【あなたの幸福は私の呪い】
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──画面越しのアナタは輝いて見えたの。
──アナタの幸せを願って、その背中を見送ったはずなのに──
──いつか、アナタの幸せは──ノゾミの呪いになったんだ──
『ノゾミ、いい加減にしなさいっ──今日こそは学校へ行きなさいッ』
──そんなお母さんのいつもの叫び声に──
──私はカーテンを完全に閉め、電気もつけない朝か夜かもわからない真っ暗な部屋で──PCの置いてある机の前の椅子に座り、シャツと下着だけの姿、その頭にベッドの上に合った、かけ布団を頭の上からかぶり──PCの明かりだけに照らされながら、マウスをカチカチといじっている。
──皆、皆──キライ。
──大嫌い。
──誰もノゾミの痛みをわかってくれない。
──誰もノゾミを助けてくれない。
──呪え、呪え、皆──皆──呪ってやる。
──いったい、どれだけの幸福を呪えばいいのだろうか。
──人を呪わば穴二つ。
──それだけの呪いは、この身に戻った時にどうなってしまうのだろうか。
──全く売れていなかった、元、アイドル志望のノゾミの推しは──
──今は配信者として──活躍している。
──ずっとずっと──前に──アインシュルクになる前のアナタに──
──真っ黒なワンピース、真っ黒なリボン──勇気を出して飛び出した。
──そんな、ほとんど誰も居ない握手会で──
──可愛いねと、頭を撫でてくれた──あなたのてのひら、そんなあなたの幸せをただ願ったの。
──でも、だめ──幸福を願えば、穴二つ──
──あの手は、ノゾミのモノだったのに。
──あの笑顔はノゾミのモノだったのに──
──あなたの幸福はノゾミを呪う──
─────
「“あの方”が幸せになるのならと──ノゾミはあの方の周りの人間を恨み──呪い──ただ、幸せを願った」
「──駄目だ、右手──動かねぇ、なんでノゾミは動かせてるんだ?」
「──自分の能力である呪いへの耐性、もしくは──クウド、あの男に他の者みたいに特殊な力を植え付けられている──推測でしかありませんが」
「このまま──アインシュルク様が手足全部クイ打たれたら私ら動けなくなるんじゃないのか?」
「──なんでヌイグルミを返したのですか、ナギサ」
「ふざけんな──返せと言ったのはサイカだぞッ」
「いずれにしても──あの能力の使用には、多くの魔力、そして──発動条件には相手への“恨み”のようなものが先ほどから見受けられます」
「──確かに、会話が感情的になった時と、ノゾミに攻撃を加えた時に能力を使っている気もするな、でも攻撃ができないと積みじゃん」
──そんなナギサの言葉を聞いているのか、サイカはノゾミを観察するように鋭い目で見つめる。
「もう一撃、加えます──いきますよ、ナギサ」
「おい、今の私の話を聞いていたのかよ、サイカ──」
「──確かめたいことがあるんです、どちらにしても、このまま黙ってても相手に一方的にやられるだけです、ナギサ」
「キライ──キライ、まだ、ノゾミを虐める──ドウセ──セカイはコワレるんだよ──だからね、ノゾミが幸福を願って上がる、ノゾミが幸せを願えば、ぜーんぶ呪われる──」
「アイスメイク、アイススレッジハンマー」
サイカの左手にハンマーが握られる。
「水蛇──ッ」
左手に持ったペッドボトルの水を宙にぶちまけると──
水蛇の尾の部分を自分の左手に巻き付かせ、頭の部分をノゾミの左手に絡ませると──グンッとその円状に振り回す様に、サイカの方へとノゾミの身体を投げ飛ばす。
ガンッ──と振り回したサイカのアイスハンマーがノゾミの身体にヒットすると、近くの柱にその身体が叩きつけられる。
「キライ、キライ──ドウシテ、ノゾミを虐める──」
「──やっぱり」
ふらつくように起き上がるノゾミをサイカが見てそう呟くように言う。
「やっぱりって──?」
「サイカ、ノゾミのやつ、呪われた右手も動くし──ノゾミの奴、さっきから一度も“痛い”という言葉を吐いてない、呪いもダメージも受けてないんじゃないか?」
「──ふーん、意外と賢い、いや、勘だけは鋭いですね、ナギサ」
「でも──回答としては40点」
「人の褒め方としては40点だ、サイカ──まぁいい、教えてよ」
「痛み“を”感じていないんです──」
「ん──なんで、40点だったんだよ」
「言い方を変えましょう──痛み“だけを”感じていないんです」
「──痛覚はないけど、ダメージは受けてるってことか?」
「そうなりますね──」
「でも──それがわかって、あの能力を攻略できるのか?」
「人を呪わば穴二つ──彼女はその呪いの中動けてはいますが、その呪いは彼女の身体に蓄積されている──」
「──おい、まさか、私らを呪わせてノゾミを自滅させるなんて言うつもりかよ、サイカ」
「──不幸自慢なら負けないんじゃなくて、ナギサ?」
「──不幸と呪いは何一つかかってないだろ──あぁ、不幸だ」
「──セカイがね、コワレるんだよ──ねぇ、アナタは今幸せですか──アインシュルク様」
「くっ──ッ」
ダンっとクイでアインシュルクのヌイグルミの左足に打ち付ける。
サイカが左膝を押さえるように膝をつくと、自由な左手でその足を押さえる。
「あはは、あははぁ──あと幾つ呪えばあなたは幸せになりますか?あと幾つ呪えば──あなたは──もう一度ノゾミの頭を撫でて、微笑んでくれますかぁ」
「あは、あは──ねぇ、もうすぐ──もうすぐコワれるよ、でもその前に、ノゾミがぜーんぶ呪ってあげるね」
アインシュルクのヌイグルミを両手で掴み頭上に掲げ、ノゾミは作り笑顔を作る様にアインシュルクのヌイグルミに話しかける。




