【何《だれ》も食べるな】
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セカイは──正と負の魔力。
希望と混沌が上手く調律し創られている。
そう煩理家の博士、その助手をしていた父は言っていた。
だが──すでにこのセカイは腐りきっている。
右を向けば肥えた豚が、金と権力でセカイを食い散らかす。
左を向けば飢えた野良犬が、その貧と不遇をセカイのせいだと責任を押し付ける。
どんなにセカイが調律しようが──人間はその調律を乱す。
別に正義を気取る訳じゃない。
別にセカイを征服したい欲望もない。
ただ──セカイに“意味”などない。
誰がこの俺にその答えを答えられる?
人が産まれ死に行くまでの過程に何がある?
それは、セカイのためになるのか?
誰かがセカイに貢献しているのか?
どんなに権力を持とうが、その人間一人にセカイの自然を破壊されるのなら──それはただの害虫だ。
どんなに優秀なスポーツ選手が好成績を収めようが、それはセカイという規模に置いて何の価値も与えない。
セカイが調律することに、そこに人間が産まれる事に──“意味がない”
希望と混沌が──相殺しているというのなら──壊すことと同じこと。
黒と白──俺の世界はそれだけで十分だ、余計な音などいらない。
ぜんぶ──ぜんぶ──壊せ。
意味の無いものぜんぶ──壊せ。
セカイを壊せ──そして初めて“世界”が守られる。
─────
「セカイを壊せ、そして再生される──」
「うらぁーーーっ意味わかんねーことばっかほざいてんじゃねーぞっ」
シュウがその右手の魔力で造られた鉄甲を振り下ろす。
破損していた黒竜の魔力の核が黒い炎を燃え上がらせるように──
「学生風情が──力を持ってヒーロー気取りか──」
冷たくクウドがそんなシュウを睨みつけ──
ドンッと激しい爆発音のようなものと──
クウドの目の前に激しい土煙のようなものがあがる。
シュウの身体が壁に激しく激突して蹲っている。
「自覚が無いようだから──言ってやる──おまえたちが、何を守りに来たのか、俺を倒しに来たのか──それを俺は知らないが、お前らはその意味の無い行為の結果、死ぬ」
圧倒的な力を見せつけるように、シュウがその犠牲となり壁に激突したシュウがその場に座り込むように倒れている。
「トウカ──今がチャンスだよ、君のあの結界弾でカオスが損傷させた核を狙えるかい?」
「シュウの能力が届かない相手に俺の攻撃では──」
「トウカ──僕は言ったよ、君の今の魔力は僕に依存していると──」
「だけど、だから──ミリス、お前、それをどうやって──」
「トウカ、話は後──“ぜんぶ”守るんだろ──」
もちろん──仲間を守る。
今は──そっちに集中をしたい。
でも──
俺はそんな不安が頭を支配しながらも──
その右手を指鉄砲のように構える。
「──トウカ、遊園地──楽しかった、リヴィアちゃん面白かったね──ナギサちゃん、僕にいっぱい話しかけてくれたよ──おかあさんとアイスも食べたよ」
「ちょっとだけ──思い返しているだけだよ」
そんな──俺の知らない、ミリスだけの記憶を俺に聞かせるように──俺を見ずに呟くと──すぅーと息を吸い込む。
俺の指に溜めた結界弾の魔力が倍増するように膨らむ。
「当たれっ──」
俺はその結界弾をクウドの腹部あたりにある黒く燃え上がるような黒竜の核を狙う。
「無駄、そう言っている、結代トウカ、白竜っ」
クウドがこちらに右手を向けると──その手のひらから放たれる球弾に相殺される。
「くっ──」
「もう一度だよ、トウカ──」
ミリスがもう一度大きく息を吸い込む。
「無駄だと──言っている」
真正面からではただの消耗戦──
「だったら──」
俺はその指先を少しクウドの斜め上へと向ける。
「───」
「─!?」
クウドが俺の狙いを探る様に不快そうに結界弾の軌道を予測するように目線を動かす。
俺がクウドの周囲に張った結界に気が付く。
放った結界弾を俺の結界の板に反射をさせる。
結界弾を光を反射させるように──その軌道を別の結界、また別の結界へと移し、その軌道を予測させない。
本来の俺なら結界弾と複数の結界を同時に作成などできなかっただろう。
ミリスの魔力のおかげ──
「ぐっ──なっ──」
結界弾がクウドの斜め後ろにあった結界の板に弾かれると──クウドの背中からその核を掠める。
「この俺を追い詰めているつもりか──結代トウカ、はくりゅーっ!!」
クウドから鎖のような魔力が──俺たちに向かい伸びてくる。
「“断ち切れっ”」
カリンの刀の透明な刃がその鎖を断ち切る。
「調子に乗るな──この力を前に、まだ──どうにかできるなんて意味の無い事を考えているんじゃないだろうな?」
「意味しかねーだろっ」
ナギサがペッドボトルの水を取り出しながら言葉を返す。
「ジャックオーランタンッ」
「来てッカボチャンッ」
ユイとユニアが手を繋いだまま、そう言葉にすると──
カボチャのオバケの幻影が実体化する。
「ハカイなど、このあたしが破壊するーーーっ」
リヴィが拳を構える。
「守るんだ──ぜんぶ、ぜんぶ──」
「そして──また、みんなで──遊園地に行こう──」
「ユウエンチ?そこに連れてってくれるのかい?」
「あぁ、これから何回でもだ──」
「そこはどんなところなんだい?美味しいものが食べられるのかい?」
「──ミリス、お前さっき思い返してるって──」
言ったばかり──
「ミリス──お前──その魔力、さっきから何を──」
「がおーーーっ、トウカ、僕はね怖い、怖い白竜だよ──記憶なんてぺろりと食べてしまうよ」
「やめろ──もう、何も食べるなっ──お願いだっ」
「がおーーー、これは僕の使命だよ──トウカ、僕も、トウカをお母さんを友達を守りたいよ──」
にししと──と寂しそうに、少し疲れたようにミリスが笑う。




