【最初は興味、最後は未練】
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欲しいと思ったモノは望めば何でも手に入ると思っていた──。
だから、そんな俺の前にあなたが現れた時は──
俺はただ──その人では無い大罪人を映すその瞳に映りたいと、俺はそんなあなたに興味を持った。
望めば──先輩も後輩も、もちろん同級生も──容姿端麗、そんな俺が頼めば何でも手に入る。
手に入らないなら──手に入れられないから──俺はただ余計に──
俺の余命に悔いがあるのなら──たぶん、それだ。
* * *
トウカたちの住む街。
とある、病院内。
赤紫色の空──
そんな赤紫色の日差しを取り込む病院の廊下で二人の看護師が立ち話をしている。
「この空、いったいどうなってるのかしら──」
「ニュースを見ても支離滅裂──とにかく、外に出るなって言ってるけどね──せめて出勤前に言って欲しかったわよね」
「でも、なんか一部の地域じゃ黒い蔦みたいのが張り巡らされてて、それに触れたら命が取られるとか──」
「ネットの一部のサイトじゃ、世界の終わりってお祭り騒ぎになってたけどね」
「そういえば──302号室の──」
「あぁ、あのイケメンの──もったいないわよね」
「美人薄命なんて言葉、私には無縁だけど──まさにあの人のためのものよね」
「病室に飾ってる、あの薄い水色の髪の女性──彼女さんかな?」
「──面会に来たところ見たこと無いけど」
看護婦二人はそんな302号室のある部屋の方を眺める。
─────
「トウカ──」
「リエン様ッ」
もと来た道を引き返す。
ナギサとサイカの声。
俺とリエンをその場に呼ぶように。
そして、そこには──
ナギサとサイカ、シュウ、スバル、リヴィ、エルジナさん、カリン、ノア、タツキ、ユイと──小さな女の子。
「ユイ──この人がお父さん?」
「ん──?」
全員の視線がユイへと向かうが──
「ユニアちゃん──一度、それ忘れましょうか」
* * *
「先に進めない?」
リエンがそう先に進んだはずのエルジナさんたちがこの場に居ることを問いただす様に──
「クウドの仕業か──だが、問題はない」
「しかし、どうするんだ?」
事情は知らないが──シュウたちが進むことが許されなかった何かが──
クウドの仕掛けがここにはある。
「君の出番さ──トウカくん」
「俺の──?」
「クウドが──瘴気、その魔力を利用しその壁を作り上げているのだろう、君の魔力はそんな瘴気を浄化できるのだったな」
リエンが後ろを歩く俺を見るように背に顔を向ける。
ゆっくりとリエンは皆の前に立ち──少しだけ上を見上げる。
後ろを振り向かず、そんな背に居る全員に呼び掛けるように──
「正真正銘──最終決戦だッ──“悪”の“悪”が“正義”だというのなら──演じようクウド、おまえの“正義”を──」
俺は黙って、リエンが見つめる闇に手を伸ばす。
魔力の手をかざすと──その闇が晴れるように新たな道が現れる。
そして──その建物が本来の景色を取り戻す様に──
存在するはずの無かった通路が消えていく。
しばらく進むと、広い部屋へと出る。
そして、そこには残りの敵の勢力が全集結しているように。
瘴気で造られた化け物。
そして、能力者と思われる人間が数名存在している。
「やっぱり来た──ここに居れば会えると思った──」
それは誰に向けた言葉なのか。
白髪──爽やかな、容姿の整った顔。
20代前半くらいだろう男。
「鬼願 セツカ──」
そんな男を見つめ、リエンがその男の名と思われる言葉を口にする。
「──覚えてはいてくれたんですね、リエン先輩」
「リエン──先輩?」
俺はそんなセツカという男の呼び方に疑問を口にするようにリエンの名を繰り返す。
「学生時代──数年前の古い知り合いだよ」
リエンはただ──そう答える。
「願えば手に入った──俺にはその魅力が用意されていたのだからね──」
「──今さら、クウドの力を借り、ぼくの前に来ようがぼくが君に対する評価など変わらない──」
「相変わらず──あの男しか見えていないんだな──大罪人だっけ?もう君の瞳にはその男は居ないんだろ?」
「くっ──」
