【恐怖という選択】
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夜の学園──
「くそ──探偵ごときが──」
「どうした先生、あの“センスの悪いゴーグル”とフードをかぶってなければ、調子がでねぇんじゃねーのか?」
「──やっぱり、あの時──お前だけは壊しておくべきだったな」
「キズナはどこだ──」
「──ふふ、あははは、あれは壊れた」
「──そんなに人が壊れるところがみてーなら、俺がてめぇを壊してやる」
「俺が壊したんじゃない──壊したのはお前だ、探偵──」
「………」
「お前が、あの時──お前を救った罪を奪った──わかるか、探偵──感情を一定に保つためには、例えそれが不当なものでも人はそれで正当化する」
「何を言っている──」
「お前のために“人を殺めた”」
「違う──あれは俺の罪だ」
「そう──お前はその罪を奪い、彼女のあるべき感情を乱した──実に俺の能力で御しやすく、壊しやすかったな」
「クソ野郎が──もう一発、ぶち込んでやろうか」
銃口を催稀へと向ける。
「悲しそうだったぞ──お前のために殺ったことなのに、お前が背負い、お前の負担となった──まぁ、お前のせいじゃない、壊れたのは当人の弱さだ」
「黙れと言っているんだクソ野郎──さっさと俺の助手を返せッ」
「くっ──あと、あともう少し──あの“器”、黒竜を壊せば──その力があれば──この世界をこの俺がぶっ壊す」
「何言ってるんだ──てめぇ」
「苦労したんだ──“結代”──あいつから“器”を奪うのにな」
「結代……?」
トウカのことを言っているのか?
「もっと──もっと──負の感情でその器を満たし、溢れかえれば──」
「その前に俺がてめぇを正す、正しくぶっ壊してやるよ──」
銃口を催稀に向けている。
じりじりとゆっくりと催稀が横に移動する──が、
その動きにあわせて右腕、銃口の位置を移動させる。
「悪いが──壊れるのはお前だ、探偵──」
ダンッ──拳銃の引き金を引く──
「──“壊れろ”」
催稀は俺にではなく、自分に迫ってくる銃弾に──
「──銃弾、物質にまとってある魔力にまで干渉するというのか」
その銃弾は催稀に届く前に、消滅する。
「壊れろ──」
さらにゆっくりと移動した先にあったコピー機に手を置きながらそう言葉を放つ。
ピー、ガガガガ──
一度にすべての機能をフル活動させるようにコピー機が忙しそうに光を放ちながら何かを読み取り──用紙を勢いよく吐き出し、その大量の紙が催稀の姿を隠す。
「そんなもので──」
ガラガラッ
「何だ、何事だ──」
警備員らしき男が職員室に入ってくる。
宿直──というのも嘘という訳か──
「ちっ──“あの男は強盗だ”、“かまわない殺せ”」
催稀はその警備員の肩を押すように、俺のほうへと突き飛ばすと代わりに職員室から外へと出る。
「逃がすか──」
「壊す──必ず、真解ユズル、お前を──」
学園の外を目指しながら、催稀が言う。
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「うらぁーーーーーーッ」
夜道──煩理家前。
リヴィアの一撃をプロの格闘家のように両脇をしめ顔の前に構えた両腕でそれを防ぐエルジナ。
「いい、パンチだ──リヴィアと言ったっけ、なんであんたは女を捨て強くなろうと思った?」
「馬鹿者──無論、根性、気合、努力だ──」
「意気込みを聞いてるんじゃねーよ」
「だったら、なぜ貴様は女を捨て強くなろうと思ったエルジナ」
「──ちゃんと覚えてるんじゃないか、人生ってのは選択だ──俺の知る、“英雄”なんてものは人殺しの中で得た“名声”だ──その命の選択には戦友も友人も──家族すらも犠牲の上で成り立つ」
「馬鹿者──そんなものは本末転倒だっ──お前には気合が足りんっ」
ブンッとリヴィアの放った拳を──軽快な動きで回避する。
「ぐっ──あぁっ」
再び右腕にエルジナの持つ、戦場、狩り用のナイフの刃が突き刺さる。
「リヴィア──お前には“命への危機”が足りていないのさ──」
「………」
「女を捨て戦場に立つとはそういうことさ──目的のために何かを切り離さないとならない時はすぐにそれを切り捨てろ、それが戦友でも家族でもあってもな──冷酷なものだけが英雄になる──」
「馬鹿者がーーーっ、それは本末転倒──貴様はなんのために戦う、なんのために女を捨て強くなった──“それ”を切り捨てて、何が“英雄”なものかっ!!」
「世界など綺麗ごとじゃない──戦場とは命のやり取り──どんなものでも作戦の足枷となるなら切り離さなければ──生き残れない──その犠牲と対価の末に名声を得られるのだ」
ブシャーとリヴィアの右腕から魔力が噴き出す。
さすがに苦痛の顔をリヴィアはするが──
リヴィアの髪と瞳が真っ赤に染まる。
「狂人化──」
その刃を右腕に突き刺されながら、リヴィアの右腕がエルジナの額を掴む。
そのまま豪邸、煩理家の頑丈な塀にエルジナの体を叩きつける。
「戦友のため──家族のため──女を捨てた、その軍に身を置き──それが矛盾していたとしても──そのためには、戦友を裏切り、家族をも見捨てる──」
「それで──何を成したと誇るのだ、エルジナよ」
「──リヴィア、お前には足りないのさ、絶対的に“命の危機”がね──だから本当の選択の意義が見いだせていない、あんた──この俺を前にして、まさか“殺すまではしないだろう”なんて思っていないか?」
「知らんな──難しいことをあたしに考えさせるな──気合、根性、努力──あたしはそれで貴様をねじ伏せるッ」
「恐怖だ──お前にそれを植え付ける──戦場に身を置くということ──それがどんなに誰かのためであっても──リヴィア、あんたが仲間のために俺の前に身を置いた、その犠牲を後悔させてあげるよ」
「ぐたぐたと──エルジナ、あんたの後悔をあたしに押し付けるな──あたしには“力”しか無かった──女でありたかった、可愛くありたかった──でもそれしかなかった──でも、トウカは狂暴があたしの魅力だと言ってくれた──」
「何を言っている──」
「馬鹿者──“女”なら──異性にそう言われたら喜ぶものなのだっ」
「ぐぅっ──てめぇ、“女は”捨てたんじゃねーのかよ」
エルジナはリヴィアの拳を防ぎながら言葉にする。




