【その評価に見返りを】
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──見返りを求めるだけに評価を与えるなど簡単だ。
──だが、その評価に価値を与えるのは俺には難しい。
──そして、そんな価値のある評価を持つものは不誠実にそれを評価する。
──見返りを求めるために、その評価に値しない評価を人はし続けている。
──あの日、俺は何ができた。
──悔いたところで何も変わらない。
──でも評価が欲しかったんだ。
──そんな、自分を貶められる言葉が──
──そんな俺を君はどう評価する、言日岐 カリンちゃん。
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ガコッ──とエレベーター内が小さく揺れると。
ドアが開く。
リエンが先導を切るようにそのエレベーターの外へ向かう。
サイカ、スバル、エルジナが続く。
その後ろを俺たちが続いて歩く。
リエンがその先の部屋。
機械室のような場所で足を止めている。
結果、続く俺たちもその後ろに立ち止まる。
「君のようなモノを配下に持った覚えは無いが──」
その先の男に、リエンが言葉を放つ。
「俺は、クウド様の命でここにいる──」
50代、いや──60代くらいとも思える、白髪頭の高齢の男。
「まったく──この俺の“評価”は白も黒にできるというのに──クソ、あんなクソガキごときに──不玄 ロッカクだ、そんな俺様を高く評価しろよ、煩理リエン」
「花も無ければ芸もないな──不玄ロッカク──」
リエンはそんな目の前の高齢の男をつまらなそうに、目すら合わせずに言う。
「俺の言いなりになるなら、いい思いをさせてやるぞ、リエン──お前は俺好みに美しい」
「演じよう──それは“富”、目の前の、野原に汚れを持ち込んだ害虫を貫けッ」
「──この俺様は、“そいつ”に“見返り”を求める──貴様はその暴力の対価にこの俺に何を支払うリエン?」
「──ならば、この言葉を贈ろう、“さっさとぼくの前から消え去れ”──ぼくの目の前に居ることすら不愉快だ」
「──その“条件”は飲めない、“不成”立だ──リエン」
リエンの作り出した武器の刃がロッカクという男に届く前に消滅する。
「──くだらないね、先を急ぐ」
リエンは構わずその先へと向かう。
「ここを通りたいのかね、リエン──ならば、この俺様の──」
「演じよう──それは“名声”、ぼくに触れるなッ」
「ぐぁっ」
リエンが手にしたレイピアが通りすがりにロッカクを弾き飛ばす。
「──小娘が、生意気に──いいか、この俺様に逆らうということが──リエン、貴様らは“この先”へ通さない、この俺がそう評価する」
防犯システム──
魔力の電力のバリアーがその先の入り口を塞いでいる。
もともとは煩理リエンの邸の防衛システム。
その効果、無理に通ろうとすればどうなるかは、リエン自身がよくしっているのだろう。
「──“開錠”しろ」
そのバリアーにカリンが透明な刀の刃を突き刺す。
「んぁ──そこの眼鏡の小娘、なんだその能力は」
道を塞いでいたバリアーを透明な刃が消し去る。
「くっ──」
「大丈夫か、カリン──」
俺は一瞬、顔を辛そうにゆがませたカリンへと言う。
「平気だ、だが──こいつも、そのクウドという男の仕業かは知らないが、あの触手のような化け物になっていた連中同様に負の魔力とやらで魔力を強化しているのだろう──そう長くは私の能力でここを開いてはいられない、トウカ君、君たちは先へ急げ」
「カリン──お前一人じゃ」
「──トウカくん、私を見くびるな──それにこの先にもまだ何が居るかもわからない、私一人でいい──」
「言日岐──カリンと言ったか、感謝しよう──」
そうリエンはカリンへ告げるとその先へと進む。
その後ろをサイカたちが続く。
「おいっ──トウカッ」
少し先からナギサが俺の方へと振り返る。
「行け、私の能力が通じている間に──」
その限界が近いことを知るように──置いて行けず悩んでいた俺の肩の後ろを少し強引に押すようにそのバリアーが発生する装置の奥へと押し込む。
「──トウカくん、あのエルジナという女性の言葉、覚えているな──この先にも犠牲者はきっとでるのだろう」
俺とカリンの間を隔てる様に何重もの火花のようなバリアーが進路を塞ぐ。
「──それでも、君が背負い続ける必要はない、背負えばその罪や罰は君への処罰ではない、君への汚れになる──それは君の正しさを鈍らせる」
「カリンッ」
「行け──トウカくん、君には守るべきものがあるのだろ、私だけにかまっている暇はないはずだ」
「カリン──絶対にまた後で──この先で待ってるからな」
「──あぁ、わかった」
そんな俺の背中にカリンが告げると──俺に背を向ける。
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「さて、お別れはすんだか──小娘、そうだ──まずは名前を聞いておこう」
「──言日岐 カリンだ、覚える必要はない」
「──どうだ、カリン、俺様のモノになるなら、貴様にもいい思いをさせてやろう」
「──言日岐だ──私のことはそう呼べばいい」
「俺様の言葉には──白を黒にするだけの評価がある──どうだ──」
「──私は、あなたが白を黒にしたモノを評価しない──」
「はぁ──何言ってるカリン、だから俺にはその力が──」
「──お前は何も評価しない方がいい──お前が評価したすべての価値を下げる、あんたには、それを言葉にする資格がないと言っている」
「きさまぁ、小娘──下手にでていればいい気になりおって──」
「さて──ならば“先ほど”の“見返り”を求めるとしようか──」
ロッカクはいやらしい目つきでカリンの体を見渡す。
「小娘ごときが──クウド様の魔力を授かった俺様の能力を“ただ”で、突破できるとでも思っていたのか?」
「──カリン、貴様の体を“拘束”しよう──」
「ぐっ──」
魔力の帯のようなものが──カリンの体を拘束する。
その場にカリンがバランスを崩し倒れこむ。
「クククッ──小娘が、これだから──教授は捨てられないなぁ」
いやらしい目つきでそんなカリンの体を見つめながらゆっくりと歩み詰めてくる。
「ふざけろ──殺すのならさっさと殺せッ」
強がりながらもしよりもつらい屈辱を拒絶するように──
ガコンッ──
──トウカたちとカリンが乗ってきたエレベーター。
いつの間にか別の階に行っていたのか、再びそのエレベーターが地下へと降りてきて、小さくその部屋を揺らす。
「まったく──再び、その顔を見ることになるとはな」
「あんたは──」
「おまえは──」
20代後半くらいながらも、茶髪で少し長めの軽そうな男。
「言っただろ──カリンちゃん、評価など不正──少なくても俺たちの周りはそう成立するんだ」
「言正 キョウゴ──」
「言正──だと、あの時のあのバカな女の、俺を殴り、挙句に刑務所に俺を放り込んだ、あの時のクソガキか」
「覚えてくれていた──てめぇみたいなクソ野郎に覚えてもらっててもちっともうれしくないが、俺もあんたを一日たりとも忘れることは無かったよ──」
「クソガキが──この俺が貴様を評価する」
「──ほんと、後悔していたさ、あんたを正しく評価することができなくて──殴るだけじゃ、足りねぇよな──」
エレベーターから降りてきた、言正 キョウゴが、カリンをかばう様に──ロッカクとその間に立つ。




