【500円の価値】
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自分は色盲じゃないかと──小さいころに思った事がある。
もちろん、そういった検査に引っかかった事はない。
もちろん、そういった状況にであった訳ではない。
色の話ではなく──周りの見る景色が余りにもぼくの見ている色と違う気がした。
だから──母がそれを青と言えばぼくはそれを青と言った。
だから──ぼくが赤だと思っても誰かがそれを緑と言えばそれを緑だと思った。
きっと、そらがぼくが世界を正しく見るためのたったひとつの方法だと思った。
だから自己主張は苦手だ。
自分が何色かしらないから──何色言えばいいかわからなかった。
だからぼくはいつまでも──その色に依存する──
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煩理家──庭園の奥にある牢獄のような部屋。
その部屋に展開するノウムの能力空間。
「適当に周りに合わせて──色を塗れば、言われた通りに色を塗れば──それは周りのように景色と同じ色に慣れると思っていた──それがぼくが恥ずことなく、社会に溶け込むことだと思い込んでいたんだけどね」
「──ノウムさん」
「気が付いた時には──自分すら吐き気がするほど気持ちの悪い色になっていたよ──」
「そんなことない──私たちの色が──そのおっちゃんの言う普通かは知らないけど──私にはおっちゃんの色が変だと思わないし、なんなら──おちつく色だ」
「俺も、ナギサと同意見です──ちょっと悪い言い方かもしれませんが、少し自意識過剰になっているだけだと思います」
「優しいね、ナギサちゃん、トウカくんは──でもね、世界は違うのさ──そう、関わらなければぼくの自意識過剰──世界はぼくのような汚い色を嫌う、そう拒絶するくせに──世界に貢献しないことだけは許さない」
「子供のくせに──って思うかもしれないけどさ、わかるよ──雨の日が嫌いでさ、そんな日は妙に親父の頭が気になるし──普段気にならない悪口が妙に頭にくる」
「価値があることを強要しないくせに、無価値が居ることを許さない──」
「リヴィアみたいなこと言うけどよ──気合とか努力とかそういうので何とかしねーのか?」
「胸糞悪い事を言うけどね──興味が沸かないんだ、」
俺もシュウもそんな疲れた男の目を見る。
「──無価値なぼくに居場所がない、でもぼくはこんな世界が好きになれなくてね、そのための価値を持つための気合も努力も──そこ先に得られるものがあまりにもぼくには無価値なんだ──」
「それじゃ──なんで、ノウムさん、あなたは俺たちを止めようとしてくれてるんです?それは無価値ではないんですか?」
「もちろん──ぼくにはトウカくん、君たち侵入者を食い止めるように言われている──でも、それは無価値だ、でもぼくはそれでも君たちをこの先に行って欲しくはない──あれ、なんでだっけね?」
疲れたように小さく笑い、自分で首を傾げる。
「母さんを──守るなんて言葉はおこがましいかもしれないけど──それでも俺はそれを無価値とは思ってません」
「最初にも言ったが──君たちが思っている以上にこの先は危険だ──人を殺すのに抵抗の無い能力者も居る」
「だったら、なおさら──」
「まだ子供だよ、君たちは──能力を手に入れたと言ってもね、まさか少年誌の主人公にでもなれたつもりかい?」
「勝たなくてもいい──でも負けちゃダメなんだ、俺の母さんの教え、俺の価値なんです」
「仲良く平和に──引き分けにでもしようってことかい?ぼくには理解のできない言葉だよ」
「世界なんて勝ちか負けしか見ない──そして、勝負に勝ってこそ勝者こそ正義──例え、それがどんなにぼくにとって無価値だとしてもね」
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それは、ぼくが10歳頃──
学校の終了のベルが鳴り、全校生徒が下校を始める。
ぼくは黒いランドセルに教科書を詰め込み、それを背中に背負う。
「なぁ──俺、仲間モンスター40体集めたぜ、ラスボス直前──」
「えー、すげぇ、魔界のモンスター何匹?」
『あ、ぼく──全部、もうクリアもしたし、なんなら隠しダンジョンも含めて全モンスターコンプしたよ』
そう──心の中でそんなクラスメイトに話しかける。
ぼくはそんな彼らの仲に入りたいと思いながらも──
そこにある色は世界と違うと──そう思い込んでいる。
「おいっ──オタクどもがまたきしょい話してるぜ」
そんな──クラスメイトが陽キャ連中の餌食になる。
ぼくはそんな彼らを横目に──図工の授業で作った工作を背に隠す様に下校する。
「お、ノウム──おかえり」
「じいちゃん──」
ぼろぼろの作業着──ただ一人、同じ工場で働く仲間たちと逸れるように……
小さな工場──そこを数人で運営していたじいちゃん。
でも──時代の流れについていけず、大きな会社に吸収される形になった。
席は残っている者の、そんなじいちゃんの色はそこで浮いていて──
自分の好きを形にするじいちゃんのやり方は──受け入れられなかった。
「ん──ノウム、それおまえさんが作ったのか?」
「いや──これは、こんなものは“無価値”だよ」
「なんじゃ──見せて見ろ」
「おぉーーー、これは“素晴らしい”──どうじゃ、ノウム──これ、じいちゃんに“500円”で譲ってくれないか?」
そう、じいちゃんは何かにつけてはぼくの無価値なものを“500円”で買い取ってくれた。
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「“500円”──それがぼくがこの無価値な領域で君たちの価値を買い取れる金額の上限だよ」
手にした──モデルガンの拳銃をこめかみへとあてる──
「さぁ──ぼくにそれ以上の価値をあたえることができるかい?」
その疲れた表情でノウムが冷たく笑う。




