【守りたいもの】
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それは10年前──
ぼくがまだ、小学を卒業し──中学へ入学したころだった。
「大罪人──?」
ようやく、親の世界──その創生の研究というものに立ち会うことが許された頃。
その研究の結果と言ってもいい──
その“希望”と“絶望”と分類された魔力の具現化された何かはその男に──逃がされた。
「あぁ──もともとはあの“実験体”も一緒に逃げ出したのだがな──」
父はそんな──まるで別の星、月のような一面で──何やら両手を前にかざして、重い扉でも塞いでいるかのように構える男に向かい言う。
「どうして──あの人は戻って来たの?」
「実験体の分際で、人に恋をし──子まで作ったようだ、本人はその記憶を“食べさせて”しまったようだがな──」
「“食べさせた?”」
「──それを探すのは後だ、あの男が余計な事をしたせいでやることがやまずみなんだ──」
「あの人に何をさせているんだ?」
「守らせている──黒竜と白竜が戻るまで、この世界が壊れないようにな──その責任くらいはとって貰わねばな、そのために“感情”も与えた」
「世界を守る──たったひとりで?」
今思えば──一目ぼれだったのかもしれない。
恐らく、年齢はぼくよりも15歳近くは年上で──
でも、その割にはどこか、幼い容姿で──
何年も一人で──
「ねぇ、あの人とお話することはできる?」
ぼくの興味はそんな親の研究よりもその男に傾いていた。
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「頑張るなよ──トウカくん、君はあの人のようにはなれない──悪役ひとりから、母親ひとりも救えない」
王を演じる煩理リエン。
その能力で俺も母さんも──地面に拘束されるように、右腕一つ動かすのがやっとっだ。
「──誰と何を比べてるかなんて知りませんが──まだ“負けてない”」
その言葉に少し苛立つように──
ドガッ──っと、彼女の重い拳が振り下ろされる。
「トウカッ」
母のそんな俺を心配する声。
「くだらない──トウカくん、君の使うその言葉はその程度なんだよ──同じ言葉を使うあの人とは全く重みが違う」
ドンッ──
次の瞬間、ドアを蹴り飛ばす様に──
「トウカ──無事?」
ナギサが姿を現し、俺の方を見る。
「──白髪、ピンクの瞳──白竜、ミリスか」
「え──私は無視かよ」
煩理リエンはナギサを無視し、ミリスの方を見る。
「おやおや──僕のことを知っているのかい?」
「ミリス──カオス──お前たちは“あるべき場所”へ還す、あの人を救うために」
「カオスのことも知っているのだね──」
「カオスはすでにぼくの“手の中”だ──」
「なるほどね──でも僕は腹ペコなんだ、リエンちゃん、君には都合よく聞こえるかもしれないが、そんな“記憶”などとっくに消化してしまったよ」
「ミリス──何言ってるんだ?」
「さてね、トウカ──ただ、僕はドラゴンだよ、いつだって腹ペコ、なんだってぺろりと食べてしまうよ」
寂しそうな顔でようやく俺を見る。
「トウカ──ミリスちゃん、彼女が何者かなんて関係ないだろ、あんたはあの子を守る、そう約束をしたんだろ──だったらそれを“守る”んだ」
「演じろ──それは“富”──」
その言葉と共に、俺、そして多分母さんも──地面に縫い付けられるような拘束から解かれる。
「“権力”と富は同時には演じられないのか」
そんな俺の分析の言葉を煩理リエンは冷たい瞳で答えるように見る。
周囲の空間が歪み無数の武器が現れる。
「守る──君たちには何一つそれを守ることなどできんさ、腹立たしい──そんな言葉を軽々しく吐く──おまえ達を守るために、世界を守るなんて大罪を背負うあの人の前でそんな言葉を吐くなッ」
手にした拳銃のトリガーを合図にそれらの現れた武具がナギサとミリスに向かい飛んでいく。
ギンッギンッ──一つ、また一つ俺がナギサたちのまえに張った結界がそれを防ぐが──
その武器が結界にぶつかるたびに、俺の魔力が削り取られるように身体に衝撃が走り、結界がひび割れていく。
「いちいち、不快に厄介だ──演じよう、“名声”──」
煩理リエンが剣と弓を両手に掴むと──王子の衣装に変わるとともに手にした武器以外は消滅する。
弓で矢を射ると──俺の結界の中央に突き刺さり──
「ぐぁっ──」
俺の結界が消滅する。
「なっ──」
戸惑うナギサとミリス。
そんな二人の前に地面を蹴り上げた煩理リエンが身体を旋回させるように飛び跳ね、右手の剣を振るおうとしている。
「うっらぁーーーーッ」
同時に──そんなナギサとミリスの頭上を飛び越えるように──
動きを止めた煩理リエンは──現れたシュウの漆黒の手甲をその剣で受け止めている。
「大丈夫か──ナギサ、トウカ」
「その言葉、そっくりお返しするぞ」
ナギサが先の戦いのせいか、ボロボロのシュウに言う。
「俺はピンピンしてるぞ、あんなインチキにやられるか」
「あの子たちを悪く言うな──」
煩理リエンがシュウを睨む。
「この──ずさんだ管理の世界を生きるために彼、彼女らが──その仮面を探し、卑怯に委ね、誰かに依存する──おまえたちの建前だけの正義よりもずっと世界に抵抗しているっ」
「ぐあっ」
シュウが蹴とばされ、距離を作られると──煩理リエンが地面を蹴り上げ飛び上るとその剣をシュウを狙う。
「く──あの人と同じその力で、幾度もぼくの邪魔をするつもりか」
その刃が、俺の結界に遮られる。
「ぼく、ぼくだけがあの人を理解してあげられる──どうせ、あの人はあんたたちの事なんて覚えちゃいない──ぼくがぼくだけがあの人の孤独な舞台に立ってあげられるッ」
結界に遮られた刃をそのまま押し付けるように力まかせに結界を破ろうとする。
「ぐっ──がぁっ」
俺が必死に結界を保とうとするも──
彼女の持つ剣の刃と俺の結界が同時に砕け散る。




