【友達《しらないひと》】
──────
一つの物語を終わらせ──新しい世界を始めよう。
僕だけの真っ白な部屋。
沢山あったシャボン玉。
気がついたら、もうほとんど無くなっちゃった──
悲しい──?
ううん──もうそれも“思い出せない”んだよ──
トウカ──僕は白竜、ねぇ、皆が知っている僕はそこに居るのかい?
散らばった──結界の欠片。
砕けたシャボン玉。
僕はその欠片を一つ一つ拾い上げて組み立ててみるよ──
でも、上手く行かないね──
──バイバイ。
トウカ──僕は友達にお別れするよ。
─────
「がおーーーーーーっ」
大きく息を吸い込み魔力を蓄えるミリスが白竜へと姿を変える。
天井を見上げ大きく口を開くと今までとは比べ物にならない魔力量がミリスの口の中に集まる。
「なんだ──“白竜”?」
リヴィがそんなミリスを少し不思議そうに見ている。
「白竜──これが本来のお前の魔力、力だと言うのかッ」
クウドが自分がこちらを圧倒するために使った部屋を埋め尽くす魔法陣や魔力の鎖に匹敵するミリスの魔力量を感じ取る様に──
「がっおーーーーーッ」
そのまま──口に溢れかえる魔力を天井目掛け吐き出す──
頭上──天井を破壊し──遥か地下に居たと思われるその場所から紫色の空が見上げられるほどにその白い炎のブレスが空まで届く。
「くっ──」
クウドの呼び出した魔法陣、魔力の鎖が全て破壊される。
「がおーーーーーっ」
ミリスが紫色の空を引き裂くように白い炎のブレスを吐き続けたまま、その顔をクウドへと向ける。
「ふざけるなっ──こんな事が、こんな事で──セカイを壊す、世界を俺が──」
クウドがそんなミリスのブレスに対抗しようと右手を突き出し、作りだした魔法陣からありったけの魔力を射出する。
「“白竜”、やっちまえっ!!」
シュウがそうミリスへと呼びかける。
そんな全力のクウドの魔力をミリスの白い炎は包み込むように、クウドの身体を貫き──カオスから奪った混沌の魔力の核を燃やし尽くす。
強く壁に叩きつけられたクウドがそのまま壁を背に床に座り込むように倒れ、気を失うように頭を下げる。
「やったぜ、トウカ──いつの間にそんな“白竜”を手なずけたんだ、トウカ?」
そう、振り返ったナギサの顔を今、俺はどんな顔で見返しているのだろうか──
「おい──さっきから何言ってる、いつもみたいにミリスってちゃんと呼べよッこんな時にッ」
俺は何かに苛立つように、何かを拒絶するように叫ぶように言う。
「がおーーー、僕は怖い、それは恐ろしい“白竜”だよ」
白い長い髪──ピンク色の大きな瞳──ミリスはそう人の姿に戻り俺を見る。
「おい──なぁ、ユイ──」
俺はユイに縋る様にユイを見つめるが──
ただ──顔を伏せるように横に首を振る。
「どうなってるんだよ──」
まるでおかしくなったのは俺の方だと言うように──
誰一人と白竜をミリスとして認識していない。
「どうしてだよ──俺は、覚えてるんだよな?なぁ──ミリス」
俺はそうミリスの身体をぎゅっと抱きしめる。
「できれば──僕だってこんな“お別れ”はしたくなかったさ──」
多分、ミリス自身ももう此処に居る人間は俺とカオス、クウド以外を忘れてしまっている。
そして、そんな何が悲しいのかすら思い出せない悲しそうな瞳を空に向ける。
「くっ──ふはっはははははっ」
そして、壁に蹲っていたクウドが狂ったように笑いだす。
「何がおかしい──てめぇにはもう、魔力は無い──ミリスが全部燃やし尽くしたっ」
俺がそう笑うクウドへと叫ぶように言う。
「言ったはずだ──セカイは壊れる、そうそこに“俺”は関係ない、そこに“意味はない”──セカイを壊すのはおまえたち、愚かな人間なんだよ」
