【それは“答え”であって、“正解”じゃない】
──トウカ、僕はね、偶然とか運命とかって言葉はまだよくわからないのさ。
だって、僕は世界を形作る存在であって、父君様が居なければ、父君様がそうしなければこの世界に、トウカたちに僕が触れることはなかったのだからね。
──トウカ、初めて僕たちが出会った時のことを覚えては居るかい?
僕は暴走したカオスを止めることに少し手こずっていたんだ。
そこにトウカが偶然か運命か現れたんだよ。
父君様の記憶にあった──“トウカ”という名前と君は同じだったんだよ。
トウカ、君の名前を聞いたときは──なんだか嬉しくて。
僕は意味もなく君の名前を何度も呼んでしまったよ。
トウカ、君は僕に選ばれて──僕を守ると言ってくれた。
本当はね──僕は少しずつ皆の記憶を食べようと思っていたんだよ。
僕の魔力はそれで成立しているのだからね。
でもね、トウカ──僕ね、トウカと一緒に居て少しだけわかったんだ。
父君様、おかあさん、そしてトウカの言う──“守る”が──
トウカと美味しいものを、たくさん食べたよ。
ナギサちゃんと一緒に馬鹿言っていっぱい笑ったよ。
おかあさんと一緒に、お気に入りのアニメをたくさん見たよ。
トウカとおかあさんのおうちにね、僕の部屋ができたよ。
おかあさんと、ナギサちゃんとリヴィアちゃんとトウカで遊園地というところで遊んだよ。
───トウカは“これ”が守りたかったんだね。
───あぁ、そうかこれが──“記憶”というやつなんだね。
「がおーーー、カオス、僕は怖い怖い白竜だよ──いつだって腹ペコ、カオス、君のことだってぺろりと一飲みだよ」
「アタマがイタイ──ミリス──ズルい、ズルイよ──ドウシテ、どうしてボクだけなのさ──」
「にしし──これからは“ずっと一緒”さ、なんたってね、カオス──父君様の代わりに僕たちは世界を作り守らないとならないからね」
「セカイを作る?セカイを守る?どうでもいいよ──そんなの、どうしてボクなのさ」
「どうしてもだよ──世界を守らないと、トウカやおかあさんが守れないだろ?」
「ウルサイ、ウルサイんだよ──壊す、コワしてやる、セカイもミリスの大事なものも全部──ゼンブだよ」
「そんなこと言う、カオスにはお仕置きだよ、その痛い痛い頭をボクががぶりと噛みついてあげる」
──────
「──ん?」
トウカたちとシュウたちと別行動をしていたリヴィアが──
皆と逸れてしばらくしてから、周囲を見渡し自分が一人だと気づく。
「ん──?」
リヴィアはそれに気づき少し戸惑いながらも──
逸れた理由を考えるがそれを理解できずにいる。
「根性──何事も気合いだッ」
無駄にリヴィアはそう叫ぶと一つのドアの前に立つ。
その扉の横には恐らく扉を開放するボタンが設置してある。
「根性──っ」
ドンッとリヴィアはその正拳で扉を開放する。
「──リヴィア、お前にはボタンを押して扉を開くという選択肢すらないのか?」
先にその扉の先に到着していたと思われるエルジナがリヴィアを見て言う。
「馬鹿者──ッ、エルジナ、こんなときにかくれんぼのつもりか」
リヴィアは逸れていたエルジナが自分から隠れてこの部屋に居たとでも勘違いしているように。
「──リヴィア、ほんとお前と居ることに退屈をしない」
「それで、エルジナ──他の奴らはどこへ隠れたっ」
「──逸れさせられたというよりかは、違う空間に隔離されたという方が正解か」
エルジナは部屋を見渡しながら──
「違う空間?」
「俺もこの屋敷、全部を知っている訳じゃない、とくにこの地下にあるこの施設のことなど余計にな」
「だったら、ここは何処だ、あたしを今すぐトウカたちのところへ返すんだ」
「そうしたければ──探せ、俺たちをここへ連れ込んだ敵が、その仲間が居るはずだ」
ガタリッと部屋の中にあった何かの荷物を入れている箱が揺れる。
その物音と同時にエルジナはその荷物を睨むと──
瞬時にその場所まで移動し、右手に持ったサバイバルナイフでその箱を破壊する。
何もない空の箱が破壊される。
「迂闊だね──その箱に爆破物でも入っていたのならどうする?それは愚かな選択だったと思わないか?」
高身長、細身の身体だがそれなりの筋肉。
エルジナ同様に、軍隊が着そうな迷彩のズボンを履いている。
戦場、そういった修羅場を幾度も潜り抜けていそうな雰囲気のある男。
「無論、そんなものは根性でどうにかする」
「セカイがこんなだと言うのに脳みそが平和だな──」
「──リエン様の部下ではないな、あの男の部下か?」
「ふん──すでに壊れているようなセカイをコワすなんてイカれた奴だぜ?そんな奴、意気投合するに決まってるじゃねーか」
「くだらん──実にくだらん」
「──影現ガイ──職業は暗殺者だ、人を壊すことなら得意だぜ」
「くだらん、実にくだらん──貴様の名前を言ってみろぉーーっ」
「なっ──く──まぢかよ、戦場において敵の感情をかき乱すプロなのか、ただの馬鹿か──」
ガイの少し人を見下すような表情が真顔に変わる。
「一周回って、天才だよ──」
「──ん?」
そんな呆れたように褒めるエルジナの顔をリヴィアが不思議そうに見つめ返す。
「戦場において勝つ──それは殺すか殺されるかだ」
ガイと名乗った男がリヴィアとエルジナに向かい言う。
「そのどちらもかけている奴など生き残れない」
エルジナは──もちろんそんなことは理解しているというように。
「戦場ではそれが“答え”だ」
「言われるまでもないな──」
エルジナはサバイバルナイフを構え、その覚悟を示す。
「馬鹿者──っ、それは“答え”だ」
「──はぁ?だからそう言ってるだろ、その覚悟がてめぇには欠けているって言ってるんだ」
「それは貴様の出した“答え”だ、エルジナ、お前が死ぬなどという理由ではないっ」
「──リヴィア、俺は軍人だ──その覚悟、その選択する答えを持っている」
エルジナはその覚悟を語るが──
「馬鹿者──だからそれはお前の“答え”だと言っている」
そんなリヴィアの叫びにエルジナもガイも少し不思議そうにその顔を見る。
「それは“答え”であって、“正解”などではないっ!!」
「あたしの前で死の覚悟など不要、必要なのは勝つ覚悟だっ!!」
胸の下で腕を組み、リヴィアが誇らしげに叫ぶ。




