【君にとっての完璧《あくやく》】
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最初は興味だった。
女性なのに、俺よりも女性からも人気のあった。
容姿、運動、学──財力に置いてすべてを持っている。
そんな満たされた女性。
煩理リエン──
そんな彼女をも俺は手に入れようと思った。
でも、そんな俺が興味を持ったのに、そんな彼女は俺に何の興味を持っていなかった。
──満たされていた願望。
──満たされることの無かった欲望。
俺の興味はただ──そんな煩理リエンという女性に向いた。
親に頼み彼女の親が研究している施設に入ることまでは容易だった。
そこで、彼女が欲している大罪人を知った。
そして、俺は──そこで催稀クウドという人間にも会った。
そんな不確定な大罪人に入れ込んで──
彼女もまた──すべてを持ちながらも満たされぬ存在なんだと──
たぶん──俺は救いたかった。あなたをそこから──
俺が──あなたが惚れられる男になれたのなら、あなたをそこから救えると思ったんだ──
余命はない──だから──
──────
「はぁ──はぁ──」
セツカは構えた魔力を刃に巻き付け金棒のようにその形を変形させた刀を右手で構えたまま──左手で心臓の辺りをおさえている。
「確かに──強力な魔力だ、だが──それ以上に負担が大きすぎるんじゃないか、セツカ」
「時間がないんだ──例え、魂を売って手に入れた魔力だろうが──その能力が余命を削ろうが──俺には──」
「演じよう──それは“権力”、セツカ──ぼくの前に跪けっ」
リエンがセツカへそう能力で命じる。
「──“願え”──鬼よ、その権力を断ち切れっ」
「──!?」
セツカはその言葉に反し、金棒を振るう。
リエンはその金棒を回避する──
「──っ」
回避しているのに──その強力な金棒がリエンの衣服を掠めただけでその身体を後ろへと弾き飛ばす。
「──演じようっ、それは“名声”ッ」
リエンは戦闘スタイルを素早く切り替え、受け身をとるように床に着地する。
「完璧──故に、その上の完璧に憧れる」
セツカは──そんなリエンを見つめる。
「完璧の上──それが存在する時点でその言葉は破綻しているよ、セツカ」
「そう、俺たちは──完璧なんて存在じゃあってはならない──だから俺はそんなあんたに並ぼうと思ったんだ」
「演じよう──それは“富”──」
リエンの周囲から武器が呼び出されていく。
「セツカ──それはぼくに対する嫉妬か、ぼくが君の何かしらの障害になったかは知らない──それでもぼくは、君にとっての“悪役”を演じるだけだよ」
「貫け──」
武器が次々とセツカの身体へと飛んでいく。
「“願え”──俺は今日、あなたを超える──“鬼”となる」
刃が巨大な金棒となった刀を頭上へと翳す。
金棒を形どっていた魔力が刃を取り巻く竜巻に戻る。
その竜巻が強大な渦巻き代わり──
飛んできた武器がその渦巻きの中へと吸い込まれるように──
軌道と遠心力を失った武器が地面に落ち──リエンの元へと戻る様に消えていく。
再び魔力は刀の刃に纏わりつくように金棒の姿に変る。
「俺は完璧を否定しよう──そこからあなたを救う」
「ぼくはそんなものじゃない──ぼくはそんなものは演じていない」
「それでも、周りはそうリエン先輩を評価している、そうあなたに希望を託す」
「否定するのも面倒だな──セツカ、だからそれでなんだと、君はぼくに言うつもりだ?」
「リエン先輩、完璧はどこに救いを求める、願いを託す──完璧はそれが許されない──だから俺はそれを否定する」
セツカは金棒を構える。
「あなたはただの女性──誰かを頼り、普通の人間を愛すべきだ」
「ぼくは完璧なんかじゃない──故に誰を頼り、誰を愛そうが──セツカ、君の知るところではないさ」
「最初は──興味──最後は──未練」
「演じよう──それは“富”」
二振りの赤、青の刃の刀。
その刀を右手、左手で握りしめる。
「演じよう──それは“名声”」
地面に突き刺さっていた刃を引き抜く。
「“願え”──時間がないんだ──」
少しだけ疲れきった目をセツカがリエンへ向ける。
「俺は完璧を否定する──」
リエンは両手を翼のように広げ、二振りの赤と青の刃を翼のように構える。
「俺はあなたを願える女性に戻すために──“鬼”となる」
金棒を形どっている魔力がそのセツカの言葉に反応するように、その刃を赤色に変化させる。
素早い動きでリエンがセツカの前に立ち、その二つの刃を交互に振るうが──
ブンッとただ──乱暴にセツカがその金棒の刃を振るう。
リエンの赤と青の二振りの刀。
その武器もかなり強力なモノだ。
それでも、そのセツカの持つ刀は──
その願いを余命を代償に形どる。
その一瞬は──リエンの一撃を凌駕する。
二振りの刀の刃を盾にするように──
押し飛ばされた身体を何とか地面に着地させる。
「セツカ──クウドに魂を売ってまで欲しかった、そんなお前の願いは──ただぼくを超えるだけか」
「初めは興味だ──最後は未練──時間がないんだ──リエン先輩、あなたは大罪人に何を求めた、そして──それを失って、何が“残った”」
リエンが大罪人を失った事実を知っているように──そんな質問を向ける。
「感情的になるな──煩理リエン」
リエンは自分に言い聞かせるように──セツカの言葉への怒りを抑える。
「あの人は、今でもぼくの中でも偉大だよ──ぼくの“記憶”の中には永遠にそう生き続ける」
「だからだよ──リエン先輩、ぼくはその大罪人を否定しよう──俺がその記憶の中で生き続けるために──俺はあなたに爪痕を残す」
「それでもぼくは鬼を否定する──だから演じよう、今この一時を──君にとっての完璧を──」
地面を蹴り上げ──その刃を振りかざしたリエンの斬撃をセツカの金棒の刃が受け止める。




