【演じられない恋】
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「どう──美味しい?」
「うん──でも、リエンちゃん、どうして僕のところに、足を運んでくれるのかな?」
「迷惑──?」
「いや、こうして──ご飯を届けてくれたり、僕なんかの話し相手になってくれるのは嬉しいけどね、危険なんだよ、ここは」
彼がある人のいや──世界を守るために身を置いている戦場。
「どうして──あなたをひとり、戦わせる世界のために戦い続けるの」
何度目だろう──言葉は違うけど似たような質問を幾度も投げかけてきた。
「守りたい人がいるんだ──そのためにはね、世界を守る」
「でも──対して覚えてないんだろ?その人のこと」
「うん──でもね、この感情だけは残ってる」
「──感情?」
「──うん、だから僕は“負けない”」
「また──それ」
ちょっと呆れるようなぼくの口調に、その人はいつも苦笑いで──
「美味しいっ」
「ほんとっ?」
ぼくの作ったお弁当をおいしそうに食べてくれる。
ぼくは少し頬を赤らめながら──
「うん──カイナの作ってくれた料理──そのくらいに美味しいよ」
そんな覚えていない料理の味と比較する。
すくっとぼくはその場から立ち上がり。
「どうしたの?」
「今日はもう帰る──」
「あれ──僕、悪いこと言ってしまったかい?」
「別に──」
「でも、リエンちゃんの口元がすごいとがってるよ?」
「見るなッ!!」
「また──来る、その時はぼくの話だけ──」
いつも──優しく笑うその瞳は悲しそうにぼくを通して誰かを見ていた。
不快だったんだ──ずっとずっと──
ぼくはいったい──彼のために、何を演じられていないのか。
─────
「なかなかに面白い──頭のいい子は好きだよぼくは──」
俺を自分の能力で拘束し、結果的に能力を封じたナギサを評価する煩理リエン。
「悪いけど、いくらイケメンでも同性趣味は無いんで──」
「残念──同性からもモテると思っていたのにね」
まったく残念そうなそぶりもなく煩理リエンはナギサを見る。
「いいだろう──君ぐらいの年ごろの女性には少し遠慮をしてしまっていたが──水無瀬ナギサ、ノアの敵でもあったね──」
「やばい──なんか本格的に目をつけられたんですけど──」
そう言いながらジャージの上着から水を取り出すナギサの手をじっとミリスが見ている。
「ナギサちゃん、君はあの未来のネコ型ロボットの末裔かい?そんな小さなポケットからいくつその水がでてくるんだい?」
ミリスの興味はそんなナギサの青いジャージのポケットにいってしまう。
ペットボトルの水を振りまく。
「形どれ──切り裂くナイフ」
水が空中でまとまる様に6つのナイフを作り出す。
そのナイフが煩理リエンの身体を目掛け飛ぶ。
「演じよう──それは“富”」
大盗賊を演じる。
「それらは古の鍛冶師が創り出した小刀──その君の能力に相応しい能力を見せつけよう」
手にした銃のトリガーを引くとそれらはナギサの身体を目掛け飛んでいく。
水を魔力で固めたナイフ。
それは、古の鍛冶師、それが誰かは知らないが──
その強度は遠く及ばぬように──砕けたナイフは水へと戻る。
「ぎゃーーーっ」
そんな、緊張感のない悲鳴をあげながらも、器用にバク転まで交えナギサが回避すると地面に小刀が突き刺さる。
「いっ──」
ギンッ
回避しきれず残っていた一本が俺の結界に弾かれる。
「トウカ──助かった」
「うらぁーーーっ」
さらにシュウが、“権力”の能力から解かれた煩理リエンを狙い拳を振り下ろす。
ガンッ──
「なるほど──君たちの馴れ合いは確かに厄介だな」
銀色の立派な盾が宙に浮かび──そのシュウの一撃を防いでいる。
「あんたこそ──たった一人で攻撃、防御、サポートまで一人でこなして、随分と厄介だけどな」
俺はそんな嫌味を含めた言葉で彼女を評価する。
「足りない──あの英雄を救うためには、ぼくはまだ演じきれていない」
「王子に盗賊、王の次は──神でも演じるつもりか」
そんな俺を睨むように瞳を向ける。
「神など誰も救いなどしない──そんな神に代わりあの人が世界を救い、そんな世界を救う英雄すら神は救おうとしない──」
「頼るものか──救うのはぼくだ、演じるのはぼくだ──それが神であろうが、悪役だろうが、演じるのはぼくだよ、トウカくん」
煩理リエンの周囲から赤と青の色をした刃の刀が現れる。
「演じよう──それは“名声”」
王子は大盗賊からその二振りの刀を受け取る。
「リエン──」
「リエン」
二人の年配の男性と女性。
「父さん?──母さん?」
「つまらない──悪夢だな──夢咲ユイ、だったかな」
二本の刀で現れた幻影を躊躇うことなく切り裂く。
「あら──本当に情報が筒抜けなのですね、この国の個人情報とやらはどうなっているのでしょうか」
現れたユイがリエンの瞳を覗き込むように見ている。
「ノアさんにここまで案内してもらったのですが──あなたには会いたくないみたいで──」
「ユニア──」
ユイの足元にぎゅっとしがみつく、ピンクのテディベアを持った少女をリエンが見る。
「余計な真似をするな──ユニアを救うのはぼくだよ、世界が見放した彼女たちを余さずぼくが救う」
「それを見たということは──あなたにとって悪夢になりうる何かということでしょ?」
「──そんな、悪夢などとっくに克服したさ」
煩理リエンはそんな、ユイの能力を恐れることなく、彼女の瞳を見つめるように答える。




