というか、付き合ってるのはフリなのだから、こんな風に詰められる筋合いもないのだが。
「お前の行動は逐一報告されてる。気をつけるんだな」
「別に変なことしてないよ!」
リュウは舌打ちを鳴らした。
「あのな! 俺の恋人だ、つってんのに他の男とベタベタしてたら不審がられるだろうが!」
「ベタベタなんてしてないって。向こうから誘われて」
リュウは舌打ちをした。
「断ればいいだろ」
「えー、だってリュウの幼馴染っていうし、リュウを心配してたんだよ。無下にしちゃ悪いじゃん」
「心配ィ?」
「うん。リュウの恋人が気になるって言って。変な奴じゃないか確認したかったんだよ」
「変な奴だったな」
「いやまあ、そうだけど、そういうことじゃなくて」
リュウは眉を寄せ、暫し考え込む。
「……アイツは俺の心配をするような奴じゃない。お前に接近したのには、理由があるはずだ」
「幼馴染なんでしょ? そんな言い方しなくても」
「付き合いが長くても親しいとは限んねえよ」
それはそうかもしれないが、玲奈からすれば、志陽に含む所など見えなかった。
「爽やかで良い人そうだったけどな」
「見た目に騙されんな。国に背くような度胸はなかったと思うが……三年もありゃ人も変わる。とにかく、もう近づくな」
「……分かったよ」
* * *
「リュウ、久しぶりだな」
明くる日。リュウを廊下で呼びとめたのは、志陽だった。
「この前会っただろ」
「あの時はユランが暴走して殆ど喋れなかったじゃん。元気だったか」
「普通」
「いやそれじゃ分かんねえから。んだよ、愛想悪くなってんな」
「……理由、心当たりあんじゃねえの」
「あー……レナのこと?」
リュウはひくりと眉を上げた。
「何が目的であいつに近づいた」
「人聞き悪いな……お前が彼女作るなんて思わなかったから、どんな子か気になっただけだよ」
「なら、目的はもう果たしたな。今後は声かけんな」
「まだ全然話せてないって。何だよ、もしかして嫉妬?」
志陽の言い振りは、リュウを挑発するかのようだった。




