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白竜に選ばれた僕は、不運少女を守るため“負けない力”を手に入れた  作者: Mです。


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【独り占めするな】

────


 ただ──羨ましかった。

 ただ──あいつが話す不運が羨ましかった。


 あいつと同じ不運を降りかからない──



 たぶん──本当は逃げる場所を探していた。


 だから、あいつの家に遊びに行っていたんだ。


 最初は本当に嬉しかった。


 あいつの家族に優しくしてもらったこと。


 「えーーー、いいなぁーーー、羨ましいなぁーーー」


 本当に羨ましかったんだ。

 その温かい食事が──

 暖かい寝場所が──

 暖かい言葉が──ただ──


 だけど──私が外でそんな誰かの幸福をあやかろうとすると──

 いつも、きついお仕置が待っていた。


 暴力を振るわれた──トイレも行かせてもらえないまま──使われていない外にある腐りかけた倉庫に長時間閉じ込められたこともある。


 だから──それは錯覚なんだと思った。

 だから──私はあいつ──の不運に依存した。


 私はそこを私の居場所にしたかった。


 あいつが不幸と言い続けた場所にただ──


 だから──現実は私の錯覚だ。

 そこでどんなにひどい目にあったとしても。


 そのあいつの不運の世界で私はその現実を持ち込まない。


 私があいつの不運の世界で得られる──温もりを不運にしてはならない。

 そのせいで、現実で私が暴力、虐待を受けてると知れば──


 その温もりは──あいつの母は、自分たちのせいで私が不幸になっていると思ってしまうかもしれない。


 だから──私は現実を錯覚だと思い込み──錯覚した世界に依存する。


 だから──わたしはあいつだと──錯覚したかったのかもしれない。




─────



 「ナギサ──私はあんたがずっと、ずっと──大っ嫌いだったよっ」


 「知ってるよ──逆に私のこと本当に大好きな奴が居るのかしりたいくらいだっ」


 「だからさーーー、それを私の前で言う?」


 「だからさ──私に言うなよ、そりゃ──ガチャで最高レア引けずに200連行った時は、それより不運な奴の書き込みを一生懸命探したことは認めるけどさ──だからといってそれを見つけた所で、自分の不運は何も変わらないじゃん?」


 「何が言いたいの──ナギサぁ?」


 「私は不運──私がそう言ってるんだ──」


 「だから、何が言いたいのかなーー」


 「私はずっと友達らしい友達も居なくて──心のよりどころで遊んでいたゲームも上手くいかなくて──剥げてきた親父も全部、不運──そう言い聞かせて、警報を鳴らし続けて、自分という存在を維持してるんだ──」


 冷たく──ただ冷たく──ナギサがノアを見る。


 「別にあんたが私より不幸だって言いたいならそれでもいいよ──私は興味無いしね──でも、あんたに私が“不運”を名乗るなって言われる筋合いはないって──私の今はそれで成り立ってるんだ──お前に私のアイデンティティを否定される筋合いは無いって言ってんのッ」


 「そうだねーー、ナギサーー、あんたの言ってることは正しいと思うよーーー、それが理解できるくらいには大人になりたかったけどねーーー」


 ノアが何かを地面から拾う。

 なんだ──?


 たぶん、ナギサもそれを理解できていない。


 「錯覚しろ──切り裂くナイフッ」


 「形どれ──貫くナイフッ」


 吹っ飛ばされた時にその中身がほとんど零れてしまったが──

 ナギサは手に持っていた水でナイフを空中に作りだすとそれを手に取り、

 ノアのナイフを受け止める。


 「形どれ──水蛇」

 残りの水で水蛇を作ると──上空の木の枝にその水蛇の身体を巻きつけ、ワイヤーのように身体を持ち上げる。


 「錯覚しろ──黒蛇ッ」


 同様に、ノアが再び拾い上げた黒いロープの切れ端でナギサを追うように枝に巻き付けた黒蛇を利用し、空中でワイヤーアクションを繰り広げる。


 「相変わらず──ハイレベルなことするよな」


 「おい、こら──トウカ、何見てるッ」

 何故かナギサがお俺にキレている。


 「私も今、スパッツ脱ぐから私のだけ見ろッ!!」


 「安心しなよ──私もちゃんとスパッツ履いてるよーー、ナギサ」


 「そ、そっか──」

 危うく本当に脱ぎそうになっていたスパッツを履き直す。



 「あーーー、ごめんねぇ、トウカ、私、空気読んでなかったぁ」

 「見たかったよねぇ、トウカ、ナギサのぱんつ」


 「ふざけんな、トウカは私のパンツ見るのはまだ、愛情値上げたりねーのっ」


 「ふざけんな──俺が見たい前提に話を進めるなッ」


 「まぁ──いいや、トウカのことも私が貰ってあげるから──」


 「まぁ、よくねーよっ──」


 「へぇ──現実の異性に興味ないみたいなこと言っておいたナギサがね──」


 「うるせーっての、私ごときが落とせる男が、アレくらいしかいねーってだけだよっ」


 「人の頭の上で自分を卑下しながら、それ以上に俺を批判しないでくれっ」


 そんな──茶番のような会話をしながらも──

 互いの水色と黒の蛇を別の枝に絡め直し、木の枝で場所を移動しながら手にした刃をぶつけ合っている。


 「ふざけんなよ──私以外にももっと嫉妬する対象くらいいっぱいいただろうがよっ」


 ギンッギンッと互いに作りあげたナイフを──木の枝の移動を繰り返しながらぶつけ合っている。


 「ねぇ──ナギサぁ、あの枝──“腐りかけてない?”」


 ナギサが次の移動場所にと水蛇を伸ばした枝。


 「それと、ナギサ──最近少し“太った?”」


 「ふざけんな──太ってなんかっ──」


 ベキッ──


 否定したが──“その枝が折れる”と錯覚してしまったのか──


 ナギサの身体が地面に落下する。


 そんな落下するナギサの身体を目掛け、

 黒蛇でノアは捕まっていた枝を一周するようにぐるんと一度回転すると、その遠心力を生かしたまま──ナイフを構えナギサの元へと落下する。


 「ぐっ──いったぁーーっ」

 落下するナギサに遠心力をつけたノアは落下中の空中で追いつき──ナイフを左肩あたりに突き刺している。


 そのまま、ナギサにナイフを突きつけ、ナギサに体重を預けるように地面に落下する。


 「ん──ぎぃーーーっ」


 歯を食いしばるように痛みに耐えるナギサ。

 魔力でその斬り傷は──衝撃的な痛みに変換されている。


 それでも相当な痛みだっただろう。


 「くっそ──離れろッ」


 覆いかぶさってるノアのお腹に足裏をあて、後ろへと蹴っ飛ばす。


 ノアは空中で器用にバランスを取り、地面に着地する。



 「あーーー、いてぇ、まぢ死んじゃうかと思った」


 ナギサが余裕そうに大袈裟に痛がる。



 「あーーー、不幸だ──なんで私がこんな目に──」


 「ナギサ、私、言ったよねーーーー」


 「え?──なんだっけ?」


 挑発するようにそして興味無さそうな瞳をノアに向ける。


 「独り占めするなって──私、何度も言ったよーーー」


 そんな挑発も挑発と取らず──ノアは返す。

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