【仲間たちの選択】
────休日
「邪魔するぜ──」
「お邪魔しまーす」
「失礼します」
「邪魔をする──」
「頼もう──」
俺の家に、再び招くことになったクラスメイト。
シュウ、ナギサ、ユイ、カリン、リヴィの5名。
「いやいや、待っていたよ──まぁ、狭いトウカの部屋でよければ、遠慮なくお邪魔してくれたまえ──」
ミリスが胸を張り、前ならえの先頭者のようなポーズを取りながら偉そうに言う。
「おい、リヴィ──俺の部屋、引きドアだからな──ドア押して開かないからと殴って破壊するなよ──」
「馬鹿者──知っている」
今まさに、拳を振り上げたリヴィは不名誉そうに不快な顔で返事をする。
「で──改めて、今回は何の話なの──ミリスちゃん」
ナギサが俺の机の椅子を占拠し、丸い眼鏡越しにミリスを見る。
「そうだね──単刀直入に──君たちにはトウカを筆頭にチームを結成してもらいたいのさ」
「なるほど──このあたしに、こいつらに根性を叩きこんでほしい──そういうことだな」
「たぶん──違いますね」
「質問は受け付けない──長ったらしい説明も得意じゃない──君たちを今日まで巻き込んでしまった、事件と能力について簡単に説明と謝罪をしよう──」
全く──言葉とは真逆の態度で──ミリスが続ける。
「この世界という場所は、一つの物語のようなものなのさ、人の希望と欲望──幸福と絶望──正と負の感情──僕たちはそれらの想いを魔力として返還していた──」
「感情──想いを魔力?」
「トウカ、質問は受け付けないよ──世界の平等を保つなら、もちろんこれらの──均衡を保つ必要があるんだ──」
「それらはもちろん均衡ではない──それでも“僕たち”はこれまでは上手く処理してきたんだ──だけど、人は常に負の感情が勝る──だから、そのオーバーフローする負の感情を受ける皿を必要とした──」
「それで──どうして、私たちは能力を──手に入れたのですか?」
「──そんな生贄の器も処理、仕切れなくなったのさ──負の感情が能力となる──今の世界の仕組みだよ、委員長ちゃん」
「それで、俺たちに──何をしろと」
「僕の喧嘩、仲間を救ってもらいたい──そして、そんな僕の仲間を利用し、世界をどうにかしようとしている奴を止めて欲しいのさ」
「なんか──思った以上にスケールのでかい話だな」
さすがに──ちょっと戸惑うシュウ。
「しかし──どちらにしても私たちはその男に狙われているのだろう」
カリンがミリスを見る。
「そうだね──黙っていても敵は何らかの能力を利用し、こちらに能力者を差し向けてきている──」
「──不運だ──まぁ、ここまで巻き込まれて今更だけどね──だけど、それを即決しろと言われてもね」
「無論、強制はしないさ──」
「でも──私たちも協力しあった方が──安全という意味ですよね」
「そうだね──それに僕たちと一緒に居れば、トウカが君たちを“守ってくれる”さ」
「──簡単に言うな」
「──トウカ、トイレを借りるぞ」
リヴィが立ち上がり、部屋の外へと向かう。
「ぐ──引いても開かないではないかっ!!」
出るときは押し扉になるドアを懸命に引っ張りながら──拳を振り上げるリヴィ。
「待て、押せ──出るときは押すんだよッ!!」
俺は慌てて──ドアを代わりに開ける。
────
──前日。
小さな街にある豪邸。
リエン邸。
「シスター ルミネ──無事戻ったか、よかった」
法眼ルミネ──結代トウカにその拳を貰い敗北を認めたが、彼女はその意思でトウカと敵対した。
「──申し訳ありません、リエン様──」
「なんだ──あんたも負けたのかシスター」
「口を慎め──言ったはずだ──」
フードを深くかぶり黒いゴーグルをした男に、ここの主であるリエンが言う。
「ふん──リエン様、俺はあんたに期待しているんだけどな──あの大罪人、あの息子を止められるのはあんただけだと──」
「本当に──その結代トウカという男が──あの“大罪人”の息子だと言うのだな──」
「あぁ──それは間違いない──」
目元の確認できない男は口角をあげ、軽く微笑みながら言う。
「リエン様──地下牢に入れていた二人の行方が──」
メイドの恰好をした女性が──部屋に入ってくるとリエンへと告げる。
「どういう──ことだ、自力でなど──」
「躊躇な事してる暇、ないだろ──利用できるものは利用しろよ──」
「貴様の仕業かッ──あれは少し感情が危険だ──故に地下で保護させていた」
「──所詮は大罪人──そのガキだ──遠慮することはない──そうだろ、あんたはそれに担う、不利益を被った──違うか?」
ゴーグルの男は口角をあげたまま、言葉を続ける。
────
「しかし──なんで、また急に──こんなこと?」
ミリスのチームを結成するという提案に──
「昨日の──シスター……トウカ、君の事を──この家の場所を知っていた──」
ミリスがそれはどいうことか──無言で問いかける。
ドカーーンッ──ドアを破壊するような音。
「リヴィアかッ!!」
シュウが──部屋のドアの方を眺める。
いやな予感──
「トウカ──こいつらはお前の家族か?」
廊下に出るとトイレのある一階へと降りる。
破壊されていたのは──家のドア。
破壊されたドアの前には──
レスラー並みの体格の良い大男一人と──
無精ひげの生えた──やせ細って疲れ果てた顔の青いスーツを着たサラリーマンのような男が一人。
「馬鹿者が──そのドアは押しドアだッ!!」
「リヴィ──無礼者を叱ってくれるのはありがたいが──引きドア──だった」
壊れたドアを眺める。
その目を2人の大人の男性へと向ける。
「何者だよ──あんたたち」
「やれやれ──子供が相手とはね──悪く思わないでくれよ」
くまのある疲れた目でサラリーマンのような男は俺を見る。




