【不幸でも、幸せを拒絶してる訳じゃない】
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──今のあなたの成功がノゾミのおかげとまでは言わない。
──それでもあなたが、素顔のまま、成功せず頑張っていたあの頃から。
──いまの皮を被り、配信業へと路線を変更し成功を収めるまで──
──あなたの成功だけを祈ってきた。それを邪魔するものを呪ってきた。
──ねぇ、アインシュルク様。
──今のあなたはあのときのように──
──今のノゾミを見て、可愛いねと頭を撫でてくれる?
──あの日、あの時のあなたはそこに居ますか?
──人を呪わば穴二つ。
──ノゾミは自分を呪い、あなたを呪わずに居ることはできる?
──あなたの幸せを祈ったのに、私はあなたの幸せを呪わずにはいられない。
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「おい──サイカ、こんな時にスマホ眺めてんだ」
実際に左足を痛めたように膝をつきながらも、左手で何やら画面を確認している。
「ナギサ、最近──アインシュルクという配信者の動画は確認している?」
「いや──トウカが嫉妬するから最近は──」
実際にはトウカは関係ないだろうが、ナギサがサイカの問いへそう答える。
「──数日前から活動を休止している、そして体の不調を訴えていると」
サイカがそうナギサに伝えながら目線をノゾミとその手に持っているヌイグルミを見る。
「本当に、推しを呪ってまで私たちに攻撃してるって言うのかよ──」
「どうせ──セカイは壊れる、だから──ノゾミが壊してあげるの」
「手に入らないなら、壊したい──誰かの物になるくらいなら壊したい的な発想か?」
ナギサがノゾミを見る。
「なるほど──確かにナギサらしい発想ですね」
「今のは私の話じゃねっての──」
サイカの方を見ずにナギサが叫ぶ。
「行き過ぎた愛情は裏返しになる──」
「愛情の裏返しという割にはそれこそ行き過ぎだろ──」
「セカイはね、コワレるの──ノゾミはね、コワれたの──呪いがね、“それ”を“コワ”したの」
「あーー、不幸だ──私もそうやって生きてきた、でもわがままは言うし、欲しいものは欲しいと言う──自分が不幸だったから、トウカとも出会えたと思う」
「それは、裏を返せば幸せだった──のではないですか、ナギサ」
そう、サイカが左足をおさえ、少し苦しそうな表情で返す。
「でも、それを認めたら不幸じゃないだろ──」
「ナギサ──さすがに私にも理解ができませんが──」
「そういうことだ──不幸を誰かに理解されてたまるかって話だ、そんな不幸を肯定されても否定されても──慰められても貶されても、不幸は何も変わらない──不幸は私のままだ」
「──いいこと、かっこいいことでも言ったつもりですか、ナギサ?」
「んだよ──いいだろ、たまには私だって自分語りするくらい」
「70点──あげましょう」
「なんだよ、人を褒めるなら100点か90点くらいつけろ、貶すならもっと低い点をつけろ」
「あら、私がリエン様以外の言葉で50点以上つけるのは初めてですけど」
「ウルさいなぁ、コワれるの、だから──ぜんぶ──幸福も不幸も全部コワれる、だから──」
「壊れるから呪う──私には理解できませんが」
「理解したとは言わないけど、私は不幸だからと──そう自分を守ってきた、ノゾミは呪うことで自分の周囲の幸せを願ってきた──」
「──それで?」
少しだけ興味深そうにサイカがナギサに瞳を向ける。
「呪うことしか方法を知らない──だから、それが壊れると言われても、呪う以外に何をしていいのかわからない──」
「それを壊したくないのに、暴走した自分を止めるにはそれを壊すしかないってことですか?」
「──正解かは、わからないけど──私が不幸としてしか生きられないと同様に」
「彼女は呪うことでしか生きられない、救いたい人すら呪い壊さずにいられないということですか?」
「ウルさい──ウルさい──ノゾミのこと知ったようなこと言うなっ──コワれるの、ノゾミが不幸になればあの人は幸せになる、でも──幸福を得たあの人のセカイでは、ノゾミが想うあの人はコワれてしまう」
「そうですね──たぶん、あなたの言うその人は、あなたがその幸福の下でどれだけ苦労しようと、それに気づかず感謝もしないのでしょう」
「だから──コワすの、セカイもね、どうせコワれる──だから──」
「呪いあれ──」
ノゾミの周りの瘴気のような霧がいくつもの杭のような形を作り──
その場に居る人、物を無差別に攻撃始める。
「くっ──」
「っ──これは少し厄介ですね」
ナギサ、サイカ、もちろんノゾミの体をもその杭が突き刺さり、その突き刺さる杭の威力自体は今までの能力者の攻撃からすればそこまで高いものではない。
だが、杭の刺さった個所が呪いに蝕まれるように──継続する痛み、怠さのようなものが襲う。
「アブラカタブラ──」
ナギサは左手に持ったペットボトルの水を頭の天辺から浴びながら──
「人生、私生活において使い道が無かったけど、言ってみたかったランキングに入っている言葉の一つだ」
ナギサはそう言いながら──全身に水を伝わせ、その水に自分の魔力を宿す。
そんなノゾミの魔力を浄化させるように──なんとか自分の体が自分の意志に従うくらいまで復活させる。
「私だって──異性にぎゅっとくらいしてもらいたいこともある」
「私は不幸でも──幸せを拒絶してる訳じゃないからな」
ナギサは自分の魔力で多少、自由を取り戻しながらも、その呪いに蝕まれる体を少し動かしにくそうに、その場で軽く飛び跳ねながらノゾミを見る。




