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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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108/163

108話


「終わった……」

「手ェ真っ赤」


 玲奈の手を見て、リュウは言う。

 

(洗濯って重労働……)


 玲奈がフミノと共に担ったのは五〜六十名分の洗濯。洗うのにも絞るのにも握力がいるし、干すのは全身運動で、終わった時にはぐったりだった。


「丁度お昼ね。一時間したらまたここに来て」

「あ、うん……」


 フミノはすたすたと行ってしまった。


(話したかったのになぁ)


 ちょっと落ち込む玲奈の頭に、リュウが腕を置いた。


「う、重、やめて」

「飯」

「行くけど、ちょっと、ベタベタしないでよ」


 リュウは舌打ちし、小さく「芝居」と呟く。そう言われると文句は続かず、大人しく引っ張られるしかなかった。



「手出せ」

「ん?」


 いざご飯にありつける、というタイミングで正面に座ったリュウに手を取られる。まだ赤い手のひらを、リュウが労るように撫ぜた。


「柔い」

「……まあ、リュウに比べたら」


 玲奈の肌は向こうにいる間、苦労とは無縁のものだった。こちらに来てから色々あって荒れてきてはいるが、まだ肌を硬く強く、作り替えるには至らない。


「リュウのはゴツゴツしてる」

「お前に比べればな」

「あと指が長い」

「お前が短ぇんだよ」


 二人きりの世界を作ってることに、玲奈は全く気づいてなかった。ぬっ、と後ろから影がさす。


「なーに良い空気出してんのよ」

「えっ」

「お前らそういう関係になったのか?」

「えっ、あ、いや」


 ナシュカとトキも昼時のようだ。現れると同時、玲奈をからかう。否定したかったが、こんな人通りの多いところじゃ下手に言えない。リュウは全く焦っておらず、パっと玲奈の手を離すと先に食堂を始めた。


 どうしよう、と思ったが、隣に座ったナシュカが肩に手を優しく置いた温度で、落ち着いた。


(分かっててからかったのか……)


 トキは片眉を少し上げた。こちらも同じようだ。



「二人は何の仕事した?」

「俺は書庫整理。書庫の奥の古い書物を別室にひたすら運んだ」

「へぇ、書庫があるんだ」

「ん、かなりでかかったぞ」 

「ふうん、ナシュカは?」

「書斎の掃除」

「大変だった?」

「全然。命がけで来たことを思えば欠伸が出るわよ」

「まあ、確かにな」

「そうだね……」


 こうやってゆっくりと美味しく温かいご飯を食べられるのも、その有難さが身に沁みる。お茶を啜り、息を吐いた。


「手が痛いくらいでへばってちゃバチが当たるよね! よし、頑張る!」

「へばってたの? 早すぎない?」

「ちょっとだけだよ。気合い入れ直したから、もう平気!」


 その夜。仕事を無事に終え、部屋に戻る。体はくたくたに疲れ切っていたが、リュウにしっかりと伝えなければならないことがあった。


「ねえ、リュウが近くにいると目立つから、監視は別の人にしてよ」

「お前の意思は関係ない。陛下からの命令だ」

「……目立ってたら意味ないじゃん。恋人だからって、何もせず日中ずっと隣にいるって不自然でしょ」

「お前の仕事手伝ってやってんだろ」

「だから、リュウの立場でそれをやってるのが不自然じゃない」

「今は物珍しくてジロジロ見られてるけど、二、三日もすれば落ち着く」

「……そうかなあ」


 心配していたが、リュウの言う通り、一週間もすると不審がるような目は収まった。


 フミノの情報によると、リュウは曰く付き故、九垓が配置に持て余して、好きにさせてるとの通説が広まっているようだ。人は不思議なことがあると、自然それらしい理由を付けるのだろう。玲奈の方に特別な事情があるというのは、箝口令が敷かれて漏れていない。


 おかげで、リュウと玲奈が恋人同士だということは、全く疑われることなく事実として受け入れられていた。



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