【王を演じる者】
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10年前の記憶──
「何をしているか──か」
研究の一環として、ぼくは父を騙しあの人に時折、会いに行った。
「困ったな──簡単なようで意外と答えらしい答えが浮かばない」
どうして、こんな場所で一人世界を守るなんてことを続けているのか。
そんなぼくの質問に──くだらなそうに、そして真剣に悩んでいた。
「──“守りたい”のかな」
「守りたい?世界を?」
「うん──世界を、トウカを、カイナを──」
「トウカ─?カイナ─?」
「うん──世界を守ることがそれに直結するから──実験体にもね、個人的に守りたいものがあるのさ」
「──でも、記憶は“食べさせた”って──」
「うん──僕が特別なのか──ミリスは優しい娘だからね──本当は食べたかったのに僕のために残しておいてくれたのかもね──」
そんな──優しく寂しそうに笑うあの人の顔が──大好きだった。
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「食べるのなら──残さず食べろ──それが、白竜、おまえの役目だろ」
煩理リエンがレイピアを握る。
その冷たい瞳はミリスを睨んでいる。
「さて──トウカ、彼女は何の話をしているのだい?」
「リエンちゃん、僕はグルメだからね、トウカと一緒に食べるご飯が大好きなんだ」
「“記憶”を食う獣が──」
「記憶を──食う?」
ナギサがどこか──記憶を探るようにミリスを見ている。
「あの人を犠牲に──ミリス、お前の何が世界の“希望”か」
煩理リエンが地面を強く蹴り上げ、地面から両足を離し低く飛び跳ね、ミリスとの距離を詰め寄りレイピアを持つ右手を伸ばす。
「うらぁーーーーッ」
そんな煩理リエンにシュウが高く飛び上がり、その頭上から右腕を振り下ろす。
ガードには向かない武器。
煩理リエンはそのシュウの一撃を後ろに体を反らし回避し──
すぐにその右手を伸ばし、カウンターを決めるようにレイピアの先を向ける。
「水蛇ッ」
シュウを狙ったレイピアの刃にナギサの作った水蛇が絡まり、その先がシュウに届く前に動きを止める。
俺は右腕に結界の魔力を纏わせる。
右手でてっぽうの形を作り、照準を彼女へと合わせる。
バンッと結界弾を放つ。
彼女の瞳がすぐに俺、その弾丸に向かう。
手放したレイピアがナギサの水蛇に吊り上げられるように頭上に浮かぶ。
左脇に抱えていた弓矢を構え、その結界弾に起用に矢を放つ。
そして、そんな弓をその場に捨てると高く飛び上がり、水蛇に吊り上げられたレイピアの掴みなおすと、絡まった水蛇から引き抜き──そのまま俺の方へと落下するようにその腕を突き出す。
ギンッ
俺が彼女の方に右のてのひらを広げ突き出すと──
そのレイピアの切っ先が透明な結界板に遮られる。
「その罪を背負え──」
すぐに二撃目を繰り出そうとするレイピアの先に母さんが右手を乗せる。
そのレイピアの重さに耐えかねるように煩理リエンが右側に傾くようにバランスを崩す。
「守る──助け合いのつもりか──」
煩理リエンはそうつぶやく様に吐き捨て──
レイピアをその場に置くと──
武器を捨て、母さんにその拳を向ける。
母さんもそれを回避し、拳や蹴りを互いに向け打ち合う。
母さんは仕事柄、体術を身に着けている。
その練度は同業者の中でも抜きん出ているだろう。
「うらぁーーーっ」
さらに、シュウが乱入するようにその漆黒の手甲の腕を振り下ろす。
「──演じよう、──“権力”」
「跪けッ」
「ぐっ──」
「ちっ──」
母さんとシュウが──その命令に逆らえないように──膝をその場につく。
新たに現れた剣を母さんに振り下ろす──
俺の作り出す結界がそれを遮る。
「さすがに──全員を命令できる訳じゃない──か」
そう俺は右手を伸ばす。
その煩理リエンの瞳が俺に向く。
そして俺に振り上げた右腕が──
「水蛇──」
彼女の右腕が頭上で水蛇が絡まりその場に固定されている。
「リエン──これが、あんたが否定する“助け合い”だよ」
母さんはその重力にあらがうように拳銃を持った右手をあげる。
「──演じろ」
目の前の王は──それでもつまらなそうにため息をつく。
「首を垂れさせるだけが──王としての演技だとでも?」
そんな王は俺を見つめ──
「──演じろ、王を“守れ”」
ダンッ──母さんの放つ銃弾。
そして、俺の右手は──そんな王の方に向く。
ギンッ
「──なっ?」
「トウカ?」
俺の結界が王を狙った銃弾を防ぐ。
「やれば、できるじゃないか──トウカくん、どうなんだこのぼくを“守った”感想は──」
「うらぁーーーっ」
俺にその命令をしたことで、自由になったシュウがその拳を彼女に向ける。
「演じろ──その身をもって王を“守れ”」
「ぐっ──」
「トウカ──」
俺は自分の意志に反し、二人の間に割り込むようにその身でシュウの一撃を受ける。
「無茶苦茶だろ──こんな奴、どう攻略すんだっ」
ナギサがそんな煩理リエンを見る。
「くっ──」
シュウは戸惑いながらも再び拳を振り上げる。
俺の身体が王を守ろうと動く。
「水蛇ッ」
シュウが煩理リエンに向けその拳を振り下ろす。
そして──それを守ろうとする俺の身体がナギサの水蛇に拘束される。
「なるほど──なかなか賢いじゃないか」
そのシュウの一撃を振り上げた右腕で受け止めながら──
少し感心するように煩理リエンが、ナギサを見る。




