【世界に呪いあれ】
リエン邸──現在地がどの辺りなのか正直、見当もつかない。
外見はあまり日本には似つかない、ヨーロッパ風の少し裕福な豪邸──くらいに見えたが、今はおそらく建物の下、地中をさ迷っている。
そして、先ほど利用したエレベーターとは別のエレベーターで何処かへと昇っている。
──状況が状況、空があんな中で世界がどうとか言っている中ということもあるが、少し前まで敵対していた中──少し気まずい空気。
「───トウカ、お腹が空いた」
そんな沈黙をリヴィが終わらせるが──
俺はただ──ぽかんと口を開け、そんなリヴィの顔をただ眺める。
「先ほど、トウカの家でご馳走されたオムライスだが──あたしのは少し小さかった──」
「そうか──悪かったな──」
興味なさそうにうつ向いていたエルジナさん。
ガサガサとポケットをいじっている。
「──食え」
携帯栄養食のようなものをリヴィへと差し出す。
「え──?」
そんなエルジナさんがリヴィの方を見ず差し出された手にリヴィも少し戸惑っている。
「戦場に置いて、常に体のコンディションは完全にしておけ、空腹なんてものはもってのほかだ──」
「あ、あぁ、ありがとう──」
「──ん」
リヴィの有難うにエルジナさんが少し反応する。
そして、エレベーターが目的地に到着すると開くドア。
無言で降りていくリエンたちに続いてエルジナさんも続いて行く。
「──トウカ」
「どした、ナギサ?」
「あの人、リヴィアのこと、大好きだよな?」
「──たぶん」
返答しようか悩んだが、俺はそう呟くようにエレベーターを降りる。
しばらく──通路を道なりに進んでいくと──
進路は二手に分かれている。
「サイカ、エルジナ、スバル──君たちは左へ進め──恐らく先にクウドが居る、ぼくが行くまであいつをどうにか食い止めてほしい」
「リエン様、あんたは?」
エルジナが逆、右の通路に向かうリエンの背中に尋ねる。
「トウカ君──君はこっちだ」
そして、エルジナさんではなく俺に呼びかける。
「リエン様、私も一緒に──」
「トウカ、わ──私も一緒に行くぞ」
サイカがリエンにナギサが俺の後に続くように──
「──トウカくん、ぼくたちは──今から世界の運命に直結するそんな言葉が過言ではない選択をすることになる──それはぼくがこれまで、一番大切にしていたものを手放さなければならないのかもしれない──」
「──そんな場所に、どうして俺が──」
「──“それ”は、トウカくん──ぼくと君の“因縁”だからだよ──」
「トウカくん、私は──ミリスちゃんを先に探しに行くね」
ユイ、シュウ、リヴィは、エルジナさんとスバルと一緒に左の通路へと向かう。
「──無理はするなよ」
「馬鹿にするな、トウカ──お前が来る頃にはあんな野郎、俺がぶん殴ってノしといてやる」
「気合──根性、そして──当然だーッ」
そんな俺の不安に力強く返答する、シュウとリヴィ。
そんなユイたちと別れ、俺とリエン、ナギサとサイカは右の通路を進んでいく。
──少しだけ開けた場所へと出る。
「ひ、ひひ、いひひひ──」
「びくぅっ──な、なんだ?」
さらにその奥の部屋へ目指していたところ──
不意に部屋の隅から声がする。
そんな、全員の心境をナギサが言葉にするが、
俺ももちろん、リエン以外、サイカも驚く表情を隠せずにいる。
案外、リエンも得意の演技で平然を保っているだけなのかもしれない。
メイド服のような黒いワンピースのような服、黒い長い髪。
前髪がきれいに切りそろえ、黒い大きなリボンが頭についている。
ゴスロリ──という奴だろうか。
手には何やらアイドルなのかわからないが、男性のデフォルメされたような人形を大事そうに抱えている。
目の下にはおおきなクマをつくり──
ネコ目のような瞳でこちらを見ている。
「セカイがね、セカイがコワレるんだよ?」
「──リエン様、どうかお先に」
「──トウカ、行け──」
「ナギサ、大丈夫なのか──」
ノウムさんのこと──あんなことの後。
「任せろ──でも、後でまたぎゅっとしてもいいぞ」
「──トウカくん、行くぞ」
答えを待たず、リエンが先を歩く。
そのあとを追う。
─────
「このセカイはね──ノゾミを幸せにしないんだって──だからね──」
ノゾミ──恐らく目の前のゴスロリの格好をする黒髪の女性。
「あの──ヌイグルミ──アインシュルク様──」
ナギサの目線がノゾミが持つ男のヌイグルミに向く。
「えーー、あなた、アインシュルク様を知っているの?」
「──あ、私の推しだからな、今は二番目だけど──」
「へぇ、一応聞かせてもらうと一番目は誰でしょう?」
「──後でぎゅっとしてもらうんだよ」
「なるほど──」
誰かを見るようにサイカは通路の奥を眺めながら──
「ナニ──ノゾミのアインシュルク様だけど──」
「なにが──自分のだよ、私の一番嫌いなタイプの同種かも──」
「何してるんですか──同種なら仲良くなる場面だったんじゃないんですか?」
「まぁ──確かにアインシュルクはリエン様に少しだけ似ていて、気にはなっていましたが──私の王子様がダントツです」
「ナニ──ナニ──オマエらに呪いあれ──」
「いつの時代のだよ──ってさみぃ」
「──悪いですが、リエン様のために──退場、してもらえるでしょうか」
「──コワれろ、──コワれろ、リア充なんて嫌い──大嫌い──」
「あーー、不幸だ──……ってさみぃし」
冷気が部屋を満たしていく。
白い息をナギサは吐きながらも──ナギサは目の前のノゾミという女を見つめその能力に警戒する。




