112話
フミノは顔面をずいっと玲奈に突き付けた。
「ちょっとレナ!! どういうこと!?」
「えっ何が」
「さっき! なんで志陽と二人でご飯食べてたの!?」
「そうよどういうつもり!?」
「あんたリュウと付き合ってるんでしょ!? 志陽とはなんでもないのよね! そうよね! そうだと言って!!!」
「え、え」
フミノだけでなく、わらわらと女子たちが集ってきて玲奈を攻め立てる。どうやら、志陽との昼食を咎められているらしい。
「さっきお昼に誘われて行ったんだけど……駄目だった?」
「志陽から!? 何であなたを誘ったの!」
「っと、リュウの幼馴染として気になるって……」
「幼馴染……そういえばそうか」
「二人そんな仲良かったっけ? あんまイメージないけど」
「ユランに気遣ってリュウのことは話に出さなかったんじゃない?」
「うわー、志陽っぽい……」
「やっぱり気遣いの男だよね」
「ほんとはリュウのこと心配してたんだー」
トーンを下げて納得しだした女子たちは、いからせていた目を下げ、キラキラした顔になる。
(これは……! 憧れの男子にときめき、集団で褒め称える女子の図! 学校で何度か遭遇したことあるけど、ここでもあるんだ……)
玲奈は志陽がそういう男であることを悟った。
「つまり、何にもないのよね」
念押しとばかりに、フミノが品定めをするように玲奈を見据えた。
「な、ないです! 誓って!」
「よろしい。解散」
「あー良かったー」
「志陽に限ってないって分かってたけどねー」
「一応聞いとかないとね。安心したわ」
女子たちはわらわらと去っていく。通常運転に戻り、「仕事するわよ」というフミノに逆に詰め寄った。
「いやいやめちゃめちゃ怖かったんですけど! 説明とかないの?」
「志陽に手を出してたらここに居られなくなってたわよ。命拾いしたわね」
どちらかというと、ナンパされた側なんですけど、とは言うまい。三倍返しで口撃されそうだ。
「そんなにモテるんだ、彼」
「ここで働いてる子たちの八割は、一度は志陽に落ちてる」
「うわっ」
(少女漫画じゃん……)
「何でそんなモテるの?」
「まず優しいし、人当たりがいい。地味な子だろうが、大人しい子だろうが、関係なく笑顔で話しかけて、当たり前みたいに手助けする。そして格好いい。顔は勿論だけど、体格もすらっとしてるでしょ」
「背ならリュウのが高いよ」
「うわっ、惚気」
「あ、いや」
「あんた、いつの間にかリュウとはフリじゃなくなったの?」
素直にリュウの方がスタイル良くないか、と思って言っただけだが、フミノはそうは捉えなかったようだ。
「ていうか……フミノも好きなんだ」
「そうよ」
「おお、潔い!」
「別に、隠しても意味ないし。大抵の子は志陽が好きなんだから」
「へー、そっかあ。告白しようとは思わないの?」
「思わない」
「そうなの?」
「しても叶わないから」
「……そんなの、分からないじゃん」
フミノは返答しなかった。




