【嘘の味】
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気取っていたんだ──自分は何でもできるって──
だから、会う人に合わせてその仮面だけを付け替えた。
何でもできる本物はそんな嘘ばかりで自分を隠し続ける。
なんで、そうするのかはわからない。
私は人に合わせて器用にも不器用にも見せた。
だから──仮面を付け替えた。
だから、思い出は偽りだらけで──いくらそのゴミの山を掘り返してもどれが“本物”なのか……わからなかくなっていた。
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「どこか似てるんだよね、ナギサ──私に」
「ほざけ──人生成功人みたいな人間と不運を一緒にするな」
「言ったじゃん、私も最近──配信者にはまってるって」
「いいか──そういう“嘘”は私を傷つけるんだぞ」
「しかたないんだよ、私は何を言っても“本当”なんだ──私自身がそう理解してしまう」
「それに──意外と運動神経も、手先も器用だし──嘘は得意そうだけどね」
「嘘は“口”でつくもんだろ──今、あんたとこうして話す事すら奇跡なほど、人見知りの陰キャなんだよ、あーぁ、自分で言って傷ついた──責任とれよ」
「はは──面白いじゃん」
「傷つくってんじゃん、やめろ、その乾いた笑い」
「しかたないじゃん、忘れたんだよ──自分の笑い方」
「掘り起こしても掘り起こしても見つからない──どんな性格をしていたのか、どんな笑顔を作れたのか──もう取り戻せないんだ」
「いいだろ──それが自分で──私はそうして生きてきた」
「でも、ナギサ──あなたはそれを不運と偽って生きてきた──そうだよね」
「──でも、私はそんな自分を偽物だとも思ってないけどな」
そんな返しに少しだけタツキが不快そうな表情をする。
「私はぼっちで──オタク趣味で、そんな私をたまたま、前の席の冴えない男子が守ってくれる──そんな誰かの事が気になっちゃうような不運な女なんだ」
「──トウカのことかい?」
少しだけ興味を持つように吊られているミリスが割って入ろうとするが無視される。
「どいつもこいつも──そんな私の不運話を邪魔するなってのっ」
「その視覚を“逆さ”映せ」
タツキがそう言うと──
「──また、天井歩きかよ」
ナギサの視界が反転するように──
「あれ──」
ナギサも天井を歩いている──
「違う──視界が反転してる?」
「案外見ずらいだろ──」
逆さまの世界。
下に天井がある。
上を向き床を見る。
一歩歩いてみる。
頭がバグる。
飛び跳ねる動作すらうまくできない。
「私はそんな世界を望んで見てきた──それに適応できる私を誇ってきたはずだったのにね──」
そう、タツキはそんなナギサが困惑する逆さ世界を自由に歩き回りながら──その距離に合わせ拘束する糸の長さを調整する。
そして右手にこまを取り出すと、片手で器用に回転させ、自分の右のてのひらでまわしてる。
回転するこまの胴の外側から魔力が零れだす様に刃を作りだす。
跳ねらせたこまがタツキの左腕に移り、ゆっくりと降りていく。
左手に到達するとこまはその彼女の左指にからまる糸を伝うように──
「くっ──水蛇ッ」
ナギサがこまを逆に操ろうと水を取り出すが──
上下が反転しているせいでその水を上手く扱えず──ただ床に零してしまう。
ピンッとタツキがその左指の糸を弾くと、ナギサに迫ったこまが飛び跳ね、ナギサの身体に向かう。
「あぶなっ──」
右腕でそれを弾くが──魔力の刃のようなものがその右腕を切り裂く。
さらに、その弾き堕としたこまは勢いが死なず、そのまま床を転がっている。
まるで意思をもっているかのように、ナギサの身体を狙っているようにも見える。
そして、床を走り出したこまが再び高く飛び跳ね、ナギサを狙う。
「くっ──」
逆さの視界に身体が慣れないまま、ナギサは動き回り、それを交わそうとするが──
「うわっ」
さきほど、零し自分の水に足を滑らせ転倒する。
びちゃりと右のてのひらが水たまりにつく。
「くそっ──」
その転倒でこまを回避したが、未だこまは回り続け──ナギサへと迫る。
右の手で左腕を拘束する紐を掴み、転倒した姿勢のまま紐を引きちぎろうとするが──もちろんそれができるのならとっくにどうにかなっている。
「私にはこの世界すらも──嘘か本当かわからない」
「──どうだっていいよ、誰がどう世界を見てるかなんて──面倒くさいだけじゃん」
右の手のひらで紐をつかみながら慌てていた顔を冷静な表情に戻し、ナギサはゆっくりとタツキに瞳を向ける。
「形どれ──水蛇ッ」
「なに──っ!?」
タツキとナギサを拘束していた糸にゆっくりと──ナギサの右の手のひら水が伝っている──その紐に流れる水が糸がナギサの能力に上書きされたかのように水蛇に形を変える。
自分の自由になった拘束具をナギサが逆に操り、タツキの身体を壁に叩きつけるように右腕を振り回す。
「あぶなっ──」
ナギサは迫って来たこまを戻った視界で普通に回避する。
「視界は戻ったけど──こまは動いている──か」
ナギサはそのこまに瞳を向ける。




