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白竜に選ばれた僕は、不運少女を守るため“負けない力”を手に入れた  作者: Mです。


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【壊れろ】

 「私が空気に含ませた毒性の気体に別の毒を吸収させ私に吸わせた──そんなことまで……」

 「で、その致命傷になりそうな毒を避けた?馬鹿にしてるの?自分もクラスの皆も死にかけてるのに?馬鹿じゃない?」


 「それ──やってるあんたが言うなって」

 テーブルの上のアルコールランプに手を伸ばすナギサ。

 それを床に叩きつける。


 「簡単そうに見えてるでしょ?──意外と難しいんだイメージを形にするの、構造や仕組みを理解してないと上手く形にもならないし力も発揮しない」

 アルコールランプの中の液体を野球ボールくらいの球体に変える。


 「だから……これくらいで使うのが無難……」

 「ピッチャー第一球──投げましたっ」

 割と綺麗な投球フォームで手のひらから少し浮いている水球をアゲハ目掛け投げる。

 当然、スライム状にまとまっている毒素を巻き散らす粘液がアゲハの前に壁を作る。


 かまわず、ナギサがその水球を追いかけるように走り抜ける。


 水球がその黒い粘液の中に飲み込まれる。

 手に持っていたマッチに火をつけると飛び上り、その球体を飲み込んだ場所へ火を投げる。


 「浅はか……その程度だと思った」


 「っ!?」

 火は点火することなく──マッチ棒が火ごと腐敗する。


 黒い粘液の塊がナギサの身体に襲い掛かる。


 「やばっ」

 爆破させ、粘液が一時的にでも飛び散りその隙にアゲハを蹴り飛ばそうというナギサの狙い通りにはならず、逆に飛び上った身体はその粘液の動きを回避することができない。


 「!?」

 ナギサの前で黒い粘液は見えない壁にぶつかる様にゆかり零れ落ちていく。


 「ナイスッ」

 同時にナギサはその透明な壁を蹴り飛ばし後ろに後退する。


 意識を保っているのがやっとという表情で──トウカが離れた場所からこちらに手を伸ばしている。


 「トウカ、後で左胸くらいなら揉ませてあげる」

 「でも、右胸と同時はもう少し好感度あげたらね──」

 ナギサは床に着地しながら言う。


 「どちらにしても、水無瀬──お前もそろそろ限界だろ?」


 「げほっげほっ」

 現に苦しそうにナギサが首の下あたりをおさえ咳をする。


 アルコールを手に取り、床に投げつける。


 「水無瀬ぇーー、芸がなさすぎーー、そう何度もその陰キャ男に助けてもらうの?」


 「あんたがトウカをディするな、ディスっていいのは私だけ──かっここれ大事」

 「私、薬品とかあんま詳しくないんだが──これでいいの?」


 「なにを?」


 液体で作り上げたナイフがナギサの後ろの棚に飛ぶと棚のガラスを割る。

 いくつかのビンに入っていた液体が割れ、空中に飛び散る。


 塩酸とスイサンカナトリウム水溶液──もちろんそれを組み合わせた所で、純粋な水などできはしない。

 ──が、彼女の能力──それらに含まれている余計なモノを排除して必要なモノだけを融合する。


 「これで、ちょっとはマシになったかな──」

 再び自分の周囲の毒を水で薄め軽減する。


 「ふざけるな──普通じゃないだろ、普通、もっと恐怖するだろ、そんな体内が毒に犯されてまともでなど居られないだろっ」

 誰かと重ねるように──アゲハが叫ぶ。




─────



 「おい、毒島ーー、一人できちんと掃除やってけよ」

 5年前──週に一度の回ってくる5人で班を作ってやらされるトイレ掃除。


 私はそのグループの女子が私にバケツの水を……トイレを掃除するための汚いモップ身体に押し付けられ──何が楽しいのか、ゲラゲラと笑っている。

 そして、いいだけ、私の身体で遊び、トイレを逆に散らかし水浸しにしたあと──私にその役目を押し付けて立ち去っていく。


 フザケルナ──フザケルナ──


 それでも、私は──押し付けられた仕事をこなし、カバンなどを取りに教室へと戻る。

