【それでも、また君を好きになる】
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いつだってあなたは──その中心にいた。
それができる人だから──
そんなあなたに並びたいと思った──それは“興味”
でも俺には──あなたが助けを求めているように見えたんだ。
あなたもそんな完璧のような存在に助けを求めているように見えたんだ。
興味はやがて──俺の勝手な使命に代わり──
やがて、俺には余命があるとわかる。
──だから、それが未練だ。
──俺は、そんな君に何ができるのだろう。
──俺は、君に何を残せるのだろう。
──俺が居たその記憶は、君の救いになるのだろうか。
──時間がないんだ。
──どうか、俺がそこに居たことを──覚えていて欲しいんだ。
* * *
トウカの住む街、とある病院。
「鬼願セツカさん?」
女の看護師の一人が少し頬を赤らめながら病室のベッドを隠すカーテンを開ける。
「あれ──?」
ベッドは無人で──ベッド脇のデスクの上には、青白い髪──
男にも女にも見える美形の人が写っている。
「鬼願さんなら──あの空を見るなりどこかに慌てて向かいましたよ」
「え──外出しちゃったんですか?」
向かいのベッドに居た患者がそんな看護師にそう告げ、看護師は少し絶望したような顔を向ける。
「何だか──救わなきゃって──そう呟いてましたね」
「まずは、自分の心配をしないといけないのに──」
看護師はそうなんとなく写真の女性を見る。
「綺麗な人ですよね、いつもその写真を眺めてましたよ──よっぽど大切な人だったんですかね」
患者がそう看護師へと言った。
──────
互いに武器を弾き合うように、その一撃の重さにリエンが後ろへ後退するようにバックステップをするように着地する。
「俺が──リエン先輩、あなたを超える、そして完璧から救い出す」
「何度も言っている、セツカ──ぼくは完璧なんかじゃない、現にぼくはある男に完膚なきまでに敗北している、そして──君が知るようにぼくは愛するものを失った──とても、セツカ、君の言う完璧などとは程遠いよ」
「──それでもリエン先輩、あなたは誰よりも完璧に近い、俺の知る限り誰よりも──」
「──セツカ、その言葉は破綻していると言っている、ぼくは」
「──セツカ、君はぼくに完璧であって欲しいと願い──先ほどから君はそんなぼくにぼくが完璧であることを君自身が否定してやると言っているように聞こえるね」
そのセツカの矛盾を突き立てるように──
「──リエン先輩、あなたに並びたいと思った、それが“最初”」
「そんなあなたには敵わない──それでもあなたの記憶に残りたいと思うのが“最後”」
「セツカ──完璧など憧れだよ──そして、興味は憧れへの希望、未練は憧れへの絶望、君の想いはぼくにではない──その言葉への憧れに過ぎない」
「リエン先輩──俺には時間がないんだ──俺は居た、俺は此処に居た」
「セツカ──君の完璧への未練にぼくを勝手に巻き込むな──」
「なら、リエン先輩、あなたはこれまでに何を“演じた”?何を演じてきた?リエン先輩、あなたはそれを“完璧”に演じてきたんじゃないのか?」
「もう一度言おう、完璧など憧れ──ぼくは“完璧”に演じるんじゃない、“憧れ”からそれを演じる──憧れても完璧にはなれない──だからぼくは“演じる”のさ」
「俺は──知っている、あんたはいつだって“完璧”、そう生きてきた」
「──いいや、ぼくはそう見えるように演じていただけだよ、それはぼくの精一杯、そうやって生きてきた」
「──俺は──俺は知っている、知っているんだ──あんたの寂しさも苦しさも誰よりもずっと──演技なんかじゃない──リエン先輩は俺と同じ、ずっとずっと──完璧が故に人ならぬ者に恋をした、その悩みを独りで抱えるしかなかった」
「──そうぼくが演じていた」
リエンはその一言でセツカの言葉を否定する。
「俺は過去を戻ることはできない──俺は過去に戻り、君の今の過ちを伝えてやることはできない、だから──俺は今──あなたに伝えなければならない」
「それは、セツカ──君に決められたことじゃない、もし過去のぼくに君がその何かを伝えたとして、ぼくの演技は変わらない」
「“願え”──俺の願いをこの一撃に込める」
「演じよう──セツカ、君の“完璧”を──いや、“未熟”を──」
「──演じよう、それは“富”──その“完璧”を貫け、ゲイボルグっ」
ゆっくりと──神器とされるゲイボルグがリエンの頭上から現れる。
無防備なリエン。
「“願え”──対価は払う──その完璧を断ち切れっ」
互いに恐らく今出せる全力──
リエンもセツカもその一撃にすべての魔力を託すように──
ゲイボルグは稲妻のような黄色の火花を散らし──
セツカの持つ金棒は赤く光りを放ち、さらに大きく魔力を宿す。
振り下ろしたセツカの金棒とリエンが放ったゲイボルグが衝突する。
魔力が衝突し──光の半円が周囲へ広がる。
光が止む。
リエンはその場に立っている。
右手を前に突き出し、消耗した魔力──息を切らすように肩を揺らすように呼吸を整えている。
セツカの金棒は地面を叩き割るように突き刺さり──
その一撃で叩き落とされたゲイボルグが──リエンの元へ還るように消滅する。
周囲で──他の能力者や化け物と戦っていた、サイカやエルジナたちも思わずその手を止め、二人の決着を見ている。
がくりと魔力を使い過ぎたセツカも──そのまま地面に突き刺さった金棒にその身を支えるように、刀のグリップの先に両手を置いている。
「──最初は興味、最後は未練──もし、過去に戻って俺は俺にこの結果を伝えられるのなら──」
リエンは黙ってそんなセツカを見る。
「死ぬことよりも──誰かの記憶にも残らないのが──怖かった」
セツカはただ──無表情にリエンを見つめる。
「何でも手に入ると思った──そんな俺の人生、それが──後わずかだと聞かされて、そんな命の恐怖よりも──手に入れられなかったモノへの未練が先に来た──だから、あなたにはそうならないために伝えたかった──」
「──セツカ」
「だから──この結果を、過去の俺に伝えられるのなら──そんな方法があったのなら──俺の願いは──届くのだろうか?」
セツカは自問自答するように。
「──俺は俺の残り少ない余命を削ってまでした行為への後悔を伝えよう──それでも──またリエン先輩、あなたを好きになる」
「セツカ──不器用な男だ──ぼくと“よく似ている”」
「だが──そんな君にぼくは憧れ──この記憶に刻んでおこう」
「──やっぱり、あなたは“完璧”だ」
セツカはその場へ倒れる。
その命を使い果たしたかのように──




