【リヴィアと呼べ】
ちょっとした些細な事だった──
「どうした──トウカ、今日、機嫌悪いじゃん?」
学校の登校、校門をくぐったところでトウカとナギサが出会う。
「なんでだよ──別にいつもこんな感じだろ、お前が俺の何を知ってるんだよ」
「ほら、絶対機嫌悪い──どしたの、トウカ──その年でもおねしょでもしちゃった?」
「そんなんじゃないって──」
「それより聞いてよトウカ、昨日──ガチャでついに200連、不運記録更新しちゃってさーー、あったまきて、スマホ部屋のドア目掛けてぶん投げたのッしたら、お父さんがうるせーって怒鳴り込んできてさ──丁度現れたハゲ頭にガツーーーンッて、その後はもう大変、激おこのぷんぷん──それこそ小便ちびりそうになったわ」
「知るか──」
「あら──ミリスちゃん」
そんな様子を遠くから何処か裏や思想に見ていた、夢咲ユイ。
彼女の肩にぱたぱたと飛んできた、白いふわふわの毛並みの白い小さな羽根の生えたトカゲが止まる。
「どうしたの?今日はトウカくんのカバンに入っていなくていいのですか?」
「──トウカ、怒った……一緒──気まずい」
少ししょんぼりしている。
「なるほど──それで朝から機嫌が悪い訳ですか」
「トウカ、怒ると──結構──根深い」
「あらら、それじゃちょっとの間、私と一緒に居ましょうか?」
「うん、お願いするよ、委員長ちゃん」
そんな様子を誰かに見られていないかを確認しながら自分のバックへと入れる。
────
一階が本屋になっている建物の、外から二階に上がる階段を上がった場所にある部屋。
入り口には“真解探偵事務所”と書かれている。
そこを訪れる一つの人影。
「失礼する──」
呼び鈴も無かった入り口を二度ノックしドアを開ける。
「ん──誰?ん、てめぇは確か、結代トウカの居る学園に殴り込みしたとかいう──他校の女か?」
「言日岐カリンだ──あなたに依頼があって来た」
「──結代トウカにではなく、俺に?」
「あぁ──場合によっては命の危険がある、調べてもらうのは貴方の方が適任と判断させてもらった」
「──いくらだ?」
「──すまないが、本業は学生だ──満足いく額はだせない」
「──出直せ、クソアマ、俺は忙しい」
「随分とくつろいでいられたようだが?」
「──能力者絡みだ、迷早リクが病院から姿を消したと言っても興味は湧かないか」
「──はぁ?あの壊れたガキだろ?病院を抜け出しただけじゃねーのか」
「──初めから、そこに居なかった──そんな患者を受け入れてなど居なかった──まるでそんな事になっている」
「まるで、“記憶でも操作されたように”口裏を合わせたように答える──すまない、あなたのことを少し調べさせてもらった、一か月前にあった、引乃キズナの事件と類似していると思わないか」
「てめぇ、クソアマ、その話──何処から手に入れた?」
「恐らく犯人は同じ──そして何か都合が悪いために消された──次に狙われるのは私かリヴィアかもしれない」
「クソアマ、その病院へ案内しろ──」
────
学校──ホームルーム前。
「なんか──お父さんからメッセージきた」
後ろの席、ナギサが話しかけてくる。
「なんか、最近──SNS取り込んで使い方覚えたらしいんだけどさ、あの人も会社で係長止まりのぼっちだからさ──使う相手いないらしくて──」
「だったら、それ使って謝っとけよ」
「許してくれるかな?」
「本気で怒って無いだろ──」
「いや、まぢやばかったんだって──あ、またメッセきた」
「なんて?」
「頭蓋骨がへこんでる──だって」
「ぶふっ」
申し訳ないと思ったが吹き出してしまう。
「やっと──笑ったじゃん」
「なんだよそれ──」
「何あったかしらんけど、あんたも許してあげなよ──」
「別に何でもないって言ってるだろ」
「ほら、皆──席につけーーーっ」
担任の催稀が入ってくる。
俺はナギサの席に寄せていた椅子を元に戻す。
「よし、出席をとるぞ」
ダンッと次の瞬間──
教室の前のドアが吹き飛ぶ。
「トウカーーーッシュウは居るかーーーーッ」
「返事をしろーーーーっ」
「お前が点呼をとるのかよ──」
鉄拳でドアを突きあぶって現れた狂羅リヴィア。
「あと、ドアは押すんじゃなく、横にスライドしたら開くぞ?」
俺の傍までやってきた狂羅に伝える。
「馬鹿者──それくらい、知っている」
「いや──こっちもこんなにやべー奴だったのかよ」
さすがのナギサも少し引いている。
「トウカ、シュウ──少し手を借りたい──」
「おい、お前──昨日の今日で、連続で問題を──」
「そもそもお前は他校の──」
催稀が対処に困る様に──
「ならば、今日からあたしもこの学園に転入するッ──それで構わないのだろッ」
「そんなバカな話が──おい、結代、どうにか言ってくれ」
「狂羅──カリンは?」
「わからん、あいつはあいつで別に動いているようだが──迷早リクは覚えているな──奴が病院から姿を消した」
「消えた?」
「あぁ、まるであいつの存在自体が消されたようにな──」
「どういうことだよ」
「話は後だ──どうにもあたしたちは目立ち過ぎている」
「だれのせいだよ」
「それで、トウカの担任教師よ──あたしはどこに座ればいい──いい、席はあたしが決める、キサマッそこをどけろーーーッ」
俺の前の席の生徒を強制的にどかせる。
「狂羅、お前──本気で俺らのクラスにいつくつもりか?」
「トウカ、キサマ──先ほど、カリンをカリンと呼んでいたな、なぜあたしのことはリヴィアと呼ばない」
「取りあえず、話は後だ──」
「後だと、今すぐ呼ばぬかーーーッ」
「わ、わかったよ、リヴィ」
「リヴィアだと──いや、いいなそっちも、そう呼べトウカ」
お気に召したのか、リヴィは前の席へと大人しく着席する。
前の席に座っていた男子生徒が涙目で何故か俺を見る。




