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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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107/165

107話

「当面、あなたに任せるのは櫃花房(ひっかぼう)の洗濯、掃除ね」

「ひっかぼう」

「お前が入った独身寮のことだ」


 寮には名前があったらしい。玲奈は頷いた。

  

「まずは洗濯物の回収。ぼさっとしてると終わらないから」

「うん!」



「つ……かれた……」

「体力なさすぎ」

「うう……」


 フミノは呆れた。櫃花房の各部屋から敷布を引っ剥がし、回収。大風呂にたんまり積まれた浴布も同様に、がさっと回収。何往復かして、洗い場に持ってくるのだけでヘトヘトになった。


 洗い場には同じ格好をした男女が十名ほどいた。玲奈を見ると、にこりと笑ってくれたり、探るような目を向けたり。


(もしや怪しまれてる……?)


「新入りにはいつもああなの。それに、あんたは男連れだし」


 少し先の木陰で涼むリュウに視線を向けながら言った。


「……あれ、やっぱり目立つよね?」

「目立ちまくり。元々、リュウ自身が注目の的だから余計」


 若くして抜き出た実力者で、先王の元で護衛を務め、原因不明の力の暴走で、出奔した男。それが恋人連れで戻ってきたのだ。


(身を潜めるには、リュウはいない方がいいって後で言っとこ)


「これが洗濯板。桶の中で洗って。水はあっちの井戸から汲んで。洗剤はそこに積んでる」

「……魔術は使わないの?」

「使わなくてできることには使わない。魔石の無駄だし、若者の仕事を奪うことにもなる」


 それは正論だが、この量の洗濯を手で行うことは中々の労力だ。そう思うが文句を言える立場ではないので、教えてもらった通りに作業をする。


「今日は午後から天気が荒れるらしいから、早く洗わないと」


 フミノが空を仰ぎ見た。この国にも天気予報があるようだ。


「魔術を使って予報するの?」

伝鳥(でんちょう)が空を見てくるのよ」

「でん……なに? 鳥?」

「伝鳥は貴類の血を引いた生物。この国では、古くから伝鳥と助け合って生きてきた」


(貴類……)


 度々、その存在の名を耳にしてきた。玲奈に下された宣告にも関わっている。


「貴類って会える?」

「はぁ? 何急に」


 フミノの訝しげな顔はスルーして、もう一度「どうなの?」と問う。少しずつでも、情報収集をしなければ目的は達成できないだろう。フミノは手を止めないまま、玲奈に教えてくれた。


「一般庶民にはまず無理だけど、方法はある」

「え! どうやって!」

「陛下は貴類の現れる場所を知る術を持ってるそうよ」

「あの人が……」


 やはり只者ではないようだ。九垓の協力を得たいところだが、大手を振って味方と言い切れないところがまた難しい。


「陛下って呼ばないと浮くんじゃないの」

「あ、確かに」


 そこまで気が回ってなかったが、周りに溶け込みたいなら必然だろう。フミノは「こいつ大丈夫か」と呆れた顔をしたが、玲奈は気付かなかった。フミノはため息をついた。


「それより今は、手を動かして。終わらないから」

「はいっ! ごめん!」


 その迫力に慌ててこくこくと首を振り、そこからは黙々と洗濯をこなした。


 

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