【僕も──守るんだよ】
「いったい──何しに来たのさ」
カオスの前に成すすべ無く倒れるミリス。
そんな様子を哀れむように、どこか気がさすようにそんなミリスを眺めるカオス。
「僕も──守るんだよ──」
「だから、その様で何をだよ」
「父君様はね、僕たちの代わりに世界の均等を守ってくれていたよ」
ミリスは倒れた身体を両手で懸命に起こしながら──
「おかあさんはね、婦警さんって言ってね、街の平和と家族の両方を守るそれは大変なお仕事なんだ──」
「だからさっ──ボクにはそんな話は関係無いんだよ」
「トウカはね──友達を、家族をね──守るんだ、それにね──」
ミリスはただ、身内の自慢話をカオスへと聞かせるように──にししと笑い。
「僕を守ると言ってくれたよ」
「だからさっ、それが今のミリスとなんの関係があるのさっそんなぼろぼろでっ」
「──そんなトウカたちが守る世界を僕は創るんだよ、それは僕らの仕事さ、カオス」
「煩い──ウルさい、これが結果だよ──セカイが壊れ、そしてミリスにも手が負えないほどボクの暴走は止まらない──」
「どうしてだい?」
「わかるだろ──そんなぼろぼろで、ボクを止められないくせに──ボクが苦しんでいる間、ミリスだけ──そんなセカイは──」
「カオス、僕はね──させない──と言っているよ」
「だから──その状況で、どうするんだよ、今の君にボクは止められない、セカイは混沌に偏った──それは、ミリスが守ろうとしている人間が選んだ選択なんだよ」
「噛みしめていたのさ──最初で最後の“記憶”だよ──ねぇ、カオス」
「なんだよっ」
そんなミリスの顔を見つめたカオスの表情が一気に固まる。
「ミリス──?」
にししと笑いながら、涙を流すミリスの顔。
「ごめん──ミリス、痛かった?」
そんな初めて見たミリスの表情にカオスは戸惑うように──今までミリスにした行為を今さら謝罪する。
「──知るんじゃなかったよ、こんなにも辛いなんて知らなかったんだ」
「ミリス──」
「──ずっと、ずっと一緒に居たかったよ──でも、これからはカオスと僕がトウカとおかあさんの守る世界を守るからね──はぅっ」
次の瞬間──赤黒い瘴気の魔力を帯びた黒い鎖がミリスの身体を貫通する。
「ミリスーーーっ」
そんなミリスを心配するようにカオスが叫び、駆け寄ろうとする。
「──うっ、なんだよコレ」
ミリスを貫通した鎖と同じものがいつの間にか自分の手足を拘束している。
「まったく──せいぜい、身内の処分くらいお前らで済まさせるつもりだったが──見た目通りにガキのようだな」
「クウド──おまえっ」
カオスがドアを開け入ってきた男を睨む。
「うぅ──君が催稀クウド──かい?」
「セカイは壊れる──そこに白竜など不要だ」
「やっぱり、初めて君をトウカの通う学校とやらで見た時の僕の直感は正しかったみたいだね」
「──どうだ、白竜、お前も俺と同じように世界に紛れて精々、楽しんだのだろう?セカイが壊れるとも知らず実に馬鹿な生き物だと思わなかったか?」
「クウド、お前はその一人だろ」
カオスが繋がれた鎖を両手を大きく揺さぶり引きちぎろうとするがそれは叶わない。
「あぁ──紛れもなく、馬鹿な生物の一人だ」
「なら、どうして──世界を壊したいなんて思うんだい?」
「──意味がない」
「意味が?どういう意味だ」
カオスがその意味に意味を尋ねる。
「──その回答に答える“意味”もないな」
そして、クウドはそれをも拒絶する。
「それを聞いてどうする?俺を改心でもさせるのか?それこそ“意味”がない──」
「意味もなく世界を壊すと言うのかい?」
「あぁ、そうさ──そこに結果がある」
「来るなっ──何をするつもりだっ」
拘束されるカオスへと近づくクウド。
「カオス──お前にその瘴気は相応しくない」
「ぐ──やだ、やめろっ」
「カオス──?」
クウドの右手がカオスの腹部を突き破るように右手でカオスの身体の中をまさぐる。
「──それをどうするつもりだい?君が、人間がそれを扱えると思っているのかい?」
クウドが何をしようとしているのか──ミリスも表情を曇らせその様子を見ている。
「俺が今日までの間、本気で──教師として人生を謳歌していたとでも思うか──俺はこの能力であらゆる魔力に干渉してきた──無論、カオス──その瘴気にもな」
「何言って──」
「──もう、俺の瘴気だ──お前は用済みだ、ゆっくりと壊れろ」
「カオスッ」
「ミリス──ボク──も──ズルいよ──次は──ボクのことも──連れてってよ」
カオスはその生命ともなる核を抜き取られながらも──
先までのミリスとの会話を思い出すように──
そこに、ボクも混ぜてと願う。
「カオス──?」
鎖に繋がれたカオスは、その場に倒れることも許されず──
核を奪われ、そのままがくりと項垂れている。
「クウド──君は愚かだね?」
「はっぐ──っ」
クウドがミリスの方に右手をかざすと──
ミリスの身体が激しく後方へ吹き飛ぶ。
「なるほど──これが」
クウドは自分の身体に取り込み試した力を実感するように右のてのひらを眺める。
同時に──この部屋に張り巡らせていた鎖が消えていく。
「──この核の瘴気が大きすぎるが故に俺の力は共有できないのか」
鎖の支えを失ったカオスが倒れる。
「セカイは壊れる、いや──この俺が壊す」
「だめだよ──そんな事は許さないよ」
ミリスが足を震わせるように立っている。
「混沌を制御する、白竜か──少しは警戒していたが、“恐れる”程のものでもなかったな」
クウドは右手をミリスの方へと突き出す。
「がおーーーーっ、僕はそれはそれは恐ろしい白竜だよ、いつだって腹ペコだよ、君なんてぺろりと食べてしまうよ」
にししと強がりのようにミリスは笑う。
「壊れろっ」
「はぐぅっ」
クウドがそう一言つぶやくと──
ミリスの身体に風穴が空くように後ろに吹き飛ぶ。




