【女を捨てた者たち】
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「余り知ろうとしない方がいい──」
「どういう意味だ──」
「ごめん、酷いことを言うつもりじゃなかったんだ──ただ、カイナを危険な目に合わせたくない」
「──いまさらだ──」
「言ったでしょ──世界が正と負の感情、そこから産まれる魔力を均衡にさせて形創っているんだ──その擬人化の実験、前に君も懸念していたように負の感情、その魔力は危険なんだよ」
「あなたは神にでもなるつもり──」
「僕はそのシステムを組み立てているだけさ──その役目さえ終われば──僕は──」
「──僕は?」
「──用済みだ──ただの人間になれるのかな」
「お前の罪というのはそれで償われるのか?」
「どうだろうね──僕はただ──これで世界を守れるのだと思っていたのに──」
「負けないんじゃなかったのか──」
「そう──だね、僕は負けないよ──カイナ」
「ごめんね──僕はここに居るべきじゃなかったんだ──」
「どういう意味だ?」
「僕は君のやさしさに触れてはいけなかった──」
「君にやさしくされてはいけない存在なんだ──」
「だったら──笑っていろ──」
「──えっ?」
「私ではあんたを守れないか──」
「カイナ?」
「私では──あんたの支えにはなれないのか?」
「カイナってば?」
私はその男を──後ろのベッドの上に押し倒す。
「僕は──もう普通の人間の暮らしには──それを望むことは──」
「私のことが──嫌いか?」
「──嫌いだ──」
「だったら──そんな寂しそうな顔をするな──私に付きいらせるな──」
「待ってよ──カイナ、僕、女性とその──」
「安心しろ──私もだ」
─────
「やれやれ──警戒をしていたつもりだが、思った以上に厄介な奴だな」
夜の学園──
銃を突き付けられ──少し焦った様子で受け答えをしていた催稀だったが、
冷たい表情でこちらを睨む。
ダンッ──銃弾が催稀を狙う。
「容赦はしねーぞ」
「なるほど──な」
銃弾が──催稀をあっけなく貫通する。
「言っただろ──俺には魔力を緩和できる」
「相手の魔力へ干渉できる──」
「それが──これまでの事件にどう関係している」
「逆に俺自身の魔力を相手に送り込む──そして相手の魔力へ干渉させる──」
「だから──それが──」
「おいおい、探偵──それを探るのがお前の本職じゃねーのか、まぁいい──ここまでたどり着いたてめぇへの一つのご褒美だ──」
「………」
「この魔力ってのはどこから発生しているかってのは、知っているな──そう感情からだ、それに俺に干渉されるってことがどういうことか探偵、お前に理解ができるか──」
「──お前が多くの人間の記憶を操ったり、感情を操って神代トウカを襲わせていたというのか」
「理解ができないか──いいだろう、ご褒美はここまでだ、認めよう──真解ユズル、おまえは少々厄介だ──悪いがこのあたりで退場してもらおう」
「やれるもんなら、やってみろ──俺が先にてめぇを正す」
「先ほどの銃撃はうかつだったな──探偵」
「──っ!?」
「そうだ──お前の銃弾がまだ俺の中に残っている──」
「──その“真実”を得て──満足していろ」
「───くっ」
何を企んでいる──
「真解ユズル──“自害”しろ」
俺の右手が勝手に動く。
銃口が俺のこめかみへとあたる。
「くそが──」
「エセ催眠術師──」
自ら引いた引き金の指の感触と共に
ダンッ──脳に強い衝撃が走る。
「ふん──もちろん、その程度で壊れないよな──」
「──たりめぇだクソ野郎」
「ほら、“言えよ”──おまえの能力」
「“正せ”──」
そう誘導されるように俺はその言葉を口にする。
勝ち誇った催稀の顔──
クソが──
「“正せ”──この銃弾を貫くのはてめぇの身体だッ」
ダンッ──再度銃弾を発射する。
「──なんだと、俺の能力でお前は自分の能力で」
「てめぇの魔力の干渉はさっき、俺自身の拳が正してんだよッ」
「──お前の能力が、この俺を上回ってるとでも──」
「るせーんだ、てめぇにはまだ吐かせたいことは沢山あるが、てめぇだけは生かしておけねぇ──その命は俺が貰う」
銃弾が催稀の胸を貫く。
「ぐっ──だが──俺をこれで倒すのは──」
「“正せ”──お前を貫いた銃弾は、お前の能力に関与しない──」
「なんだとっ──」
「ぶっぐふっ──」
催稀が大量の血を口から吐き出す。
「がぁ──ぐはぁ」
催稀は苦しそうにしながらも──
時間をおいてから再度、自分の能力でその痛みを緩和させる。
「探偵ごときが──この俺を──壊す、壊す、お前は徹底的に壊してやるぞ、真解ユズルッ」
─────
「名を聞こう──奇妙な髪形をした女よ」
煩理リエン邸の近くにあるマンホールのある路地。
狂羅リヴィアが──対峙する、
左の横髪を反り上げ、肩より少し長い髪を三つ編みにし前に流す、黄色と茶色の入り混じる髪の女性へと尋ねる。
「軍志エルジナ──覚えなくてもいいけどな」
「よし──覚えたぞ、奇妙な髪形の女」
「覚えてねーな、てめぇ」
さすがにいらつくように、エルジナと名乗った女がリヴィアを睨む。
「女だからって甘く見るなよ──俺は元軍人だ──“女”などとっくに捨てているッ」
「馬鹿者──女が女を捨てているなどと簡単に言うなッ──いいか、あたしは女なんてものはとっくに捨てているッ」
「──てめぇ、その馬鹿さは一歩周って、この俺を怒らせるための策略なのか」
「女を捨てたのなら黙ってこぶしを突き出せ──ッ」
「なめるなよ──俺はこんな国じゃなく──別の国の軍人をやっていた──命乞いをする人間を何度も手にかけてきた──人形を握りつぶすようにな」
「根性──パワー、フルパワーッ!!」
ブンッとリヴィアがその拳を体の回転を入れ振りかざす。
シャッ──と素早くその体を移動させる。
「ぐっ──根性ッ」
リヴィアの右手から魔力が血のように噴き出す。
「ナイフか──」
リヴィアがそのエルジナが持つ、分厚い刃渡りの野獣でも狩れそうなナイフを見ながら言う。
「──卑怯か?戦場でそれは命とりだぞ──リヴィア──必要なら仲間も裏切れ──そうでなければ生き残れない──」
「努力──根性──気合ッ、あたしにはその言葉で十分だッ」
「ぐっ!」
魔力でその傷は衝撃に変わっていたとはいえ──
かなりの傷を負わせた右腕をエルジナへ叩き込む。
両腕でそれを素早くガードするが──
エルジナの身体は足の裏を地面に引きずらせながら、後退させる。
「なるほど──ただの馬鹿ではなさそうだな」
リヴィアとエルジナが互いに睨みあう。




