【最初で最後の共闘】
「この場合、卑怯も正義でいいんだよな」
シュウが皆と逸れて一人辿り着いた部屋。
ゲンという20代半ばくらいの筋肉質の男。
そんな男にシュウが拳を叩きつけ──さらに拳を叩きつけ返されたところに、ゲンの背から不意打ちのようにスバルがバタフライナイフを突き刺し、確認をとるように言葉にする。
「名を──聞こうっ」
いちいち声のでかい台詞にスバルも少し耳障りそうに嫌な顔をしながら──
「卑狭スバル──覚える必要ないぜ」
「スバル──その卑怯を正義と主張したいのなら──足らんぞ、お前には俺やシュウのような筋肉が全く足りていないッ」
「あぁーーーーーーーーいっ」
「くだらないくらいに単細胞な奴は好きだぜ」
「ぱぁーーーーーんちっ!!」
単純な暴力──スバルはその一撃をそのバタフライナイフで受け止めるが──
「ぐっ──くっ──」
自分の能力を過信するように、少し余裕そうに構えていたスバルの身体がその衝撃に耐えられないように地面を転げまわる。
「──シュウ先輩みたいに、まぢで単純な脳筋野郎か、魔力なんてものに頼ってないのかよ」
「るせぇーぞ、スバル──俺をあんな脳筋バカと一緒にするな──俺はただ、邪魔する奴をぶん殴る──」
「来るか、シュウ──お前の拳には筋肉を感じる──来い、受けて立つ」
「どいつもこいつもうるせぇーーーんだよっ」
シュウが少し苛立つように拳を構え──地面を蹴り上げ一気にゲンとの距離を縮める。
「「最後まで、立っていた── 方が勝者なんだよっ 」
者が正義だッ!! 」
シュウとゲンの互いの拳が互いの頬を捉える。
「あーーーーーいっ」
互いにその拳の威力に後ろに吹き飛ばされるも──
ゲンはその場で踏ん張り耐えるように──
雄たけびをあげるように天井に向かい文字通りに愛を叫ぶ。
「相思相愛だな、先輩──」
「スバル──まぢ、てめぇからぶっ殺す」
「遠慮する──俺、無駄は嫌いなんスよ──いいだろ、卑怯に二対一で、最後まで立っていれば、正義なんだろ」
「って言っても、単純な暴力の前じゃ、お前のそのよくわかんねー卑怯な能力は使えねぇんだろ?」
「──ほんとそう、先輩同様に利用価値のない暴力には──能力は対応できない──でも、卑怯は卑怯なりに正義とやらを演じてやるよ」
「さぁ──来いっ──二人同時にその正義をぶつけてこいっ」
ゲンはただ、右腕に力をためるように肘を背の後ろまで引いて構える。
「だってさ──同時に攻めるぜ、先輩」
「るせぇー、俺は俺でやる、スバル──てめぇはてめぇで勝手にやれ」
「あーーーーーーーーーいっ」
そんなやり取りを聞かず、ゲンはただ拳にパワーを溜めるように、室内に響き渡る声をあげる。
「いいから──行けって先輩ッ!」
同時に動いた、シュウとスバルだったが、スバルだけがその動きを緩め──
「スバル──てめぇ」
そんなシュウの背中を左手でドンと押し込み──
自分の代わりにシュウを特攻させる。
シュウとゲンが互いの拳をぶつけ合うが──
シュウが単純に力負けさせられたように、後方へと吹き飛ばされる。
「あっぶね──」
そんな自分の身体に向かって吹っ飛んできたシュウを受け止めるわけもなく、スバルは回避する。
「──脳筋とはいえ、能力者として戦っている以上は──(魔力は)、0ではない」
スバルはシュウを殴り飛ばしたゲンの右腕にナイフの先をマッチ棒のように擦り付けるように動かしながら──そのバタフライナイフをゲンの身体へと突き刺す。
「演じよう──俺の卑怯を──」
ドンッと強い衝撃がゲンを襲う。
「正義の証明──愛を届けるのに何が必要か──」
ゲンは吹き飛ばされた身体を両足の足の裏で床を引きづるようにそれを耐え凌ぎながら──
仲間を仲間と思わないそんなスバルの戦い方。
「スバル──俺はお前の言う正義を何人も見てきた──」
今まで同様の声の大きさで──だけどどこか、スバルを睨むように──
「現にお前のようなものが勝者になるセカイ──努力も愛も踏みねじるだけの醜さと力を持つものだけが──俺の俺たちの筋肉はそれを修正するためにある、そうだなシュウッ」
「いや──先輩、あんたは今、俺の味方じゃねーのかよ」
「くそ──だから、俺はあんな奴と一緒にするな、そして──今、俺を突き飛ばした卑怯者も俺の味方面してんじゃねーぞ」
「──俺らの共闘なんてのはこれくらいが丁度いいだろ、先輩──」
「だから、てめぇは一人で勝手にやってろと言ってるだろ」
「そう、だから勝手にやってるよ──」
「セカイは強気者の言葉で正される──それで正義が決められる──」
その言葉は誰に向けられているのか──
「そんな暴力を壊すにはより強い、正義が必要だ」
「うるせぇーって言ってるだろ──別に誰かのために誰かに言われて俺は拳を振るうんじゃねー……ただ負けねぇためにだ、俺の暴力なんてものは、ただそれだけと、ムカつくやつを殴るためだけにあるんだよっ」
「負けなければ──その暴力が正義として証明される、シュウ──それが俺の言う正義と何が違う?」
「俺は友のためにそれを証明する──正義のためでも世界のためとか関係ねぇよ──だから、俺の暴力は負けないための証明だ」
「──愛、愛だ、シュウ──やはり君は素晴らしい、その筋肉もその思想──」
「言うことなすこと、勝手な解釈で絶賛すんじゃねーよ」
「どうでもいいけどさ──さっきから会話の内容に、愛やらなにやらたくさん出てくる割に、その会話の中身に女っ気がひとつもないけど大丈夫か?」
スバルがただ一人、要らぬ心配をしている。
「そうだな──」
「くっ──」
ドンッと強い衝撃音が響く。
咄嗟に構えるがゲンの拳にスバルの身体が吹き飛ばされる。
「スバル──君はその筋肉もその正義の主張もどれも相応しくない──」
「俺もあんたに微塵の興味もない──先輩のケツが欲しいならくれてやる」
「スバル、やっぱりてめぇからぶっ殺す」
「──はいはい、今は目の前の敵に集中しろよ、先輩──あのパワーをどう上回るか──」
「──俺がゲンをぶん殴る、それで十分だ」
「それだけじゃ、ダメだと言ってるんだろ──いいぜ、その辺は俺が補うしかないか、お互い腹決めようぜ、先輩──最初で最後の共闘だ」
「るせぇー、ゲンをぶっ飛ばした後はスバル、てめぇをぶん殴る」
「よしよし、その調子──それじゃそのためにも目の前の敵をまずぶっ飛ばそうぜ先輩」
「あぁーーーーーーーいっ」
すでに気合の溜めに入っているゲン。
「待てよ──やっぱ今、俺のこと殴っていいぜ、先輩」
何かを思いついたようにスバルは懸命に拒絶していたその行為を自ら受け入れる言葉をシュウへ送る。