クウドの最後の魔力の力か──
再び電力が落ちていた部屋の映像機器が動き出し──世界の様子を映し出す。
未だ降り続ける黒い流れ星のようなもの。
紫色の空──
繁殖を続ける黒い蔦──
そして──
映像ではなく──ミリスが開けた大きな天井の穴から見える紫色の空が大きく割れ──
隕石のような黒い魔力の塊が現れ──こちらに向かい落下している。
「な──んだ、あれ、あんなものが落ちたら──」
世界が終わると、カリンがその空を眺める。
「ふざけるな──ふざけんなよ、ここまで来て──俺は世界を守るためにここにいるんじゃねーよ、皆を守る、俺は──」
俺は無謀にもその大きな魔力の隕石に向かい右手を伸ばす──
ちっぽけな俺の結界でどうにかなるわけもない。
ミリスの魔力でその力が大きくなったとはいえ、あんなものを防ぎきることは不可能だ。
それでも──遥か上空にあるその魔力の隕石をこの星に落下させないように、ミリスの魔力を借り、巨大な結界を作りだす。
「ねぇ──トウカ──」
ミリスがそんな俺に話しかけるが、もちろんそんな余裕など無い。
「僕はね──トウカを僕の守り人に選んで正解だったと思うんだよ──」
「やっぱり、世界を守る──それはトウカ──君にしかできないと思うんだ」
「ぐっ──くっ」
ミリスになんて言葉を返そうとしたかはわからない──
だが、そんな言葉を塞ぐように俺の作りだした結界に魔力の隕石が衝突すると今までに感じた事の無い身体が引き裂かれそうな感覚が俺を襲う。
「がおーーー、僕は希望を魔力に変える白竜だよ──トウカ、希望を守る、与えられるのはね、君だよ」
「ぐっ──がっ──」
そんな優しい、悲しいミリスの声に俺は何か答えたいのに──
その身体が引き裂かれそうな──負の感情の魔力が結界を通し、一気に俺の中に流れ込む。
「トウカ──お母さんにね──伝えて欲しいんだ──」
「ぐっ──や、め──ろ──」
「僕はね──おかあさんというものがきちんとわからなかったけどね──おかあさんのことが、本当に大好きだったよ──」
「大丈夫──皆がこの世界に生きたいと願えばね──希望はトウカが守るから──世界は僕が作るから──」
ミリスが大きく息を吸い込む──
そんなやり取りを──見ていたナギサたち。
ナギサが──シュウが──
一人、一人、その右手をそらに突き出す様に向ける。
その願いを──希望を──結界に届けるように。
クウドが映し出していた映像が──チャンネルを切り替えるように──
この施設内で今も戦っていた、リエン達を映し出す。
リエンたちも敵の能力者も一度その争いを止め──
何かに導かれるようにその右手を空に向けるようにかざす。
また映像は学園を映す。
アゲハや莉絶先生たち──
窓の外に見える黒い魔力の隕石。
そのまえに張られた結界へと学生たちや教員たちが手を伸ばす。
街周辺が映し出される。
その映像の一つに映る、母さんとキズナさん。
黙って空を見つめていた母さんが──
キズナさんに習うようにその右手を空へと向ける。
「ぐっ──がぁーーーっ」
そんなみんなの力を借りるように──
結界は強度を増すようにその魔力の隕石を遮る。
が、俺の身体を引き裂くような感覚、その感情に俺の身体がその場に崩れ落ちそうになる。
「大丈夫──後は僕が“創る”から──」
「──ぐ、や──め─ろ──ミリ──ス」
「──君たちにとっては不謹慎かもしれないけどね──今日までとってもとても楽しかったよ──トウカと居られて嬉しかったよ──」
一つの物語を終わらせ──新しい世界を始めよう。
「トウカ───バイバイッ───」




