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白竜に選ばれた僕は、不運少女を守るため“負けない力”を手に入れた  作者: Mです。


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【無価値の男】

 「それで──どうだろうか、ぼくは君たちと違い能力がほとんど“無価値”なんだ──話し合いとでもいかないか?」


 「話し合いもなにも──あなたたちが一方的に人の家に押しかけて来てるんですが──」


 「あぁ──本当だ」

 倒れるグラシカを眺めながら言う。


 「しかし──なおさら、彼を倒す能力者にぼくが敵うはずが──それこそ“無価値”だ」


 「だったら──それ、引きづって帰れよ──おっさん」

 ナギサがぼそりと言う。


 「──しかし、そうも行かない、一応──ぼくはぼくで目的を果たさなきゃ行けない──」


 「聞こう──目的はなんだ」

 カリンがノウムと名乗った男を見る。


 「──君たちの目的をふいにしろ──だったかな?」


 「俺たちの目的──?」


 「さて──ぼくもそこまで知らされていない──下っ端のゾンビ社員だからね──ましてや、楽できると思って、ヘッドハンティングされてみたら、地下牢に閉じ込められる始末──」

 「まぁ──それはそれで楽で良かったけど──初仕事と言われて来て見れば──この状況と言う訳だ」


 「本当に何しに来たんですか──」

 ユイが不快そうにノウムという男を見る。


 「ぼくが聞きたいよ──ぼくにとっては全てが無駄──君たちのその青春も──夢に向かう努力も──その先で得られる名声も富も権力も──全部、“無価値”だ」


 疲れた目──これまでの人生に疲れたというように──

 それでも、そのすべてに開き直ったように──不気味に微笑んでいる。



 「そうだね──こういうのはどうだろうか──」


 ノウムの周囲から真っ白い半円が広がっていくと──

 真っ白な正方形の空間に──その場の全員が取り込まれる。


 「この空間内では──すべてが無価値になる──」

 「正し──ぼくが価値があると認めればそれは意味をなす──」


 大物のように──ノウムが両手をスーツのズボンのポケットに突っ込みながら部屋の中央まで歩き立ち止まる。


 「ようするに──何かひとつでもいいよ──ぼくを論破させるだけ、そうすればぼくを君たちはボコボコにできるって訳だ」


 「それに──お前になんの利点があるんだよ──」

 シュウが──ぼろぼろの身体でノウムを見る。


 「ない──ぼくにとっては全部、無価値だからね──強いて言えるのなら、もしぼくに価値を与えてくれるのなら、ぼくにももしかしたら少しは生きる希望が残っていたというところかな?」


 「この空間の解除条件が──あなたへの説得と言うことですか?」


 「まぁ──ぼくを説得すると言う行為が無価値──無駄というものだけどね──」


 「馬鹿者──努力、気合──勇姿ッ!!それだけで十分──ッ」


 ダンッ──そのリヴィの強烈な一撃──

 それをノウムは──絶対なる強者のように──

 左手のてのひらで軽くそれを止めている。


 「無駄──30円かな──今のままではね──」


 「なんだ──」

 くしゃりと離れたリヴィの拳に──

 店の商品についている値札のようなシールで30円と貼られている。 


 「では、まず──それを否定しよう」


 「黙れ──馬鹿者がッ!!」

 再び──右足で回し蹴りがノウムを狙う。


 ノウムが指を一本立てる。

 無能を名乗るノウムはその強力なリヴィの蹴りを人差し指一本で止めている。


 「──10円、それもオマケだよ」


 「努力とは、結果を出せる者だけが語れる言葉だ──気合、それはその先に得られるものがある人間が秘める感情だ──勇姿、それは、それらの先に何かを得たモノの表現だ──そこにたどり着けないぼくには“無価値”だよ──本来なら1円も払いたくはない」

 「後は馬鹿者──これは面白いが、その言葉がぼくを否定するものだ──ぼくにとっての価値には届かない」


 「いいよ──買い取ろう──ぼくにとっての無価値な言葉」


 ノウムの手がリヴィの胸板あたりに伸びる。

 ちゃりんっと小銭の音と共に──


 ジャラリ──

 リヴィの首に右の手首に──右足首に──黒いベルトが巻かれ、鎖が繋がっていて──その鎖の先に大きな鉄球がついている。


 「くっ──」

 リヴィの怪力をもってしても──この空間では動くことすらできない。


 「どう──返してほしい?」

 口角をあげ──ノウムがリヴィの顔を覗き込む。


 「───」

 リヴィがただ、黙ってノウムを睨みつけている。


 「いいよ──“売却”するッ」

 ノウムがてのひらを伸ばし──リヴィに告げる。


 「ぐっ──あっ」

 拘束具が消えると同時に──リヴィの身体に強烈な打撃が二発入る。


 「君がぼくにくれた攻撃かち返却ばいきゃくしたんだ──」

 リヴィが地面に膝をつく。



 「何もんだよ──」

 俺はその男を睨む──


 「何者でもない──言っただろ、ぼくは価値の無い人間だと──だから、ぼくにとって、君たちの言葉も攻撃も無価値なのさ──それを君たちの価値に戻して売却しただけだよ」

 


 「大丈夫──ただの飾りさ──少なくとも今ここでは──ね。」


 手にした拳銃を指先でくるくるとまわして遊ぶ。


 「ただ──君たちがぼくにこの拳銃おもちゃの価値をわからせれば話は別だ」


 その拳銃を自分のこめかみへと当てる。


 「どうした?ぼくは本気で引き金を引くよ?説得をしてみなよ──ここでぼくを倒すチャンスかもしれないだろ?」


 「やっば──本気でどうかしてるよ、トウカ──このおっさん」


 「ほら──どうした──拳銃おもちゃに対しての価値じゃなくてもいいんだ──ぼくの自滅こういに価値をぼくに認めさせればいいんだ──」


 「あーー、うん──痛いよーーそれ」

 ナギサが少しだけ考えて口にする。


 「ぼくはマゾじゃないからね──痛いという痛覚に価値はない──」


 「それでも──恐怖くらいはあるんじゃないですか」

 ユイがノウムを見る。


 こういった──討論戦では、俺やナギサよりも──

 ユイやカリンの方が向いているような気がする。


 「──だが、恐怖というものも無価値だ」


 「──さて、恐怖という感情は“無価値”でしょうか?」

 ユイがきっぱりと言い返す。


 「聞いてみようか?」

 このトリガーを引く前に──そうノウムがユイを見る。

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