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白竜に選ばれた僕は、不運少女を守るため“負けない力”を手に入れた  作者: Mです。


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【引導の銃弾】

─── 一か月前。


───


 初めて──お姉ちゃんに、先輩を紹介された時は本当に酷い人間だと思った。


 兎に角、口が悪くて口を開けば、いつだって誹謗中傷ばかり。

 お姉ちゃんは、自分の仕事に出しゃばって首を突っ込んでくるその探偵をいつもどこか気にかけていて──クソガキだけど自分に張り合ってくるその男が可愛いんだって──


 もともと、学生時代は一つ年上の先輩だった。

 口は悪い癖に──ただ悪を許さないその正しさだけは何処か一貫していて──


 そんな先輩は──いつもお姉ちゃんを見ていた。

 それは、恋愛ではなく──敬意、憧れのようなものなのかもしれない。


 ただ──少しでもいい。

 私にそれを向けて欲しかった。


 一緒に仕事をするようになり──

 その言葉にその正しさに──

 あぁ──この人は不器用なんだ──


 本当はただ──真直ぐで優しい人。

 だから──それを私がわかってあげるの──


 だから──貴方を正しさを“引導したい”。

 だから──貴方の苦しさを“承引したい”。

 だから──貴方の優しさを“牽引したい”。



───


 「先輩っ先輩から離れろーーーッ」

 拳銃を向ける。


 キズナは倒れ込んだ姿勢のまま──

 ダンッ──再び拳銃の引き金を引く。

 

