【まだ誰も“負けてない”】
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府警──という、母さんの職業は誇りだった。
そのせいで、俺にも厳しかったけど、それでも──
母さんの振る舞いは他の大人よりもどこか正しく見えたんだ。
正義の味方になりたかった?
いや──正直、親の影響はそこまで受けなかったし──
俺にとっての正しい正義ってのは、何処か他の人と違ったのかもしれない。
アニメや映画でも──必ずしも主人公や正義側として描かれているほうが正しいとは思わなかったんだ。
どんな、物語でも──家族や恋人、誰かのために戦う、守ろうとする姿は何よりも正しく見えた。
──正義という肩書よりも、どこまでその人の“感情”に共感ができるのか──
だから──大事なんだ。
だから──大切にしたいんだ。
俺は“正しい”から守るんじゃない──
俺はお前に“共感”だから、守るんだ──
だから──家族に、バイバイなんて言葉を二度と使うな。
だから──家族が、家族に次に使う言葉はただいまだろ。
母さんは────家族には甘いからな。
お前の大好きなコロッケやプリン──たくさん用意して待ってる。
俺も──お前がおいしそうに食べてくれる、たいして上手く作れるわけでもないオムライス──いくつでも作ってやる。
だから──守るんだ。守らせろ──ぜんぶ、ぜんぶ守るんだ。
─────
「GYAOOOOOO──」
巨大な白竜が激しい遠吠えを上げる。
「──いつの間にそんな力を、だが──俺は黒竜の核を得た、お前らが使命を放棄し、混沌に偏った黒竜の核をな、白竜、お前がいまさら、そんな力を解放しようともう、セカイの破壊は止められないんだよっ」
「GAOOOOOOOッ」
「無駄だ──」
トウカのような結界とまでいかないが、クウドが纏う黒い魔力が、白竜が吐き出した白い炎のブレスを防ぐ。
「くっ──くそ──」
が、そのブレスはしつこくクウドを襲うと──その白い炎の一部が突き出していたクウドの右手を燃え上がらせる。
クウドが不快そうに右手を振り、その炎を消化しようとする。
「くそ──この俺に、この力に──白竜、お前ごときが──」
「──いいだろう、貴様らごときに、本気になるつもりもなかったが──見せてやる、セカイを破壊する力ってのをな」
クウドは巨大な白竜にその右手を向ける。
赤紫色に光る魔法陣がいくつも描かれ、その右手に魔力を収束させていく。
「壊れろっ」
「GAOOOOOーーー」
まるで、兵器のビーム砲のようなクウドの魔砲。
トウカの結界を破り、そして──巨大な白竜の身体すらも貫通し風穴を開ける。
「GAOOOOOッ」
「くっ──」
だが、そんな体に穴を開けられながらも白竜は再び白い炎のブレスをクウドへ向け吐き出す。
「くそっ──白竜、おまえがたった一匹──この混沌を調律することなど」
「俺が──壊す、セカイを──邪魔をするなっ」
* * *
「はぁ、はぁ──あははははっ、勝った──勝ったぞ、俺の勝ちだ白竜──もう誰もセカイの破壊を止められない、はははははっ」
巨大な白竜が目の前で倒れ──そして、トウカやそのほかの仲間も全員そこに意識なく倒れている。
そこでただ一人、立つクウドがその勝利を自ら祝福するように笑い続ける。
────
「はぁ──はぁ──」
クウドの中で、どれだけの死闘が繰り広げられていたのか、クウドは息を切らしている──
「ずいぶん楽しそうだな──クウド、俺たちはまだ誰も“負けてない”ぜ?」
「──!?」
クウドが誰もいない方向に右手を向けている。
クウドの前には俺が作り出した透明な板の結界がある。
クウドの背後に立つユイの顔がその結界に映り込み、じっとクウドの瞳を見つめている。
「夢咲ユイ──貴様が──」
「催稀クウド──あなたにもまだ、“悪夢”があったのですね」
「きさまぁーーーーーっ」
感情的にクウドがその右手をユイへ向ける。
「ガオーーーーーッ」
床に倒れたままの黒竜、カオスがその小竜の姿で大きく口を開くと──
咆哮によるブレスがクウドの身体を貫く──
「ぐっ──黒竜、核を狙って──だが、どこでそんな魔力を──」
「狂人化──届かぬなら届かせるまでだーーーっ」
「ぐっ──」
リヴィの拳がクウドに叩きこまれる。
「どうなってる──今の黒竜の攻撃で核が──魔力が一時的に弱まったとでも──」
「うらぁーーーーーっ」
シュウの鉄甲を身に着けた拳が振り下ろされる。
「なめるな──調子に乗るなよ」
「水蛇っ」
振り上げようとした右手をナギサの水蛇が絡みつく。
「消滅しろっ」
今ならと──カリンの刃がクウドの核を狙うが──
「調子に乗るなと言っているッ」
魔力の鎖がその透明な刃を止める。
さらに──魔法陣が空中のいたる場所に出現し──
魔力を集結させる。
魔砲を発動させるように、魔法陣が赤紫色に輝く。
「──ぜんぶ、守る──俺が、俺が正しいと思ったものを守る」
俺は右手を前に突き出し──
自分の前に結界を作る。
魔法陣の砲撃の軌道をすべて自分へ向ける。
「調子に乗るな、そう言っている結代トウカ──お前のそのちっぽけな守る力で、セカイの破壊する力を止められるかっ」
「──俺だけの力じゃない──俺には白竜がついてる」
次々とクウドの魔砲が俺の結界へと降ってくる。
その一撃、一撃を受けるたびに凄まじい衝撃が結界を襲い、俺の身体にもその一部の衝撃が流れてくる。
その広い攻撃を受けきるため、張った大き目の結界──
バリンッと──
そのいくつかの魔砲を防ぎきれず──結界を貫通してくる。
「ぐっあっ──」
結界を抜けてきた魔砲、そのほとんどは誰も居ない床を貫いていたが──
その一発が、俺の左肩に直撃する。
「まだ──負けてない──」
俺は右手を突き出し続ける。
「トウカ──トウカはやっぱり凄いね、僕の自慢の守り人だよ」
「俺だけじゃない──ミリス、お前の魔力のおかげだ」
「にしし、そうだよ──存分に僕に感謝をするんだね」
そうミリスはいつもの調子でにししと笑う。
「しかし、久しぶりに魔力をたくさん使ったせいかな──トウカ、僕はお腹が空いたよ」
「──この状況でお前は、あぁ、帰ったら、コロッケでもハンバーグでもプリンでもなんでも食べさせてやる」
「おやおや、トウカ──随分と気前がいいね、しかしなんだい、“どれも”ずいぶんと面白い名前だね、それはぜんぶ、“食べられる”のかい?」
「──どれも、お前の好物だろ」
「──ん?そっか──そうなんだね、ねぇ、トウカ──僕は君がいつも僕に作ってくれる“あの”料理が食べたいんだ──」
「──ミリス?──おまえ──」
ミリスのその笑顔はいつも通りで──
クウドの砲撃はいつの間にか止んでいた。
ただ──そのクウドの攻撃を防いでいる時よりも、
俺の感情は乱れ始める──




