【侵入開始】
────
「ねぇ──カイナの作ってくれるハンバーグは美味いねッ」
「まったく──口回り汚れてる、子供じゃないんだ──」
「ん──ありがとっ」
ソースで汚れた口回りを吹いてあげると嬉しそうな顔をする。
「私のような下手な料理をおいしそうに食べてくれるのは嬉しいけどね──」
「で──世界平和を管理するシステムってやつは完成しそうなの?」
「正と負の魔力を擬態化させる──」
「魔力の擬態化?」
「そう、希望と混沌──その二つをね」
「希望はともかく、混沌まで?」
「うん──前に言ったよね、世界は表裏一体──その両方を均等になるように守り続けないとならないって……」
「ん?──あぁ、聞いたっけ?」
「例えば──このハンバーグだって、僕がひとりで食べるより、カイナと食べる方が美味しいだろ、そういうことさ」
「──なにがそういうことさだ、全然わからないよ」
─────
「おいおい、物騒だな──」
夜の学園。
職員室──
職員室を調査していた真解ユズル。
そこに現れた、催稀──結代トウカの担任の教師。
いや──その真相を正すために──
拳銃を突き付けた俺を、そんな覚えはないというように軽く両手をあげ──
無抵抗を意思を俺に向けている教師は、落ち着いた口調で言う。
「──お前も“能力者”だと言っていたな」
「なんだい急に──と言っても俺の能力は君たちのような強力なものじゃないんだ──何も取らずに今すぐ出てってくれれば、他言はしないよ──だから」
「お前の能力は──」
「だから、争う気はないって──俺の能力は自分の受けた魔力に少し干渉し効果を緩めるだけさ」
「───だったら、俺がこの拳銃でてめぇを撃ちぬいても、効果をかき消せるというわけだな」
「干渉し緩和するだけだと言ってるだろ──いい加減にしてくれ」
「なんで──ここに来た、こんな時間に──」
「それはこっちのセリフだけどね、宿直だよ──俺はその当番なんだ」
たまたま──今日がとも考えにくいが──
これまで、情報を消したり書き換えるような奴だ。
俺が持っているこの“切り札”をどう使うかだ。
使いどころを間違えば一瞬で無駄になる。
「正す──俺が全てな──」
「何を言っているかわかないが──いい加減にしてくれないか」
「いいから、俺の質問に答えろ──」
「やれやれ、乱暴だな──わかったよ、それで君の気が済むのなら──」
油断するな──あいつはどこでその情報を書き換える。
ただ、こいつの能力かもわからないが──
歴史、そのものを書き換えるわけじゃない。
あくまで人の認識、記憶を書き換えるような能力。
一か月登校していなかった生徒が──その改ざんを受けていなかった理由。
「──結代トウカ──あいつの能力は知っているか?」
「あ、あぁ──それは本人から聞いている、結界──防壁などを作る能力だろ」
俺の意図に気付いているのか──催稀も言葉を選んでいるように見える。
「それじゃ、結代トウカが戦った相手の能力は?」
「“全部”は知らないさ、彼が“この学園”で戦った能力者は、俺も見ているし話もきいているが──」
「いい加減にしないか──そんなことを聞いても、あんたが何を疑っているのかしらないが──」
冷静に慎重に──間違うな。
その綻び、掴んだ糸を離すな──
「黙って答えろ──トウカが戦った──あの拒絶を扱う女、あの女は──本当の結代トウカの担任教師じゃないのか」
「何を言っている──俺がずっと一年の時からここの担任だ──あの女は“ここの教師でも”なんでもない」
「正せ──」
自分の頬を殴り飛ばす。
「何をしている──」
「──てめぇが俺の記憶を操作するなら“ここ”だと思ったからな──自分の記憶を“正した”だけだ──」
「何を言っている──記憶を操作?」
「てめぇ──“さっき”言ったよな?学園の中での能力者の話ししか聞いてないって?あの拒絶の女は“学園の外”の話だ──随分と知りすぎてるんじゃねーのか先生?」
「──やれやれ」
教師がめんどくさそうに──俺を見る。
─────
「おーーーい、こっち──」
──煩理リエンの所有する豪邸。
近くにあったマンホールの蓋をノアが開ける。
「え!?──嘘、こんな場所降りるのですか」
俺も人生に置いて、実際に訪れる日が来るとは思わなかった。
「やめとけ──やめとけ──子供はお家でねんねする時間だぜ」
一人の女性が立っている。
女性なのに左の横髪を反りを入れ、
肩より少し長めの髪を三つ編みにし肩の前に流している。
茶色と黄色の混じった髪色。
「なんか──世紀末覇者がでてくるような物語の登場人物みてーな奴いるけどなにもんだよ、ノア」
ナギサが俺が口にできなかったことを平気で口にする。
「馬鹿者──さっさと行け、トウカ──こいつはあたしが引き受ける、お前が行かねばだれがいく──お前だトウカッ」
「よくわからないが──任せて大丈夫か、リヴィ」
「馬鹿者、このあたしを誰だと思っている──リヴィアだっ」
「まぁ──そうだな」
ナギサが頷いている。
俺たちは彼女をその場に残し──
そのマンホールの下へと入っていく。
「まぁ──聞こえてはいたが、名前くらい聞いておこうか──」
「気合、根性──ド根性」
「すごい名前だな──」
ため息交じりに──リヴィアと対峙する女が言う。
「悪いが──ここを任されたが、あやつらは心配だからな、さっさと倒してトウカたちを追わせてもらうぞ」
「よい子は寝る時間だ──そう言ったはずだけどな」
煩理リエン邸前──
二人の女性が──気魄を放ち対峙する。




