【演じ続ける者】
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「さすが──リエン様、俺の体術をあっさりと会得するとはね」
「感謝しているよ、エルジナ──今のぼくの演技も君の指導があってのものだ」
「しかし、こんな俺を拾い上げるとは、リエン様、あんたも物好きだな」
「ぼくには──力が必要だ、君のような、女というハンデを糧にしない演技がね」
「だが、俺の強さはあんた様の正義とやらには、あまり相応しくないような気がするけどな」
「そうでもないさ──ぼくは言葉だけの正義を演じるつもりはない」
「だが──彼はどうなんだ」
エルジナが横目で離れた場所に座っていたスバルを見る。
「──言いたいことはわかる、エルジナ──ぼくの演技はすべてを救う、世界の理不尽に立ち向かうためにね、こんなぼくを哀れと思うかい、エルジナ」
「まぁ、馬鹿だとは思う──だけど、あんた様のその“選択”は嫌いじゃない」
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「トウカくん──それはなんだ?ぼくは知らない──そんな能力だと報告は聞いていない」
ビリビリと青白い火花が大盗賊が呼び出した、皆を狙った数々の武器に纏わりつくように──そしてそれらの矛先は俺の透明の結界壁へと向く。
そして、煩理リエンの合図とともに俺の方に向かって飛んでくる。
「くっ──」
バリバリと青い火花を散らした武器が俺の右の手のひらの前にある透明な壁に次々とぶつかり──床へと落ちる。
結界壁に武器がぶつかるたびに強い衝撃が俺を襲い──結界がひび割れていく。
「トウカッ──」
ナギサのそんな叫び声と共に──
防ぎきれなかった剣の一本が俺の左肩へと突き刺さる。
床に落ちた武器、俺の肩に刺さった剣が消滅していく。
「──誰だけじゃない、全部でもない──“皆”を守る」
「ぼくは何をしたと聞いた──」
「そんなもの自分で考えろ──そんなものは根性、気合、ど根性だろうがッ」
「演じよう──“権力”、跪けっ」
「ぐっ──なんだ、これは」
地面を蹴り上げ、煩理リエンに殴り掛かったリヴィがその権力の能力で地面に膝をつく。
「──トウカ、貴様の気合、しかと見た、あたしも続こう、狂人化」
リヴィの髪が赤く染まり、瞳の色も赤に染まる。
「王様だろうが、なんだろうが──あたしはそんなものに媚などせんッ」
「演じよう──“名声”、くっ──」
手にしたレイピアを盾にするようにその一撃を防ぐが──
レヴィの狂人化した一撃を防ぎきれない。
「ぐっ──、このぼくが──演技が乱されているだと──ありえない、あってはならないな──その程度のことで動揺するなど」
煩理リエンは壁に叩きつけられた体をすぐに立ち直し、すぐ横の床に刺さっていた赤い刃の刀を持つ。
もう一人のリヴィが姿を現す。
「──夢咲ユイ、君の能力か、たった一撃当てた程度で──ぼくの悪夢を気取るか」
「実体化しろっ」
カリンがその幻影のリヴィに透明な刃を突き刺す。
「狂人化ッ──受け取れ、リエン──これがトウカに守られ、そしてその想いに答える仲間だっ」
二人のリヴィが息を揃えるように狂人化するとその拳を煩理リエンへと叩き込む。
再び、煩理リエンの身体が壁にめり込むように叩きつけられる。
「認めよう──その結束、その強さというものを──だが、ぼくが負け、それを演じなどしない」
赤い刃が実体化した幻影を切り裂き──消滅する。
ギンッ──
さらに本体であるリヴィを狙った刃が俺の結界に遮られる。
「演じよう──“富”」
大盗賊の姿になる万理リエン。
呼び出される数々の武器。
照準は再び──その場にいる俺以外の全員に矛先を向ける。
そしてその煩理リエンの瞳は何かを試すように俺を見ている。
右手を伸ばす──
俺がまた皆を守るためにそうすると──疑わないように──
彼女の瞳は作り出された俺の結界壁だけを見ている。
ビリビリと青い火花が、煩理リエンの作り出した武器に纏わりつくように発生する。
俺に狙いを変えた武器が地面に落ちる。
透明な結界壁が──ひび割れ限界を迎えながらも──
それらが地面に落ちていく。
「なるほど──剣や槍にトウカくん、君の魔力を纏わせ──その魔力を自分の腕に引き寄せた──という訳か」
「──リエンさん、あんたは凄いよ、だけど──俺たちは勝ちを演じるんじゃない、俺たちはあんたに負けないんだ」
「演じよう──“名声”」
赤い刀を握ったまま──武術特化の能力を演じる煩理リエン。
「黙れよ──努力も演技もなく、ただ──選ばれただけのお前らが、勝ち誇ったように──その言葉を吐くなッ」
「その罪を背負えッ」
ダンッと母さんが構えた拳銃をその赤い刀の刃に向け放つ。
銃弾が刃に当たると──
煩理リエンの身体が右に大きく傾く。
「──そんな使い方もできるのか」
多勢──それでも、でも気を抜けば一瞬でその戦況は傾いてしまう。
「覚悟しろっ─うらぁーーーっ」
バランスを崩す煩理リエンにシュウがその拳を振るう。
「くっ──」
煩理リエンがその母さんの能力で重くなった刀を無理やり持ち上げ──
その刃をシュウの拳へとぶつける。
「形どれ──水の爪」
ナギサの腕に水が纏わりつき水の爪型のグローブが形どられる。
「トウカ──が魔力を腕に巻き付けてるの見てて思いついた──」
「形どれ──鎌鼬ッ」
爪の部分が外れ──煩理リエンに向かい刃のように形を変える。
「ぐっ──」
その斬撃に──煩理リエンは吹き飛ばされるように──
後ろに後退するが──両足を床につけ、持ちこたえる。
「くっ──」
単純な母さんの拳と蹴りがすぐに煩理リエンを襲う。
「飛べッ」
カリンがその変にある家具を飛ばし応戦する。
「狂人化ッ──」
レヴィの拳──それを煩理リエンは両腕でガードするが──壁に叩きつけられる。
「足りない──煩理リエン、もっと演じろ──」
煩理リエンは自分自身に言い聞かせるように──
「あの人は──あの戦場でたった一人で、この理不尽に今も立ち向かっている──ようやくあなたに近づけた、この孤独の戦いに打ち勝ってこそ、ぼくは成長できる──さぁ、演じよう──どうしたトウカくん、ぼくはまだ“負けていない”」
不敵な笑みで俺を見つめ、そう言葉にする。




