【努力《あたし》に運はいらない】
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「リヴィアちゃんは可愛いのに──」
それはまだ小学生くらいの記憶。
「身長は皆より少し大きいけど、容姿とかスタイルは全然私敵わないもん」
クラスメイトの女子はそうあたしのことを褒めてくれる。
日本人と外国人のハーフ。
もちろん、可愛いと言われて嬉しかった。
それでも──あたしにはそんな生き方は選べなかった。
「ひー、やめろよ、化け物おんなーっ」
友達に意地悪をしていた男子生徒。
昔から言葉で理解しあうことは苦手だった。
だから、いつも言葉よりも先に──
胸ぐらをつかみ、自分より身長の低い男子生徒の身体を持ち上げる。
「ありがとう、リヴィアちゃん」
そう、友達はあたしに感謝をする。
──だから可愛いはいらない。
努力に可愛いは似合わない。
年を取れば女という枷は嫌でもでてくる。
だから──あとは根性だ。
前だけを見る。
それが、あたしの“守り”方だ。
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「こんじょーーーーっ」
激しい爆発──
ぼろぼろになる衣服、少し焦げたようにその綺麗な褐色の肌が焼け跡を残している。
魔力のほとんど消耗しきった身体、それでも次の木箱を探す様に瞳を泳がせる。
「──リヴィア、今、俺があんたを止める言葉を送ろうとそれは届かないのだろうな──いや、違うな、リヴィア、俺はお前のその生き方を変えたくない」
リヴィアには届かないような声でエルジナが呟く。
エルジナ自身、ナイフにより斬られた首、爆破による攻撃でだいぶ体力も魔力も消耗している。
「リヴィア──俺にできるのはそのサイコロの目を変えてやることくらいだ──」
エルジナは──少し考えこむように周囲を見渡し──
「床に溶けるように消える、木箱を爆破──」
目線を資料の詰まった棚へと移す。
「──俺に首元を切られた時はあそこから」
目線を下に落とし、自分の右の首筋をおさえる。
「俺の背後、リヴィアの背後から姿を現し──不意をついた」
「こーーんじょーーーーっ」
ドーーーンッと“また”はずれを引くように──リヴィアは爆破に巻き込まれ、さすがにその身をふらつかせるように身体をくらくらと揺らしている。
「あたりとはずれの──確率は──そのギャンブルはこちらに分があるのか?」
エルジナはひとつの答えにたどり着いたように──
再び目線を泳がせ──その木箱──安全そうなもの“影”を探す。
そして、再び自分の真下に目を落とす。
「運が“尽きた”と言っていたな──ギャンブルとしてリスクを背負わない選択を取るのは“運”とは呼べないな、ガイ」
エルジナは右手に握ったサバイバルナイフを床、部屋の明かりが照らす自分の影に突き刺す。
「ぐっ──がぁっ」
エルジナの影がうごめき、重なっていたような影が別のもの影へと逃げるように動くと──
「───くそ、気づいたのか、エルジナ」
「その身を影に潜ませる──そして自身のフェイクとして爆弾を別の影に潜ませる、物を破壊し影を消せば爆破する仕組みといったところか」
「こんじょーーーっ」
「馬鹿、リヴィア──もう箱を破壊しなくていい、こっちだ──あんたは本当に後ろが見えないやつだな」
そんなエルジナとガイのやり取りに気が付かず未だに箱を破壊を続けようとするリヴィアを慌てて止める。
「──ん?」
ようやくリヴィアもガイの存在に気が付く。
「ふざけるな──俺は暗殺者、奪う側だ、コワス側だ──躊躇はしない」
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暗殺者──
もちろん、日本という場所で生計を立てていた訳じゃない。
だが、俺の家系はそんな生き方を強いられた。
──ただ、主に命じられるまま──その命を奪う。
──ある日、俺は任務で深い傷を負った。
──生死をさ迷う俺を助けてくれたのは、とある貴族のお嬢様だった。
──俺は人生でたった一度の恋をした。
──そのお嬢様に暗殺命令が出た時に俺はそれができなかった。
──その結果──パートナーであった妹が、俺たちが自分を殺しに来たと知ったそのお嬢様に刺殺された。
──そして、そのナイフは今度は俺を狙った。
──気が付けばそこに立っていたのは俺だけだった。
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「選ばれるのは──運が悪かったから──」
ガイは何かを思い返す様に──
「奪われたのは──殺せなかったから」
「殺せなかったのは──命に価値を与えたから」
ガイはナイフを強く握る。
「ガイ──お前は“選択”を間違えたんだ──」
もちろん、エルジナにはそんなガイの過去を知らない。
「ガイ、あんたは人の命を奪うばかりで、自分は命の危険のある場所には身を置こうとはしなかった」
エルジナはそんな爆弾を仕込ませた木箱の陰には身を置かずに安全だったエルジナの影に身を潜めた事を敗因と言うように──
「ふざけるな──俺が、俺自身が命の奪われる覚悟ができていなかっただと──」
再びガイが自分の“影”に姿を消す。
エルジナは右手を上げ、何かに合図を送るように──
ダンッという銃声が──
その別の物陰にたどり着く前に──その銃弾がガイ本体の影を撃ち抜く。
ガイの身体がその場に現れる。
「こんな──俺が──俺は奪う、俺がコワす──何が、勝利の確率は俺の方が──運が俺の方が上だ──何が──足りない」
「そんな“答え”なら──決まっているーーーっ」
「こんじょーーーっ!!」
振り上げたリヴィアの拳がガイにヒットするとそのまま壁にぶち当たる様に突き飛ばされる。
「すべての可能性を潰し──最後に残るのは“運”だけだ──だから、そのお前らの確率を俺が0にする──」
「だから、貴様には根性も気合も努力も足りていないと言っている」
「だから──戦場は殺すか殺されるか──その覚悟のあるものだけが」
「今のお前にその(殺される)覚悟はあるのか?」
リヴィアが確率を0にすると言ったガイを冷たく見下ろす。
「難しい言葉を並べることは苦手だ──だから、気合、努力、根性という言葉があたしは好きだ、その言葉は前だけを見ていられる──」
「“答え”はない──でも“間違い”でもない」
「そんな──言葉だけで、これまでの俺の死線を──超えることなど──」
「だったら──あたしの努力が気合が根性が、その確率をつぶーーすっ」
「貴様はその残った、ちっぽけな運に祈りでも捧げて居ろ、馬鹿者がーーっ」
拳を振り下ろそうとしたリヴィアの背後をガイが取る。
手にしていたナイフを首に突き刺そうとする。
そのナイフの先が少し首に食い込むが──左手のひらでそのナイフを握り──完全にナイフが首を貫通するのを防ぐ。
「狂人化──」
リヴィアの髪と瞳が真っ赤に染まる。
「その残った──運などあたしの拳が握りつぶすッ!!」
右腕を後ろにまわし、その手のひらでガイの頭を鷲掴む。
「ぐっ──こんじょ、ばっか──じゃ──」
そんなリヴィアの答えにガイは不満を漏らしながらも狂人化したリヴィアのフルパワーで壁に叩きつけられると──鉄の壁がガイの身体の形状にへっこみ鉄の壁が捲りあがる様に軽く穴が開いている。
ガイは白目をむくようにその場に倒れ込む。
「相変わらず、そのパワーだけは規格外だな」
「無論、根性だ──」
「まぁ──今度は少しその根性と努力を可愛さ磨きにも向けるんだな」
「──ん?」
「──ちょっとしたお節介さ、忘れろ」
エルジナはそう少し楽しそうに鼻で笑う。




