↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
39/50

第39話:速戦即決

 カソック姿のおっさんどもをブッつぶしてやる! と、意気込んだものの、連中を追うための手立てはない。


 ゲーム中にあったイベントなら確実に、未実装イベントでも資料を思い出せば、会ったかもしれない背景情報もそれとなく、ある程度の確度で思い出せたりするものだが今回ばかりはお手上げだ。

 なにせこんなイベントはオレにとっても未知数なのだから。


 だが、追うべきヒントはすぐに得られた。

 天使どもだ。


 といっても、頭で思い描くような連中ではない。

 フォルムこそ天使そのものだが、光に当てればそれがあくまで影だけを模した不恰好な怪物か、廃棄されたもので固められたスクラップ群であることがわかる。

 それが夜な夜なその体と同じような、スクラップを抱えて飛んでいるのを見た。


『王が目覚める』


 連中が発したその言葉と空を行き交う天使どもの姿を見れば、巣穴にせっせと餌を運ぶ鳥のようにも思えた。

 だから、


「そーらッ」


 天使、撃ち落としてみた。

 オレが一人で過ごす夜の一日でやったことはこれだった。


 やり方は簡単。

 適当な怪異のカードを揃えて合体、風の力を操る怪異に作り変えて飛んでいるものへとその力を向ける。


 MQLにおいて空を行くものは大抵、飛び道具か風の力に弱いと相場が決まっている。

 風の力がダメだったとき用に別途射撃手段も用意していたが不要だった。


 がしゃあと音を立てて天使もどきが落下する。

 マネキンに寄生するように繊維質の何かがくっついている。羽のように見えたのはボロ傘、手足で喪失している部分はテーブルかチェアの足をくっつけている。


「やっちまえ」


 指で示すとスパルタクスがその暴威によって一撃で粉砕する……ではなく、手加減させた。

 羽や四肢の幾つかは吹き飛ぶが苦しむ様子はない。

 ただ、勝てないという判断はしたのか、逃げ出そうとする。


 狙った通りだ。

 こいつらは巣穴に何かをせっせと運んでいる。

 命令を遵守するために行動している。攻撃されれば自衛のために戦おうともするだろうが、勝利が叶わないなら逃げ出そうとする。

 逃げる先は当然、戻るべき巣穴。


 こういう手合いはゲームでも実際に出てきたことがある。

 なにもMQLに限った話ではない。オープンワールド系のゲームだと戦いを途中で終わらせるなり、逃げ出すなりした奴ってのは元の命令(ルーチン)に従うってもんだからな。

 自我が薄いか存在しないヤツはこういう定石があるかもというのが大当たりだった。


 攻撃はせず、敵対しない距離感を保ってそいつの後ろを追いかけ回す。

 壊しすぎたせいで動きはすっとろいがそれでも目的地に着いたようだった。


 それは『夜街コリドー』であり、更に進む先には別の出入り口。のたのたと進むまがい物の天使。

 出入り口を抜けた先にあったのは遊園地だった。

 さて、これで進むべき場所は検討が付いた。



 ✘✘✘



 トーコと詩織がオレの家に来るタイミングで、状況を伝える。

 つまり、倒すべきものがいるべき場所を伝えていた。


「遊園地なんて楽しいところでそんな連中が根城にしてるなんて」

「実際の遊園地そのものなのですか?」


「現実世界そのものじゃないが、その遊園地で大きな儀式だとか影響のある何かだとか、……それこそ神様が目を覚ますようなことになりゃあただでは済まないだろう」


 多少の影響、例えば天使もどきが暴れるだとか、それこそオレ自身が暴れるだとかしたところで現実に影響させることはできない。


 夜街コリドーの中にある空間は現実世界の表裏のようなものだとしても、現実を非現実の空間が犯すことは難易度が高いのだ。

 だが、それが世界そのものを歪める儀式や神の威光であれば話は別であり、連中が王だとかなんとか言っていることを考えれば、彼らの儀式が実際に現実を犯し切る可能性は極めて高い。


 許せないな、と義憤だろう感情でトーコが言う。

 兄の仇でもあるものが待ち受けるであろう場所でも、仇よりも先に、


「放っておけば遊園地がどうなるかもわからないよね」


 生きている人間の心配をするあたり、やはりトーコは英雄的素養(ヒーロー的なもの)に満ちていることがわかるのが少しだけ嬉しかった。


「彼らに時間を与えるのも怖いですね」


 天使喰らいを思い出して詩織が言う。

 あのような怪異が彼らの手で量産されることになれば脅威以上の何者でもない、と。

 ただ、詩織にはそれ以上の恐怖や忌避があるようには見えなかった。

 むしろ、詩織にはオレやトーコに害を為すものであれば容赦なく撃退してやるという強い意志を燃え上がらせるようだった。


「二人の心の準備ができるなら早めに叩きたい」


 であれば、オレからアレコレと良い及ぼすようなことはない。

 ただ早く行きたいとだけ伝える。

 二人は見合わせてから、頷く。


「行こう」

「行きましょう」


 そういうことになった。

 毎日一話ずつ更新させていただきます!


 お楽しみいただけましたら是非、評価やお気に入り登録などしていただけますと人生の喜びになります!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。