 一人、放課後、誰も居ない教室で漫画の本を読んでいる──正直、彼女の声を思い出すことも難しいくらいに、彼女が言葉を発しているのを聞いたことが無い。

 まるで、存在しないみたいに──見た目は普通に整っているのに、ファッションになど気を使わないように、ダサい丸眼鏡をかけている。


 「ねぇ──その漫画おもしろい?」

 興味本位だった──なぜ、私がこんな目にあって──彼女みたいな女が平然として生活を送れているのか。

 それでも、最初は悪意があった訳じゃない。


 「読む?」

 彼女はただ不愛想に手にしていた漫画を私に押し付ける。


 正直、たいして面白くなかった。

 私とは趣味が合わなかった。

 それでも──私にはそこくらいしか居場所が無いと思った。

 だから、趣味が合うふりをして仲良くした。


 ──コワレテイク──ワタシガコワレテイク。


 だけど──ある日……転機は訪れた。


 いつものように私に嫌がらせをし、喜ぶクラスメイト。


 「いや──返してっ」


 「なにこれ、だっさ──毒島、おまえ、オタ女子だったの」

 取り上げたカバンの中を漁られ、

 彼女と話しをあわせるために買った雑誌を見られ馬鹿にされる。


 本当は好きでもないのに……なんで──なんで──


 そう思った次の瞬間──


 ドンッ!!


 黒い丸メガネのクラスメイトが高く飛び上り、私をからかっていた女子生徒に蹴りを入れる。


 「それ──返せっ」

 彼女はただその言葉だけを送り、それを私に手渡した。


 もちろん、一度蹴り飛ばされたくらいで、今どきの悪は簡単に滅びなどしない。

 ただ──訪れた転機──


 ナンデ──ワタシガ──

 コンナメニ──

 コンナオンナニ──


 翌日──黒縁の丸眼鏡のクラスメイトはトイレに呼びつけられ、昨日までの私のようにバケツの水をかけられ、ゲラゲラと笑い声を浴びている。


 黒縁眼鏡のクラスメイトは、昨日のような暴力を振るおうとはせず──ただ、いつものように気にすることはなく──逆らう事をしない。



 「おい──毒島ぁ、おまえもやれよっ」

 昨日まで私に嫌がらせをしていたリーダーかくの女子が私に言う。


 コワレテイク──

 ダカラ──オマエモコワレロ──


 「ギャハハハッ」

 目の前には全く知らない女が居る。


 黒かった髪を似合わない金髪に染め──

 黒縁眼鏡のクラスメイトにバケツの水をぶっかける。


 何が楽しいのかわからない。

 タダ──コワレロ──

 ココマデサレテ──ナンデコワレナイノ?

 フザケルナ──ワタシダケ──ワタシダケ──



────


 「ふざけるな──ふざけるなよっ──怒れよっ、壊れろよっ」


 「なにそれ?──やめてよ、私はあんたのことなんてなんとも思ってない、言ったじゃん、価値がない、無意味だって」

 ナギサはアゲハ同様にその過去を思い返しながら──


 「あんたが私という生贄の元に──今のあなたが実現できた──感謝されても恨まれる筋合いはないはずだけど」

 「で、欲しかったものは手に入った?私はあんたみたいな地位を手に入れても人生謳歌できないからさ、私は独りで好きな趣味モノに触れて居られたら満足なの」


 「ふざけるなっ──ふざけるなよ、もっとコワレロッ!」


 「それが、あんたの免罪符?私もあなたと同じ──だから自分が壊れる前に私を生贄にした──はいはい、かわいそーーーーっ」

 「どう?満足した?」


 「ふざけるなっ、どこまで、どこまで──私を馬鹿にする──どうして壊れないッ!」


 「あんたさ──昔の自分が今のあんたを見たら、よかったーーーって笑ってる?私は、今のあんたを見てもあんたになりたいなんて思わない──」


 「ふざけるなーーーっ!!」

 アゲハの黒い粘液が自分の知らない能力を覚醒させるように──

 部屋に充満する瘴気が一層強まり──


 「はぁはぁ──」

 それは、アゲハ自身まで蝕む毒に変わる。


 「別にどうでもいい因縁なんだけど──いいよ、決着つけようか──」

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