そのセツカという男の言葉に俺が反応するが──
リエンの右手が俺の行動を制御するように右腕で俺の前を遮る。
「君たちは先を急げ──トウカくん」
セツカという男以外にも他の能力者、化け物がこちらの人数を凌駕するほど居る大部屋。
「リエン──」
「──君にはまだ“守る”ものが残っているんだろ──」
「──あぁ」
「急げ──家族を守るのはそれに選ばれた君の使命だ──」
「だけどさ──トウカ」
ナギサがそんなことを許さないというように立ち塞がる敵勢力を前に。
「演じよう──この場に相応しい悪役を、ぼくが──」
「それは──“富”、道を開け──」
リエンが呼び出した武器の数々が──俺たちの進路を切り開くように、化け物を蹴散らし、能力者のほとんどはその武器が降り落ちる場所からその身体を逃がす。
化け物の一匹がそんな中でシュウを狙い襲ってくるが──
化け物の身体の側部、スバルが身体を寄せ、そのサバイバルナイフを突き刺す。
「さっさと行けよ、先輩──あんたとの共闘はあれが最初で最後と言っただろ」
「悪い──助かったスバル」
「だるぅ──そういうじゃねっての」
「行かせないッ」
「──なっ」
リエンが作ってくれた進路を進むナギサを追うように能力者の一人が迫ってくる。
「アイスメイク──凍てつけっ」
「サイカ──サンキュー」
「馬鹿ですか、リエン様が切り開いたチャンスを無駄にするつもりですかナギサ」
「おう、サイカ──またなっ」
「馬鹿ですか──当然、あなたには言いたいことが沢山あります、だから──死ぬんじゃありませんよ、ナギサ」
「こんじょーーーっ」
突き進むリヴィの前に現れた化け物はそんなリヴィの拳に叩き伏せられる。
そんな拳を振り下ろししゃがんだリヴィの背後に影が落ちる。
後ろから迫っていた化け物が横から別の女性にタックルを決められ、地面に叩き伏せられる。
「エルジナ──」
「全く、本当に前しか見ていない──危なっかしい奴だ──だが、それでいい──“後ろ”は俺に任せろ」
「あぁ、エルジナ──有難うだっ!!」
俺、ナギサ、シュウ、リヴィ、カリン、ユイ、ユニア、ノア、タツキ。
9名がそのおかげで、その大部屋の奥に続く通路へと辿り着く。
そして、その通路に足を踏み込むと──
ノアとタツキの二人はその出入口の前にくるりと身体を回転させ、俺たちに背を向ける。
そんなノアをタツキが少し迷惑そうに見るが──
「えーー、私も手伝うよ──そっちはトウカやナギサ達に任せるからさ」
「さっさと終わらせてきなよ──ここは私──とノアに任せときなよ」
ノアとタツキはそんな俺たちを背に──
リエンに加勢するためにその場へと残る。
* * *
「リエン先輩──あなたは優れていた、誰もが憧れた──そんなあなたも俺が望めば手に入ると思っていた」
「ちっぽけだね──セツカ、悪いが、ぼくは君の一輪の華を演じるつもりなどない」
「──案外似ているんだよ、リエン先輩、俺たちは──」
「挑発にしては──薄いな、セツカ」
「そうか?──欲するものはなんだって手に入った──リエン先輩、あんたの人生もそうだったんだろ?だから、大罪人だけを欲していた──」
「セツカ、それを言うために──クウドにその魂を売って、ぼくのまえに現れたというのか?」
「別にセカイに魂を売ろうが──悪魔に魂を売ろうが──あなたを惚れさせるような黒魔術が手に入る訳でもない──」
「──」
だったらなぜという無言の圧のある目線をリエンがセツカに送る。
「初めは──興味だった、最後は──未練」
セツカはリエンにその言葉を返した訳じゃない様に小さく呟くように──
「リエン先輩──勝負をしよう」
セツカの右手に刀が握られている。
「演じよう──セツカ、君の望む“悪役”を──」
リエンの右手にレイピアが握られる。
「リエン先輩──あなたの夢を──理想を俺が壊す」
少し寂しそうに、そんな覚悟のある目をセツカがリエンへ向ける。
「“望め”ば手に入る──あなたを止めるため、俺は今日、“鬼”になる」
セツカはそう刀を持つ右腕を横に突き出す。
セツカから流れ出る魔力が風が渦巻くように刀の刃に纏わりつくように──
その刀の刃は──鬼の金棒のような巨大な刃へと形を変える。