 「コワス──」


 銃弾はその腕の爪に弾かれるように──



 「逃げて──先輩ッ」

 倒れているキズナ──その行為は間に合わない。


 ダンッダンッと二発の弾丸を殺人鬼へと放つ。


 「──ムダ──能力チカラをテニイタ──ソンナノキカナイ」


 言葉通りその銃弾は弾かれ殺人鬼の左右に散らばって宙を舞う。


 「引責しろ──その銃弾はあなたを引導するッ」


 「なんだ──」

 俺は宙を舞った銃弾を見る。


 「キズナ──何をした?」

 銃弾が再び殺人鬼に向かい飛翔力を取り戻す様に──


 「あ──ぐぁ──う」

 二発の銃弾が殺人鬼を貫通する。



 血を流し──倒れる殺人鬼。

 虫の息──



 「なに──いったい何が起きてるの?」


 奥に──人質としてこの倉庫に居た二人。

 女性は恐怖の眼差しを──


 男性──俺よりも少し年上だろうか。

 疲れたような──それでもこの状況に戸惑う様子もなくこちらを見ている。



 「なんだ──もっと面白いことになると思ったのにな──」

 倒れた殺人鬼をつまらなそうにその男は見ている。


 「しかし──面白い力を手に入れた──」


 「てめぇ──何を考えている──」

 胡散臭い──真っ黒なゴーグルをかけている。

 今さらながら、上着についていたフードを深くかぶり、素顔を隠す様に──


 「さて──俺の能力ちからはどんなもんなんだろうな──」


 「何言ってる──てめぇ」


 「余計な事をしてくれたよ──君」

 黒いゴーグルで見えない瞳がキズナを見ている。


 「もっと──こいつにいろんなもの壊させるつもりだったのにさ」

 倒れてる殺人鬼を男が蹴とばす。


 「あ─ぐ──あ」


 「考えてもみろよ──この世界はとっくにぶっ壊れているんだ──それを修正するにはどうすればいいか──」

 「──壊すんだ──壊れている世界を壊す、壊れたものを壊す事で修正される」


 「何言ってる──てめぇは人質だったんじゃねーのか」


 「そうだよ──人質になったのさ──俺を人質にして、そいつに自由に殺人をさせた、そう唆したのさ」


 「正気か──冗談を言ってるつもりじゃねーだろうな」


 「壊れろ──もっともっとだ」


 「あ──アガァーーーっ」

 ゴーグルの男が倒れる殺人鬼の胸に手をあて──そう呟くと苦しそうに殺人鬼が悶え始める。


 「コワス──コワス──」


 「俺もさっき──そっちの黒い小竜から貰った能力だ──いきなり思い通りに使えるかはわからないけどな」

 虫の息だった殺人鬼は再び──動き出す。


 血を流しながら──こちらを歩いてくる。


 「くっ──」

 構えを取るが、こんな化け物相手に──


 確かに──俺の中にも何か──感じる──


 これを何にどう使う──



 「その思いは能力ちからになる──やってみろよ、君も」

 男が俺に言う。


 「うるせー──イカれた野郎が上からモノいってんじゃねーよッ」


 「先輩ッ!!」


 「──正せ──てめぇの受けたその痛みは──てめぇが犯した大罪だッ」

 その殺人鬼の攻撃を回避して、その銃弾の傷口に触れる様に掌拳を決める。


 「アガッアーーーーッ」

 殺人鬼の傷口から再び銃弾を浴びたかのように──激しい血が飛び散ると──

 その場に倒れる。



 「やれやれ──ちっとも役に立たない──壊れる価値もない」

 男は再び殺人鬼を蹴っ飛ばす。


 「おや──これは死んだかな?」

 悲鳴もうめき声もあげない。



 「う──動かないでッ」

 キズナが銃弾を籠め直し、男に銃口を向けている。


 「やってみろよ──人を殺した人間がどんなふうに壊れるのか──面白そうだしな」

 「一人殺すのも二人殺すのも一緒だろ?」



 「そうそう──あんたはなんか面白い事できないのか?」

 廃工場の奥でただ一人正常に怯えていた女に近寄る。


 「特に何もなさそうだな──じゃぁ、ただ──“壊れろ”」

 そう男は女に言うと──ナイフを強引に持たせる。


 「あの“白いコートの男”が“殺人鬼だ──”──躊躇うことはない──“殺さなきゃ”、“殺される”だけだ──さぁ、どうする?」

 女の瞳から光が消えていく。


 ゆっくりと俺の方へと近寄ってくる。


 「おい──女、何を考えてるッ──どいつもこいつも──」


 「う──動かないでッ」

 キズナが銃を女に向ける。


 女は俺しか見えていないのか地面に転がっていた殺人鬼に軽く躓くように足をひっかける。


 「ア──タ──スケ─テ」


 「ついでだ、それにとどめをさしとけ──それも“殺人鬼”だ」


 「やめろっ」

 女は躊躇なくそのナイフを殺人鬼の心臓に突き刺す。


 その血が女の白いワンピースに飛び散る。


 再び立ち上がると──再び光の無い瞳を俺に向けるとゆっくりと歩き出す。



 「う──動かないでッ」


 「くそっ」

 まともじゃない──俺は拳を構えると女の頬を殴り飛ばす。


 「なん──だと」

 少しだけ身体をふらつかせただけ──


 「あっぐぁ」

 ナイフが俺の肩に突き刺さる。


 「先輩っ」


 「どうした──“撃たなければ”──君の大好きな先輩が──“死んでしまうよ”──撃てよ、先輩もそれを“望んでいる”さ」


 「駄目だッキズナ──ッ!!」


 ダンッ──銃声が響く。


 白いワンピース──殺人鬼の血を浴び真赤に染まった身体。


 その身体に銃弾が埋め込まれる。



 女性が倒れる。



 「あ───あぁ──」

 キズナの身体が震えている。



 「先輩──私──どうしよ……」


 「キズナ──違う、お前は悪くない……大丈夫だ……お前は──」


 「私……先輩……私……人をころ──」


 「ちがうっ──お前は俺を守るために──悪くない、お前は──」

 「よこせっ──それをよこせっ」

 彼女が手にしていた拳銃を真解ユズルが奪い取る。


 ダンッダンッと銃声が響く。


 その身体に銃弾を撃ち込む。


 「いいか──キズナ、これは俺がやった──俺の罪だ──」



 

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