【一番おいしいご飯】
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これも──違う。
これでもない──
じゃぁ、それは──
そっちは試したか──
仮面の山の上で──
顔の無い一人の少女が、その仮面を拾い上げては──
その山の上に仮面を捨てる──
ねぇ──本物はどれだ──
拾い上げた一つの仮面を付け間違えるように逆さに嵌める。
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「“技術”と──“逆”──か」
ナギサは自分と同じ床を走るコマを見ていた瞳をタツキへ向ける。
「魔力によって増強されているんだろうけど──そのコマも糸も」
「違う──全部、全部作り物だ──私がただ、仮面にしただけ」
「私にとってはどうでもいいんだけどさ──それで、なんであんたがえっとリエン……様だっけ?そんな崇拝しているんだ?」
「あの方は──私の完成形、その演じる姿が見られたら、何かが見つかる気がするんだ」
「演じてるってんならさ、そいつも“嘘”つきだろっ」
「嘘は本物よりも美しい──だから人は演じる生き物なんだよ、ナギサ」
タツキの右手にトランプのエースが握られている。
一瞬、目を離し視線を戻すと図柄がハートに変わっている。
「普通に手品師で生きてけよ、もう──」
「がっおーーーっ」
ミリスが急にそう言葉にして吠える。
「美味しくないんだよ──嘘はね──」
「ミリスちゃん?」
恐らくそのトランプを武器としてナギサに投げようとしていたタツキの手が止まる。
「例えば──だよ、ナギサちゃん、トウカが嫌いと言葉にしてくれるかい?」
「──え、ん?トウカ──嫌い……」
ミリスがナギサの瞳を覗き込みながら──
「今、ナギサちゃん──君の口の中は美味しいかい?」
「──いや、よくわかんないけど、多分──美味しくはないな」
「見方の問題だ──嘘をどう見るか、どう演出するかだ、その嘘をどう形にするかで、その言葉は本物以上の言葉を持つ」
「僕はまだ、人間になったばかりだからね──そう難しい事はわからない、けどね──それが美味しいか、まずいのかはわかるのさ」
ミリスがゆっくりとピンク色の瞳でタツキを見る。
「タツキちゃんと言ったかな?君の言葉は口の中が美味しいのかな?」
正しいか正しくないかの物差しはそれだけだと──
「がっおーーーっ」
ミリスが再びそう吠えると──
「小竜の姿?動いてるとこ初めてみたかも──」
白い小竜の姿になったミリス。
パタパタと自由に羽根を動かし、動き回る。
「それが──“本物”か」
少しだけ殺意に近い眼差しを白の小竜へ向けるタツキ。
「タツキちゃん、君が本物を隠し本物を探すために集めた嘘はさそがし不味いのだろうね──」
「黙れよ、獣ッ!!」
ナギサに投げるはずのトランプのカードをミリスに投げる。
ビュンッと魔力のオーラを纏うカードが小竜姿のミリスに飛ぶ。
「ミリスちゃんっ」
「がっおーーーっ」
ガブリとカードを口の中に飲み込む。
「やっぱり僕だってなんでもは美味しくないさ──でもいいよ──僕がその嘘を全部、“食い尽く”してあげるよ、そしたら君の“本物”も見つかるだろうさ」
「がおーーーーっ」
ミリスがその小さな身体で大きな口を開くと──
「なんだ──?」
大きく息を吸い込む。
ぐるりとタツキの視界が反転すると──
逆さだった身体が床に落ちている。
「能力が──封じられた?」
「少しだけ──君の嘘を食べさせてもらったよ──それが本当に嘘だったかはわからないけどね──」
「何言って──」
ミリスがそのまま──近くにあった水槽の近くに飛ぶと──
魚の泳ぐ水槽の水ごとすべて吸い上げるように口の中に含む。
膨れ上がった口の隙間から──ぺちぺちと魚のしっぽが跳ねている。
「がおーーーーーっ」
その水を吐き出すミリス。
「ナギサちゃん──今の僕には大した魔力がないんだよ」
「形どれ──水の息吹ッ」
ナギサがミリスの吐き出した水をそのまま──水のブレスとして能力を与える。
「ぐっ──うぁっ」
その水のブレスに流されるようにタツキの身体が壁に叩きつけられる。
─────
仮面を探している──
例え──偽物の私の方が美しいとしても──
知っているくらいいいじゃない──
仮面の山の上に居る顔なしの少女。
懸命にその仮面を探している。
『がっおーーー』
そんな獣の鳴き声だけが聞こえ──
突風が巻き起こる。
その突風で──仮面が全て上空に舞い上がり──
私は天井に落下する。
突風が収まると──
「あっ──」
私は手を伸ばす──どれか一つでも──
だけど、その手は届かない。
すべての仮面はそのまま──床へと落下した。
あぁ──たぶん、私にははじめから“顔”がなかったのだと──
そんな仮面を食い尽くされた私は──
─────
「もう──どうでもいいや──」
タツキにはもう争う記憶は無かった。
「ミリスちゃん──いったい何したんだよ」
少しだけ恐ろしいものを見るように──
元の可愛らしい少女のミリスをナギサが見る。
「倒したのはナギサちゃんだろ──うぇ、ぺっ、まずぅ」
ミリスが口の中から飛び出してきた生魚を床に吐き出す。
「やっぱり、トウカが与えてくれるご飯が一番おいしいよ」
「僕はトウカが“大好き”だからね──」
そうにししっとナギサを見てミリスが笑う。
「ほんとかよ──」
「にしし、ナギサちゃん──今の僕の口の中はとっても“美味しいよ”」




